【ひとり、秘湯へ】ここでしか食べられない 「山人料理」に舌鼓 旅館 ひのえまた~ 檜枝岐温泉~
夕食では檜枝岐地方に伝わる郷土料理の「山人(ヤモード)料理」をコース仕立てで楽しめる
宿の最大の魅力、郷土料理の「山人料理」
会津鉄道会津田島駅からバスで1時間半。会津駒ヶ岳や燧(ひうち)ヶ岳などの山々に四方を囲まれた山あいの秘湯、檜枝岐温泉。民宿や小規模な旅館が並ぶこの温泉地の中では比較的規模が大きいが、落ち着いた雰囲気でひとり旅でもゆったり過ごせる。檜枝岐温泉の源泉を引く大浴場では、肌当たりの柔らかいアルカリ性単純温泉にいつでもつかることができる。
この宿の最大の魅力は、郷土料理の「山人料理」だろう。夕食は個室に1品ずつできたてが運ばれてくる。「奥会津の地酒三種の利き酒セット」を注文し、杯(さかずき)を傾けながらひとりゆったりと贅沢(ぜいたく)な時間を過ごす。

全室トイレ・洗面所付き。テレビや冷蔵庫などの備品も整っており、Wi-Fiも使え快適に過ごせる

檜枝岐温泉では最も規模の大きい、鉄筋コンクリート5階建ての宿
まずはタケノコの和え物、ゼンマイ煮、地コゴミなど山の恵みが並ぶ。山菜のほのかな苦みは辛口の地酒とも相性抜群だ。メインの「山人鍋」はみそ仕立てで、マイタケ、キクラゲ、山菜、鴨肉などに、会津の郷土料理であるそば粉を練ってつまんだ「つめっこ」が加わる。鴨やキノコから出る豊かなだしは、最後の一滴まで飲み干したくなるおいしさだ。
箸休めには檜枝岐名物「はっとう」が登場。そば粉ともち米を練り、菱形に切って茹(ゆ)でたものを、じゅうねん(エゴマ)と砂糖のタレを絡めていただく料理だ。素朴な甘さが心地よく、温かいうちに食べると、とろけるような食感が楽しめる。かつてこの地を治めていた高貴な人物が、あまりのおいしさに村人が食べることを「御法度」にしたことからその名が付いたという話だが、そんな伝承が生まれるのも納得のおいしさだ。

名物の「はっとう」
食事の後半には名物「裁ちそば」が出る。つなぎを一切使わない十割そばで、菜切り包丁で布を裁つように切ることからこう呼ばれるのだそう。裁ったばかりのそばからは、芳醇な香りが立ち上っていた。満腹ながらも、締めの舞茸ご飯まで完食。翌日の山歩きを言い訳にたっぷりと山人料理を堪能し、満足感に浸りながら床に就いた。

「裁ちそば」と「はっとう」はどちらもそば粉を使用した檜枝岐村の名物料理。ここでしか食べられない逸品だ
翌朝、温泉で体を温めた後、前夜と同じ個室で朝食をいただく。地元産のキノコや大根の細切りが入った具だくさんのみそ汁が体に染み渡る。温泉卵や山菜、納豆、岩魚の甘露煮など、山の宿らしい滋味深い食事で登山への活力をチャージ。山歩き前後の宿泊はもちろん良いが、湯と食事だけでも十二分に満足できる素晴らしい宿だ。季節ごとに訪れ、その時期ならではの山の恵みを味わい尽くしたい。

露天風呂付きの大浴場は時間帯で男女が入れ替わる。肌当たりの柔らかいアルカリ性単純温泉が楽しめる
周辺のおすすめ観光👀
尾瀬沼

写真/ピクスタ
10月末までは檜枝岐温泉から尾瀬沼山峠まで直通のバスが運行している。沼山峠からは片道1時間ほど歩けば尾瀬沼に着く。道もよく整備されており、傾斜もあまりないので初心者でも歩きやすい。10月中旬までは草紅葉も楽しめる。
■TEL:0241-75-2432(尾瀬檜枝岐温泉観光協会)
文/月山もも
旅館 ひのえまた
TEL:0241-75-2324
住所:檜枝岐村居平705
ひとり泊データ
条件:通年可
客室:トイレあり8畳和室など(全15室)
食事:夕・朝食=個室食事処
料金(税込み)
素泊まり なし
1泊朝食 なし
1泊2食 平日・休前日1万8850円~
※2人1室利用の場合は1泊2食1万6750円~
泉質:アルカリ性単純温泉
日帰り入浴:不可
交通: 会津鉄道会津田島駅からバス1時間30分、檜枝岐中央下車すぐ/東北道西那須野塩原ICから90キロ
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※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年11月号)
(Web掲載:2025年12月10日)

つきやま・もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ブログ「山と温泉のきろく」に、温泉宿への宿泊記、旅の食事や登山の記録をつづっている。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。


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