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【クラフト蒸留所を巡る旅】コラム ジャパニーズウイスキー、 その魅力(ウイスキーブロガー/くりりん)

【クラフト蒸留所を巡る旅】コラム ジャパニーズウイスキー、 その魅力(ウイスキーブロガー/くりりん)

地域の気候に合わせた工夫が魅力につながる。豊潤でメローな香味が特徴の嘉之助蒸溜所(鹿児島)

全国各地のクラフト蒸留所から生み出されるジャパニーズウイスキーは、なぜおいしいのか。その秘密をウイスキーブロガーのくりりんさんがひも解く。

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プロフィール
くりりんん(ウイスキーブロガー)

1984年生まれ。The Whisky Tasting Club(ザ ウイスキー テイスティング クラブ)代表テイスター。22歳の時に飲んだ「竹鶴12年」がきっかけでウイスキーに傾倒。ブログやSNSでの情報発信に加え、コラム執筆、セミナー講師、商品開発協力など、メーカーの垣根を越えて活動中。

入社2年目に社命を負って渡英した日本ウイスキーの父、竹鶴政孝

日本ウイスキーの父、竹鶴政孝(たけつるまさたか)がウイスキー造りを学ぶため、単身スコットランドに渡ったのは1918年。メールも国際電話もない時代に、入社2年目の若手が社命を負って渡英したのだ。当時のスコットランドは日本人にとって未知の地。研修先の蒸留所も現地調整という過酷な状況で約2年間の修業を終え、ウイスキーの製法に係る情報などを得て無事、帰国した。

そうしたルーツから、多くのジャパニーズウイスキーの製法・酒質はスコッチウイスキーの系統に分類されると言える。一方、味わいはスコッチウイスキーが西洋のドレスのように繊細で華やかであるのに対し、ジャパニーズウイスキーは着物のように色濃く艶(つや)やか、円熟した原酒はさながら十二単衣(ひとえ)のように複雑で玄妙な香味の広がりを見せる。

この違いが生まれる理由の一つに気候の差がある。ウイスキーはオーク材を主とする樽での熟成を経て造られるが、この時、樽材が低温下では縮み、高温下では膨張することで“樽の呼吸”と呼ばれる現象が起こる。スコットランドが年間を通して冷涼で、気温がおおよそ0度~20度なのに対し、四季がある日本では氷点下から40度に届くほど幅が広い。樽の呼吸が盛んに繰り返されるため、樽のエキスが色濃く出るだけでなく雑味につながる成分が樽材を通して外に放出されたりする。結果、同じ系統の酒質でも日本とスコットランドで大きな違いが生まれるのだ。

1.コラム用樽5861.jpg貯蔵庫に並ぶ樽の中でじっくりと熟成されるウイスキー

造り手のこだわりも人気の秘けつ

現在、国内には100か所を超えるウイスキーの蒸留所がある。日本のウイスキーが世界的に評価され、この10年間で多くの新規参入があった結果である。それらはクラフト蒸留所と呼ばれているが、1970~80年代にも各地にウイスキーブランドが誕生したことがあった。

当時リリースされたローカルなウイスキーは“地ウイスキー”と呼ばれて注目されたが、90~2000年代にウイスキーの消費量が低迷すると、その多くが姿を消した。2010年の時点で日本のウイスキー蒸留所は8か所しかなかったことを考えると、凋落(ちょうらく)と再興の大きさが窺(うかが)い知れる。

クラフトウイスキーと地ウイスキーの違いは何か?それは、造り手のこだわり、理念にあると言える。地ウイスキーの大半は外部調達した原酒をブレンド用アルコールと混ぜただけのものや、日本酒などの職人が掛け持ちで造っていたものが多く、品質が高いとは言い難かった。

一方、現在のクラフト蒸留所では、土地ごとに異なる気候に適合すべく熟成庫や設備に工夫を凝らし、独自の酵母を開発するなど、品質を高める取り組みが行われている。また、単発的に商品を販売していただけの当時と異なり、来訪者を受け入れ、見学や試飲提供、限定商品の販売などを行うビジターセンターの整備も進められている。ウイスキー造りを体験するプランが用意されている所もあり、造り手との距離の近さも魅力だ。名所と名物を堪能することを合わせたウイスキーツーリズムは、酒飲みでなくても楽しめる大人の休日旅にふさわしい。

何より、現地を訪れてその空気を体感したうえで飲むウイスキーの味は格別だ。ウイスキーに興味がある方は、ぜひ一度、ゆかりがある地のウイスキーメーカーの商品に手を伸ばしてほしい。その味を気に入ったなら、蒸留所へ旅する計画を立ててみてはいかがだろう。

2.厚岸蒸留所1890.jpg
厚岸蒸溜所がある北海道厚岸町では、名産のカキと町内限定流通のウイスキーのハーモニーを楽しめる

文・写真/くりりん


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年5月号)
(Web掲載:2026年4月11日

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