クリムトの天井画を間近で鑑賞!ウィーン・ブルク劇場の特別ガイドツアーを体験
ブルク劇場 ©Österreich Werbung/ Sebastian Burziwal
若きクリムトの古典主義的な作品
オーストリアの首都・ウィーンの幹線道路である「リング」沿いにあるブルク劇場。1741年に宮廷劇場として完成し、当時はフランス語とイタリア語でのオペラを上演する劇場であった。その後、1776年に皇帝ヨーゼフ2世によりドイツ語での上演を行う国民劇場に格上げ。つまり2026年はブルク劇場がオーストリア国立の劇場に指定されて250周年に当たる。これを記念してクリムトの天井画特別ガイドツアー(~8月14日)が実施されている。
現在の劇場は1888年、ウィーンの都市計画の一環として「リング」沿いに移転・開館したものだ。建築にあたり、劇場の二つの階段ホールを飾る装飾というこの上ない名誉ある仕事を依頼されたのが、当時26歳だったグスタフ・クリムトと弟のエルンスト、友人のフランツ・マッチュであった。グスタフ・クリムトは黄金に彩られる「接吻」などの作品で知られる日本でも人気の画家で、ウィーン・ユーゲントシュティール(アールヌーボー)の旗手。しかし当時の若きクリムトは工芸学校で古典主義的な教育を受け、卒業後3人で芸術家カンパニーを設立していた。1886~87年にかけて描かれたこの天井画は劇場の歴史などを題材としている。
特別ツアーで最初に案内されるのが、フォルクス庭園側の階段ホール。ここはかつて皇帝のためだけの階段だった。見上げると改修されたばかりの素晴らしい天井画が覆い尽くす豪華な空間、その美しさに思わず息をのみ見惚(ほ)れた。

フォルクス庭園側の階段ホール
天井画は入口から順に「ディオニュソスの祭壇」、「テスピオスの凱旋車」(グスタフ・クリムト)、「古代劇場の舞台」(マッチュ)、「シェイクスピアのグローブ座」(グスタフ・クリムト)、「モリエールの舞台」(エルンスト・クリムト)。細部にわたり緻密に、表情豊かに描かれる素晴らしい作品たち! 舞台を描いた作品には演者と観客が描かれている。劇場とは身分を問わずさまざまな人々が集い、芸術を創り上げる場という想いを込めているかのようだ。

グスタフ・クリムトの「ディオニュソスの祭壇」。半円のアーチ部分に描かれる

グスタフ・クリムトの「テスピオスの凱旋車」

左:マッチュの「古代劇場の舞台」 右:エルンスト・クリムトの「モリエールの舞台」
グスタフ・クリムトによる「シェイクスピアのグローブ座」では、ロミオとジュリエットが上演されている。場面はジュリエットが死んだと思い込み、ロミオが自らの命を絶った場面。そしてここには、クリムト唯一の自画像が描き込まれている。右側の観客の一群、女性の後ろの白いひだ襟をつけた男性だ。さらにその男性の後ろの赤い服装の人物がエルンスト、手前の帽子を被る男性がマッチュという。

グスタフ・クリムトの「シェイクスピアのグローブ座」
存分に階段ホールの天井画を堪能した後は、「アンゲリカ・プロコップ・ホワイエ」という場所へ。ここには天井画のオリジナルの下絵が展示され、クリムトのデッサン力の素晴らしさをまざまざと感じることができる。

グスタフ・クリムトの「シェイクスピアのグローブ座」の下絵
実はこの下絵、劇場の地下でゴミのように捨てられていたが、1986年に発見されたもの。何と発見したのは、今回案内してくださった日本語が堪能なカール・ハインドルさん! ゴミくずの中から、グスタフ・クリムトの「シェイクスピアのグローブ座」のロミオの足元ではないかと、気付いたという。

この部分が世紀の大発見に!
その後、下絵は大学の研究室で修復され、こうして展示されている。これらの天井画はフレスコ画ではなく油絵である。綿密な下絵があり、これを基に壁に描いていた。
次はラントマン側の階段ホールへ。ここには足場が組まれ、天井画の修復中そのままという状態。はしごを上り足場に上がると、通常は遠くから見上げることしかできない天井画が目の前に! 改修工事期間を利用したまさに貴重で特別な体験だ。

階段ホールに組まれた足場

足場板を歩いて見学
手を延ばせば触れられるほどの距離にある天井画の数々。細心の注意を払って行われるこれらの修復は、1日10センチ四方しか進めることができないという。見事によみがえった天井画の中でも、グスタフ・クリムトの「タオルミーナの劇場」は圧巻。タオルミーナはイタリア・シチリア島の東海岸にある街で、ここにあったギリシャの劇場のパノラマビューが描かれている。


グスタフ・クリムト「タオルミーナの劇場」
アカデミックな古典主義的技法を駆使しながら、ウィーン・ユーゲントシュティールの兆しも見え隠れする作品だ。さらにマッチュやエルンストの作品も間近で見学できる。
この特別なガイドツアーはドイツ語と英語で実施。参加時は滑りにくい靴で。案内書は、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、日本語が用意されている。1人25ユーロ。
ブルク劇場の詳細はウィーン市観光局から
チケットはブルク劇場のウェブサイトから
またカール・ハインドルさんによる日本語ガイドツアーは👉こちら

劇場ホール
若きクリムトとその仲間による圧巻の天井画。ブルク劇場という歴史ある空間で感動の体験をぜひ。
文・写真/関屋淳子
(WEB掲載:2026年6月18日)


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