【歩く旅】旧東海道の面影が残る宇津ノ谷峠を越える<丸子・岡部>(1)
明治のトンネルへ向かう坂道から宇津ノ谷集落が見下ろせる
「東海道五拾三次之内 丸子 名物茶店」の風景が目の前に
江戸期の浮世絵師・歌川広重が1833~34年頃に描いた「東海道五拾三次之内 丸子(まりこ) 名物茶店」の風景が目の前にあった。こんもりとした山を背に茅葺(かやぶ)き屋根の古民家が立ち、軒下には〝とろろ汁〟の暖簾(のれん)が風に揺れている。1596年に創業した丸子宿の老舗「丁子(ちょうじ)屋」である。
東海道丸子宿は日本橋から数えて20番目の宿場。現在の静岡市駿河区丸子地区にあり、東海道線静岡駅からはバスで約30分の距離にある。今回のコースは丸子宿から峠を越え、次の岡部宿まで歩く。その前に腹ごしらえというわけだ。店に入ると囲炉裏があり、奥に小さな資料スペースと座敷が続く。名物のとろろ汁を注文し、待ち時間に店主の柴山広行さんに資料館を案内してもらった。
「広重の浮世絵を見ると弥次さん喜多さんと思しき男性たちがとろろ汁を食べています。ところが、本来の物語『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』では店主夫婦が大喧嘩(げんか)を始めて、とろろ汁をぶちまけてしまい、弥次さん喜多さんは食べ損なっています。広重の遊び心が見て取れますよね」
自然薯(じねんじょ)をすり下ろし、みそとだし汁で伸ばしたとろろ汁を麦めしにかけて、ズズッとすする。1杯、2杯とおかわりを繰り返し、気づくとおひつは空っぽになっていた。
ここから徒歩15分ほどの伝統工芸体験施設、匠宿(たくみしゅく)にある「蓬(よもぎ)きんつばときや」で、おやつを仕入れたら準備完了。東海道歩き旅に出発だ。丸子橋を渡り、国道1号沿いの旧東海道を1時間30分ほど歩くと、宇津ノ谷(うつのや)一里塚碑の先に道の駅宇津ノ谷峠(下り)がある。峠を挟んだ藤枝市側にも同名の道の駅があるのが面白い。
文・写真/内田 晃
【歩く旅】旧東海道の面影が残る宇津ノ谷峠を越える<丸子・岡部>(2)へ続く

匠宿では静岡の伝統工芸を体験できる

「蓬きんつば ときや」の蓬きんつば・琥珀糖・本山茶のセット470円。蓬きんつばはもちもちの生地から蓬の香りが立ち、あんはほどよい甘さ
■10時〜16時/月曜休(4月から火曜休に変更)/TEL:054-256-1521(代)

逆川交差点の南側、歩道橋の入口に「宇津ノ谷一里塚」の石碑がある

静岡市側の道の駅宇津ノ谷峠(下り)。施設の近くに「蔦の細道」の入り口がある
■7時〜19時/無休/TEL:054-256-2545

道の駅の弥次さん喜多さんの顔出しパネル
丁子屋
定番の丸子1870円はとろろ汁・麦めし・みそ汁・香の物・薬味のセット。とろろ道入門所6050円(予約制)に参加すると、自分で自然薯をすり下ろして味付けする「とろろづくり」が体験でき、とろろの揚げ物や珍味2種などが付くとろろ料理のフルコースも味わえる。
■11時~14時(土・日曜、祝日は11時~15時、16時30分~19時)/木曜(毎月末は水・木曜)休/東海道新幹線静岡駅からバス30分、丸子橋入口下車すぐ/静岡市駿河区丸子7-10-10/TEL:054-258-1066


東海道
江戸時代に徳川家康が整備させた五街道の一つ。江戸の日本橋から京都の三条大橋までは約492キロの道のりで53の宿場がある。そのうち静岡県内には22の宿場があり、薩埵(さった)峠、宇津ノ谷峠などの峠越えに加えて、安倍川・大井川の川越えという難所があった。

丸子宿から宇津ノ谷集落へ向かう旧東海道沿いにも街道の風情が残る

◉モデルコース
[ 徒歩距離◎9.5キロ ]
[ 徒歩時間◎3時間10分 ]
東海道新幹線静岡駅
⬇ バス30分
丸子橋入口バス停 START
⬇ 200メートル(2分)
丁子屋
⬇ 700メートル(15分)
蓬きんつば ときや
⬇ 4.2キロ(1時間25分)
道の駅宇津ノ谷峠
⬇ 600メートル(11分)
宇津ノ谷集落
⬇ 500メートル(10分)
明治のトンネル
⬇ 600メートル(11分)
坂下地蔵堂
⬇ 2.6キロ(55分)
大旅籠柏屋
⬇ 100メートル(1分)
岡部宿柏屋前バス停 GOAL
⬇ バス45分
静岡駅
■問い合わせ/TEL:054-221-1310(静岡市観光政策課)/TEL:054-667-6060(藤枝市岡部総合案内所)
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
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(出典:「旅行読売」2026年4月号)
(Web掲載:2026年4月9日)


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