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【旅する喫茶店】珈琲の館 御園(奈良)

場所
> 明日香村
【旅する喫茶店】珈琲の館 御園(奈良)

高い天井と重厚感のある梁が印象的な店内。南向きの窓からはたっぷりと陽が差し込む

古代の都の入り口に佇んで半世紀

石舞台古墳から甘樫丘(あまかしのおか)、飛鳥(あすか)宮跡へ。古代の都は歩いてこそ楽しさが倍増する。散策の合間にひと息つきたい時、立ち寄りたいのが、明日香路の起点にある「珈琲(コーヒー)の館 御園(みその)」だ。

創業は1976年。店名はこの地の字(あざ)名に由来する。かつては宮廷の玄関口という意味があったそうだが、「人々がくつろげる居場所を作りたい」と先代夫婦が店を開いた。町の景観が法律で定められているため、外観は純和風。ところが扉を開けると、レトロモダンで開放的な空間が広がっていた。

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近鉄飛鳥駅前に佇む

先代がこだわったのはサイフォン式コーヒーと落ち着いた空間。それを守り続けるのが、16年前に跡を継いだ辻本博店長だ。手間のかかる工程ゆえに一時は廃れた方式だが、「常連さんの好きな味を守るため、やり方を変えなかった」。注文が入ってから1杯ずつサイフォンで抽出する。その数分間、ガラス器具の中で湯がせり上がり、ポコポコと小さな音を立てる。「見て聴いて楽しむのもサイフォンコーヒーの良さ」と辻本さん。

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創業以来守り続けるサイフォン抽出。ロートを静かにかき混ぜると、琥珀(こはく)色の液体がゆっくりと下に落ちていく

開店から12時まで提供するモーニングセットは思わず通いたくなるほどのボリュームで、地元客の心をつかんでいる。外国人客には抹茶セット、中高年には栗ぜんざいも人気。

観光でにぎわうシーズンでも店内にはゆったりとした時間が流れる。「お客様を急(せ)かさない」店長の心遣いも居心地のよさの正体だった。

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厚切りのデニッシュパンに、ゆで卵、ポテトサラダ、フルーツなどが付いたボリュームたっぷりのモーニングセット800 円

文/橋長初代 写真/宮川 透


珈琲の館 御園

奈良県明日香村御園1-1
TEL:0744-54-3386
営業:7時30分〜17時/年末年始休
交通:近鉄吉野線飛鳥駅から徒歩1分

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年5月号)
(Web掲載:2026年5月13日)


Writer

橋長初代 さん

奈良県在住。7年前にUターンしたのを機に奈良の魅力を再認識し、奈良検定に挑戦。奈良まほろばソムリエを取得し、観光ガイドをめざして修行中。銭湯・温泉、台湾、ドラマ好き。趣味はスイカといちご、野菜の自家栽培。仕事をかねた気楽なひとり旅が多く、時間がある限り、レンタカーで観光スポットや地元の名店を巡っています。

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