【私の初めてのひとり旅(一人旅)】吉田類さん パリ、仁淀村(2)
「大冒険」をした小学5年生の頃、近所の仲間たちと。中央が吉田さん

よしだ・るい[酒場詩人]
1949年高知県生まれ。俳人、イラストレーター、エッセイスト。酒場や旅をテーマに執筆活動を続けている。「吉田類の酒場放浪記」(BS-TBS)や、豊富な登山経験を生かして「にっぽん百低山」(NHK)、毎月第2日曜の「ラジオ深夜便」(NHK ラジオ第1)に出演するなど、テレビ、ラジオでも活躍中。『酒場詩人の流儀』『酒は人の上に人を造らず』(いずれも中央公論新社)など著書多数。近著に『吉田類の愛する低山40三合目』(NHK 出版)。
子どもの頃、山深いふるさとで峠越えの大冒険が旅の原点
【私の初めてのひとり旅(一人旅)】吉田類さん パリ、仁淀村(1)から続く
僕の生まれは高知県仁淀(によど)村(現・仁淀川町)です。急峻な山襞(やまひだ)に貼り付いた集落は、ペルーのマチュピチュ遺跡にも喩(たと)えられます。小学5年生だったか、近所の友だちが峰を越した桐見(きりみ)川という集落に引っ越したので、連絡もせずに数人の級友と一緒に会いに行ったことがあります。
大体こっちの方だろうと、道なき道を歩き続けました。頂上付近に出ると、何かの遺跡のような石組みの建物がありました。今考えると林業関係者が寝泊まりする小屋の跡だったのだろうと思います。その時、砂埃(ほこり)が舞い上がり、スピードを出して移動していくのが見えました。竜巻です。初めて見たので驚きました。その後、山仕事の青年に出会い、向こうも山の中に子どもたちがいたので驚いたようですが、桐見川へ下りる道を教えてくれました。
無事友だちに会えましたが、時間もなく、すぐ帰路に就きました。峠道を通れば自分たちの集落へは一本道でした。峠に立つと、日が沈んでいくのが見え、それがすごく美しかったのが今でも記憶に残っています。峠から下ると星ヶ窪という窪(くぼ)地があるのですが、星(隕石<いんせき>)が落ちてできた跡が名前の由来だそうです。現在はキャンプ場になっていますが、そこで開催された草競馬を見に行った覚えもあります。
集落に戻った時は真っ暗になっていて、村の人たちが心配して探していました。母に怒られたのは言うまでもありません(笑)。子どもの頃のこの大冒険の記憶がずっと残っています。「人生は旅」が持論である僕の原点は、ここにあるのかもしれませんね。
話/吉田類 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2026年4月号)
(Web掲載:2026年4月20日)


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