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【旅と駅弁・駅麺】麺家 れもん[徳島駅]

場所
> 徳島市
【旅と駅弁・駅麺】麺家 れもん[徳島駅]

祖谷仕立てそば 祖谷地方の味を継ぐ、平家ゆかりの秘境の味だ

農業と福祉の連携で伝統の祖谷そばを再現

「麺家れもんは、どこにありますか」。徳島駅のホームや改札では、日常的にそんなやり取りが聞かれる。「徳島に行ったら、ぜひ食べに行きたいと思っていた」と話す旅行者も多いらしい。遠方からもそば好きがやってくると聞けば、駅麺ファンとして素通りはできない。

扉を開けるとL字型カウンターにイスが5脚。看板メニューは550円の「祖谷(いや)仕立てそば」だ。そば粉8割、小麦粉2割を配合した「二八(にはち)そば」で、太くて短い田舎風の麺が特徴。口に含むとざらっとした舌触りと軟らかい食感で、かむたびに濃いそばの風味がする。伊吹島(香川)産いりこだしのコクも重なり、瀬戸内らしい香りがほんのりと漂う。

「祖谷地方で古くから食べられてきた麺を再現しました」とスタッフの藤井愛さん。祖谷といえば、平家の落人伝説が残る徳島県西部の秘境だ。平安末期に源平合戦で敗れた平氏一族が逃げ延び、そばの栽培を始めたと伝わる。

4.れもん店員068A0991.jpg
この日のスタッフは佐藤広子さん(左)と吉田裕二さん。調理と接客を担当する

金時豆入りの「ちらし寿司(ずし)」も徳島流。特産のゆず酢が生む酢飯のさわやかさと、甘く煮た金時豆の味のコラボが新鮮だ。ビッグサイズの「いなり寿司」や、油揚げで麺が見えない「きつねそば」にも驚かされた。まるで山里の食卓のような、素朴なぬくもりを感じる。

6.ちらし寿司068A0852.jpg
金時豆が入った「ちらし寿司」200円も、徳島の食文化を伝えている

2.きつねそば068A0942.jpg
きつねそば [ 徳島 ] どんぶり一面を覆い尽くす、大きな揚げが印象的な「きつねそば」

店を運営するのは、障がい者支援を中心に事業展開する社会福祉法人カリヨンだ。徳島駅前にあるビルの一室に設けた厨房(ちゅうぼう)で、障がい者と職員が協力して調理を担っている。製麺は石臼を手で回し、そばの実をひくところから。回転速度で風味や香りが変わるので、試行錯誤を繰り返したという。すしや天ぷらなども添加物を使わず、その日に出すものはその日に作る。ひきたて、打ちたて、ゆでたてのそばとできたての総菜が駅構内の店舗に運び込まれる。

7.そば打ち068A0801.jpg
そば打ち作業をする職員の足立英伸さん。30代の施設利用者と共に働く

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和風ラーメン そばと同じだしを使った「和風ラーメン」は鳴門わかめをトッピング

農業と福祉を連携させる事業の一環として、種まきの段階からそば栽培にも取り組んでいるという。山間部の過疎化で、伝統的な祖谷そばの継承は課題も多いことだろう。地産地消で食文化を伝えつつ、障がい者の就労を支援する。徳島駅の駅麺は、壮大かつ多角的なビジョンを背景に持つ郷土料理だったのだ。

感銘を受けて店を出たら、祖谷の渓谷を見たくなった。11月中旬まで紅葉が見頃で、山一面オレンジ色に染まるそうだ。

5.外観068A0910.jpg
店のオープンは2011年。ホームにはお遍路姿の人も見られた

品書き 徳島.jpg

麺家れもん

店舗:高徳線ほか徳島駅2番線ホーム
営業:11時〜14時/土・日曜、祝日、1月1日〜7日休
問い合わせ:TEL088-678-7133( カリヨン)

文/北浦雅子 写真/清水いつ子


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年12月号)
(Web掲載:2026年1月14日)


Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

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