たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【歩く旅】旧東海道の面影が残る宇津ノ谷峠を越える<丸子・岡部>(2)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 静岡県
> 静岡市、藤枝市
【歩く旅】旧東海道の面影が残る宇津ノ谷峠を越える<丸子・岡部>(2)

明治期に失業した安倍川の川越人足(かわごしにんそく)たち延べ15万人が従事した明治のトンネル

秀吉の伝説が残る集落へ

【歩く旅】旧東海道の面影が残る宇津ノ谷峠を越える<丸子・岡部>(1)から続く

この先は静岡市観光ボランティアガイド駿府ウエイブの内山和俊さんと宇津ノ谷(うつのや)峠を歩く。峠越えの道は平安期の蔦(つた)の細道から平成トンネルまで6本あるが、今回は旧東海道と明治のトンネルを組み合わせた。

道の駅から国道1号を渡り、宇津ノ谷集落に入る。現在は石畳の坂の両側に出桁(だしげた)造りや下見板(したみいた)の町家が肩を寄せ合い、ひっそりと静まり返っているが、かつては丸子宿と岡部宿の中間にある間(あい)の宿(しゅく)としてにぎわった。峠越えを終えた旅人や、これから挑む旅人が小休止した茶店も多く、かの豊臣秀吉も小田原攻めに向かう際に立ち寄り、茶店の主人に馬用のわらじを注文したとか。

主人は機転を利かせて〝死〟につながる〝4〟を避けて3足のわらじを渡すと、秀吉は「縁起が良い」と大喜び。その後、凱旋(がいせん)した秀吉は帰りに茶店を訪ね、主人に陣羽織を授けた。以来、茶店は「御羽織屋(おはおりや)」と呼ばれるようになったという。

2 pixta_133959673_M.jpg
宇津ノ谷集落では「御羽織屋」や「角屋」などの屋号で呼び合う風習がある。軒下などに屋号の看板が掲げられていた

peIOwbQnwUjyv2v1773376792_1773376805.png
ガイドの内山さん。ガイドは2週間前までの予約制でガイド1人2000円〜(別途交通費)。TEL:054-・204-6655

「後に徳川家康や参勤交代の大名も陣羽織を見物に訪れたそうです。陣羽織の綿をこっそりもらい、煎じた湯を出産前の奥方に飲ませ、子の出世を願ったという話もあります」

内山さんの話に大笑い。子どもの幸せを願う親の思いは今も昔も変わらない。蛇行する坂道を上り詰めると明治のトンネルがある。1876年開通のレンガ造り。国の登録有形文化財で、重厚な内壁とレトロなランプが目を引く。日本初の有料トンネルでもあったという。

トンネルを抜けて、坂下地蔵堂を参拝。内山さんと別れて、1時間ほど歩くと岡部宿の「大旅柏屋(おおはたごかしばや)」に着く。主屋は江戸後期の建築物が残り、武家や庶民が宿泊した宿場の旅籠が体感できる。館内に入ると、上がり框(がまち)に腰を下ろして足を洗う弥次さん喜多さんの人形が迎えてくれた。

13 坂下地蔵堂2.jpg
宇津ノ谷峠の西側入り口に鎮座する坂下地蔵堂

14 坂下地蔵堂8.jpg
祈願成就のお礼に農具の鎌を奉納する風習がある

「宇津ノ谷峠は山賊や人食い鬼の伝説もある難所でしたから、岡部宿に到着した旅人は安心したでしょうね」とは館長の増田道憲さん。こころなしか人形の表情も安堵(あんど)しているように見えた。

文・写真/内田 晃

大旅籠柏屋

岡部宿を代表する旅籠の主屋を公開。たばこ、薬、筆記用具など、旅の道具なども展示している。主屋の奥にはなまこ壁の土蔵を利用したギャラリーやカフェもある。等身大のひな人形や御殿飾り(京風の雛飾り)などを展示する「かしばやのひなまつり」を4月5日まで開催。日本遺産構成文化財の一つ。
■9時~16時30分/月曜(祝日の場合は翌日)休/300円/東海道新幹線静岡駅からバス45分、岡部宿柏屋前下車すぐ/藤枝市岡部町岡部817/TEL:054-667-0018

15 DSC00907.jpg

16 DSC01014.jpg

17 IMG_4599-1.jpg

東海道

江戸時代に徳川家康が整備させた五街道の一つ。江戸の日本橋から京都の三条大橋までは約492キロの道のりで53の宿場がある。そのうち静岡県内には22の宿場があり、薩埵(さった)峠、宇津ノ谷峠などの峠越えに加えて、安倍川・大井川の川越えという難所があった。

8 DSC00180.jpg

地図_東海道.jpg


◉モデルコース
[ 徒歩距離◎9.5キロ ]
[ 徒歩時間◎3時間10分 ]

東海道新幹線静岡駅
 ⬇ バス30分
丸子橋入口バス停 START
 ⬇ 200メートル(2分)
丁子屋
 ⬇ 700メートル(15分)
蓬きんつば ときや
 ⬇ 4.2キロ(1時間25分)
道の駅宇津ノ谷峠
 ⬇ 600メートル(11分)
宇津ノ谷集落
 ⬇ 500メートル(10分)
明治のトンネル
 ⬇ 600メートル(11分)
坂下地蔵堂
 ⬇ 2.6キロ(55分)
大旅籠柏屋
 ⬇ 100メートル(1分)
岡部宿柏屋前バス停 GOAL
 ⬇ バス45分
静岡駅

■問い合わせ/TEL:054-221-1310(静岡市観光政策課)/TEL:054-667-6060(藤枝市岡部総合案内所)

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

☛静岡県など伊豆東海旅行・ツアーはこちら

(出典:「旅行読売」2026年4月号)
(Web掲載:2026年4月10日)


Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

Related stories

関連記事