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ガウディへの旅(3)まるで「海底」にあるような住居「カサ・バトリョ」

場所
> バルセロナ
ガウディへの旅(3)まるで「海底」にあるような住居「カサ・バトリョ」

カサ・バトリョの採光性がすぐれていることがわかるバルコニー内部(写真/スペイン政府観光局)

モンセラートへの旅の翌日はガウディの建築物巡りだ。バルセロナ中心部・カタルーニャ広場からグラシア通りを歩いて10分の「カサ・バトリョ」は、繊維産業で財を成した富豪の邸宅。この富豪の「皆があっと驚くような邸宅に」との依頼で、ガウディは1904年から06年にかけて改築した。

バルコニーの内側のサロンから見ると、太陽の光がさんさんと降り注いでくるのを感じる。窓には「水泡」がたくさんデザインされている。窓が海面という想定なのだろう。空も近く感じる。大自然の中にある住まいという発想だったのだろう。

ありとあらゆるところに「曲線構造」

ガウディは、改築にあたって「直線」を排除し、ありとあらゆるところに「曲線構造」をとりいれた。窓や壁の曲線をみていると、まるで自然の洞窟を利用した住居のように見える。窓には水泡があるので、さながら、海底にある洞窟住居といった風情だ。

大胆な曲線が目立つバルコニー外観(写真/スペイン政府観光局)
大胆な曲線が目立つバルコニー外観(写真/スペイン政府観光局)

バルコニーを外側から撮影した写真をみると、内部はいかにも温かく居心地のよい住まいのように見える。窓や外壁の曲線構造によって、その温かさが一層強まっているようにも感じる。

下から見上げた建物正面(写真/スペイン政府観光局)
下から見上げた建物正面(写真/スペイン政府観光局)

カサ・バトリョからカタルーニャ広場に戻り、そこから5分ほど歩いたところに、伝説的なカフェレストラン「クアトロ・ガッツ」(4匹の猫)がある。1897年創業で、若い芸術家の作品を展示し、ピカソをはじめ画家、音楽家、建築家など様々な分野の才能ある人々が集った店として知られていた。

「クアトロ・ガッツ」で、かつて時代の先端を行く芸術活動が花開いたバルセロナに思いをはせる

創業当時の内装に復元された「クアトロ・ガッツ」
創業当時の内装に復元された「クアトロ・ガッツ」

「クアトロ・ガッツ」が入居した建物は、ガウディと同時代に活躍した建築家のジュゼップ・プッチ・イ・カダファルクが設計したものだ。ガウディは、ここに集う芸術家たちとは異なる傾向の芸術家グループに属していたが、友人の個展を見に、この店を訪れたことがあるといわれる。

若き日のピカソは、この店に集う大先輩たちに気に入られ、まだ17歳だった1899年に、この店で初の個展を開いた。

この店自体は1903年に閉店してしまう。その後、店のあった場所は有為転変を経て、いったんはかつての面影を失っていた。しかし1980年代からは、創業当時の内装に復元され、かつての芸術家たちのたまり場の雰囲気に思いをはせることができる「クアトロ・ガッツ」として営業するようになっている。

この店で、バルセロナを拠点にマリオネットや影絵の活動を長年続けているカタルーニャ人の旧友に会った。かつての「クアトロ・ガッツ」では、絵画展だけでなくマリオネットや影絵のイベントも行われていたのだという。

19世紀末から20世紀初めにかけて、時代の先端を行く芸術活動が花開いたバルセロナの様子を想像するため、機会があればぜひ訪れたい店である。

出典:「旅行読売」20195月号(「たびよみ」転載にあたって大幅に増補しました)


Writer

藤原善晴 さん

月刊「旅行読売」編集部に2019年12月まで勤務。現在読売新聞東京本社文化部。瀬戸内海が見晴らせる広島県安芸津町風早(現・東広島市)生まれ。レトロブームということもあり、最近は「昭和」という言葉に敏感に反応。また、故郷が「令和」の典拠となった万葉集ゆかりの地であるため、福岡県太宰府市、奈良県、富山県高岡市、鳥取県など各地の「万葉集」ゆかりのニュースにも目を光らせている。

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