【ひとり、秘湯へ】日本海に沈む夕日が空と海を黄金色に染める 黄金崎不老ふ死温泉
「海辺の露天風呂」。混浴だが湯あみ着(宿泊者無料)が用意され、ほかに女性専用もある(写真/杉本 圭)
秘湯マニアあこがれの一軒宿、黄金崎不老ふ死温泉
青森県西端、日本海に突き出た艫作(へなし)崎は、日本海に沈む夕日の美しさから黄金崎とも呼ばれる。ここに立つ一軒宿の黄金崎不老ふ死温泉は、秘湯マニアあこがれの宿だ。何せここには、秘湯ムードを盛り上げるいくつもの要素が備わっているのだ。
まず、アクセスの不便さ。近くのウェスパ椿山駅までは、秋田駅から五能(ごのう)線の観光列車リゾートしらかみで2時間以上、新青森駅からは約3時間かかる。不便だからこそ、いつかは行ってみたいという欲望にかられる。ローカル線風情たっぷりの五能線は、鉄道マニアの憧れだ。

本館玄関。本館より少し高いところに別館がある

奥の壁面に大漁旗が飾られたロビー。天井が高く旅の開放感に浸れる
次に、波打ち際にある「海辺の露天風呂」。「海に近い」「波に手が届きそう」などと評される露天風呂は数多いが、荒波をかぶりそうな海辺に簡素な脱衣所と目隠し、湯船があるだけの露天風呂はそう多くはない。実際、高波の日は閉鎖されるほど、海と一体化した露天風呂だ。

雪が舞う冬も風情がある。湯船には49度の源泉をかけ流す(写真/杉本 圭)
さらに特筆すべきは夕日。文字通り、海も空も海岸も黄金色に染まる景色を眺めながらの入浴は、「絶景」を超えた新しい言葉を探したくなるほどの雄大で美しい景色だ。地元深浦町が「日本の夕陽百選」に選ばれているのも納得。ほてった体を冷やしてくれる潮風も心地良い。
最後に秘湯を語る上で欠かせない泉質。鉄分を多く含んだ塩化物強塩泉の湯は赤褐色に染まり、湯船の縁の堆積物が成分の濃さを物語る。筆者が初めてここを訪ねたのはもう30年以上も前になるが、タオルまで赤褐色に染まった記憶は今も鮮明だ。

大きな窓から海を眺める内湯
ひとり旅用のシングルルームを備えている点もありがたい。客室は全室海に面し、波打つ昼間の日本海、夜の闇、朝の銀色に輝く水面をじっくり眺め、気が向いたらまた温泉へ向かう。「日本海」という言葉に不思議と寂寥(せきりょう)感が湧いてくるのも、ひとり旅だからだろうか。「星空デッキ」に出て、満天の星を見上げるのもいい。長旅の先に待っていた秘湯の宿の歓待に甘んじよう。

畳の上にベッド2台を置いたモダン和室

旅館の落ち着きを保ったシンプルな和室
夕食は、港町ならではの海の幸が中心のバイキング。荒波に育まれたマグロの刺し身が好評だ。気軽に観光を楽しむなら、10月下旬~11月上旬が紅葉の見頃となる白神山地の十二湖への路線バスが宿から発着する。宿にレンタカーも用意されているので、列車で訪れても周辺観光を存分に楽しめる。

バイキング会場。深浦沿岸は白神山地からの伏流水が流れ込む好漁場。海産物のほとんどは地元の網元から仕入れている
周辺のおすすめ観光👀
リゾートしらかみ
写真/松尾 諭

写真/松尾 諭
五能線を走る観光列車。日本海や白神山地を車窓に見ながらローカル線の旅が楽しめる。展望室やイベントスペースもあり、津軽三味線の生演奏や演奏体験、津軽弁「語りべ」実演などのイベントを行う(運行日、列車により異なる)。事前に予約すると弁当やスイーツを車内で味わえる。
■秋田駅発8時19分、10時50分、14時。新青森駅発8時16分、13時58分、弘前駅発16時6分。運転日はホームページで要確認/乗車券のほか指定席券840円が必要/TEL:050-2016-1600(JR東日本お問い合わせセンター)
文/渡辺貴由
黄金崎不老ふ死温泉
TEL:0173-74-3500
住所:深浦町舮作下清滝15
ひとり泊データ
条件:通年可
客室:トイレあり12平方㍍シングルなど(全67室)
食事:夕・朝食=レストラン
料金(税込み)
素泊まり なし
1泊朝食 平日8950円~/休前日1万1150円~
1泊2食 平日1万3900円~/休前日1万6100円~
※2人1室利用の場合は1泊2食1万6100円~
泉質:含鉄―ナトリウム―塩化物強塩泉
日帰り入浴:8時~15時30分/無休/1000円
交通:五能線ウェスパ椿山駅から送迎5分(リゾートしらかみ利用の場合は予約不要、普通列車利用の場合は要予約)/秋田道能代南ICから60キロ
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※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年11月号)
(Web掲載:2025年12月24日)


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