喫茶ソワレ(京都)【旅する喫茶店】
青い照明と東郷青児の美人画が特徴的な店内
繁華街で開かれる静謐な〝夜会〞
「店は人なり」と思う。インテリアや食事、音楽……店主の好みを映す諸々が組み合わされ、喫茶店という個性的な空間が形作られる。京都の繁華街・四条の片隅にある喫茶ソワレは、その意味で無二の個性がある。
この店の居心地のよさはその個性と関係がある。昼夜を問わずひっそりとしていて、妖しくも落ち着いた青い光をたたえている。ほぼ創業時のままの空間に、彫刻家の池野禎春(さだはる)によるブドウをモチーフにした木彫や東郷青児(とうごうせいじ)の美人画が浮かぶ。
創業は戦後すぐの1948年。近くの花遊小路(かゆうこじ)で女性向けの雑貨商をしていた元木和夫さんが喫茶を始め、2代目の英輔さんが引き継いだ。親交があった染織文化研究者の上村六郎教授から、「色彩論的に青は女性を美しくみせる」と助言され、照明を青にしたという。
店名はフランス語で「夜会」を意味するが、音楽はかけていない。「お客さま同士のささやき声がBGM。静かな空間を楽しんでほしいという先代の思いがあり、なにも変えずに受け継いできたと聞きました」とスタッフは話す。
店の前、高瀬川沿いに桜の木がある。4月上旬、2階席から見る満開の花は艶やかで夢うつつ。まるで夜半に夢の中で見ている、あるいは、蒼い海の底から地表をのぞいているようで。
文・写真/福崎圭介
住所:京都市下京区西木屋町四条上ル真町95
交通:阪急京都線河原町駅から徒歩すぐ、または京阪本線祇園四条駅から徒歩2分
喫煙:不可
℡075-221-0351
(出典 「旅行読売」2014年4月号)
(ウェブ掲載 2019年11月1日)