【南極豆知識】ここが知りたい! 南極Q&A
1. 南極に植物は生えているのですか?
南極の陸域に生息する植物の種類はほんの少しです。 雪解けの頃にコケ類、藻類、地衣類が現れます。少ない理由は、陸が氷におおわれていて土じょうがほとんど存在しない、水にめぐまれない、気温が低い、風が強い、などです。
2. 南極でとれる魚の種類は日本とは違うのですか?
全世界では3万種類以上の魚類が報告されていますが、南極海からは300種類ほどです。これらの魚類はほとんど南極海固有の種類であり、日本の近海には生息していません。南極大陸の沿岸にすむ魚類の多くは、スズキ、カジカの仲間です。
3. 南極にはなぜシロクマがいないのですか?
シロクマは北極圏周辺の地域でヒグマに似た祖先から寒冷地に適応して進化した動物です。いったん寒冷地に適応した動物は、熱帯の赤道を越えて南極まで到達することは不可能です。もしも、南極が温暖な気候だった頃までにヒグマのような動物が進出していれば、寒冷化してゆく気候に適応できた可能性はあったかもしれません。しかし、クマが進化したのはそれよりもずっとあとの時代でした。
4. 南極ではどんなペンギンが見られますか?
ペンギンは世界中に18種生息し、野生のものは南半球に分布しています。南極ではおもにコウテイペンギン、アデリーペンギン、ジェンツーペンギン、ヒゲペンギンという4種類のペンギンが子育てをしていますが、そのうち極寒の南極「大陸」で子どもを産み育てて繁殖を行うのはコウテイペンギンとアデリーペンギンの2種類だけになります。ジェンツーペンギン、ヒゲペンギンは南極「半島」を中心に分布しています。※関連記事はこちらから。
5. 南極の氷がすべて解けたら日本はどうなってしまうの?
地球上の氷の90%が南極大陸にあります。南極大陸の氷の平均の厚さは2000m以上です。大陸の面積は日本の約37倍あり、この膨大な量の氷がすべて解けてしまうと海水面の高さが約60mも上昇して関東平野を含む日本の広い地域が海の中に沈んでしまいます。
6. 氷河の大きさは最大どのくらいですか?
南極大陸にある最大の氷河はランバート氷河です。出口の幅がおよそ80km、氷流の長さが400kmあります。流域面積はおよそ1000平方kmですが、背後の流域全体を含めた面積は日本のおよそ3倍の115万平方kmに達します。
7. 南極の氷はどのくらい前のものなのですか?
これまでに採掘された南極氷の最も古いものは2004年にヨーロッパ連合がドームC基地で3270mの深さから80万年前の氷を採取しました。日本のドームふじ基地では2007年に3035mの深さから72万年前の氷を採取しています。現在は100万年前の氷の掘削を目指して準備中です。
8. 南極の氷は減っているのですか?
南極半島を含む西南極地域では温暖化が進んでおり陸上の氷の量は減少しています。しかし、昭和基地を含む東南極地域では温暖化が起こっていなく陸上氷はむしろ増加しています。南極大陸全体でみると陸上氷の量の減少は加速しています。一方、南極の海に浮かんでいる氷の量は、温暖化している南極海にもかかわらず増加しています。
9. 南極と日本の豪雪地帯はどちらが積雪が多いのですか?
南極大陸全体の平均年間積雪量はおよそ15cmです。実際の積雪量は地域によってかなり差があり、大陸内部の高地では少なくて年間に5cmくらいです。一方、南極半島の周辺では多くて年間に1mほどです。日本の豪雪地帯では年間に5m以上の積雪があるので、南極よりも多くの雪が積もります。
10. 南極大陸が今の形になったのはいつですか?
約2億年前までの南極大陸は、アフリカや南アメリカ、インドやオーストラリアとともに、巨大なゴンドワナ大陸を形成していました。1億8000万年前頃からゴンドワナは徐々に分裂して、南極大陸の現在の独立した形になったのは約2000万年前頃と考えられています。
11. 南極に恐竜はいたのですか?
南極では恐竜や植物の化石が見つかっています。約1億8000万年前まで南極はゴンドワナ大陸の一部でした。その後、少しずつゴンドワナ大陸はわかれて、南極大陸の周囲に海ができました。そのあと、南極は今あるところに移動して、氷に覆われるようになりました。恐竜がいたのは温暖な気候であった2億3000万年前ころから6500万年前ころの間です。
12. オゾン層は再生できないのですか?
高度が10~50km付近の成層圏の中では、酸素分子が太陽からの強い紫外線を吸収して酸素原子になります。この酸素原子が酸素分子と結びついてオゾンが生成されます。また生成したオゾンは紫外線を吸収し、酸素分子と酸素原子に分解するという反応も同時に進行し、消滅します。 自然界のオゾンはこの生成と消滅のバランスにより濃度が保たれています。
13. オーロラってなぜ出るの? しくみを教えてください。
オーロラの源は太陽です。太陽からは、太陽風と呼ばれる電子や陽子などからなるプラズマが常に放出されています。太陽風は地球の磁石の影響を受けて地球の夜側の磁気圏に取り込まれます。蓄積した電子が何らかのきっかけで磁力線にそって加速され、猛スピードで極地の超高層大気(酸素や窒素)に衝突し、発光したのがオーロラです。発光の原理だけならば、オーロラは蛍光灯やネオンサインと同じです。
14. 南極・北極など極地で生活して人体に影響はないのですか?
人体に直接影響を及ぼすことはありませんが、極地の夏は白夜で一日中太陽が沈まなく明るいです。逆に、冬は極夜で一日中太陽が出なくて暗い日が続きます。この影響で生活のリズムが狂ってしまいがちです。そのため、南極観測越冬隊では、一日の生活リズムを守るために、食事時間を日本と同じ朝昼夕食の3食にしています。
15. 南極で他の国の越冬隊の人たちと交流はあるのですか?
昭和基地から最も近い外国の越冬基地までは1000km以上も離れています。越冬中は基地の間を行き来する交通手段がありませんので人と人とが直接交流することは不可能です。交流は通信による情報の交換だけです。
16. 観測隊の仕事内容は主にどんなものがあるのですか?
観測隊員は観測部門と設営部門に分かれています。観測部門の隊員は気象庁や大学などからの研究者で、気象観測、オーロラ観測、雪氷観測、重力・地震・潮汐観測、生物・医学観測などを行います。 一方で、設営部門の隊員は、基地の設備や生活の維持などを担当する電気、機械、建築、車両、通信、調理、医療、環境保全などの専門家です。※南極越冬隊長の体験記はこちらから。
17. 南極はどのくらい寒いのですか?
地球上で記録された最低気温は、1983年に南極のボストーク基地(ロシアの基地)で記録されたマイナス89.2℃です。日本の南極観測基地の年平均気温は、昭和基地が約マイナス10℃、みずほ基地が約マイナス32℃、あすか基地は約マイナス18℃、ドームふじ基地は約マイナス54℃です(出典:国立極地研究所 南極・北極科学館WEBサイト)。ただ、ツアーで行く西南極地域は観光ベストシーズンである1月の日中平均気温が0℃前後と内陸部に比べると比較的暖かい(?)気候です。
18. 南極へ旅行するにはどうやっていくのですか?
南極ツアーのほとんどは南米からのアクセスです。一つは空路で向かう方法。チリ・プンタアレナスから南極のキングジョージ島行きの飛行機が出ており、2時間程度で到着します。南極の内陸部・ユニオンブレーシャーベースキャンプまでの空路もあり、約4時間15分で到着します。もう一つは航路で向かう方法。アルゼンチン・ウシュアイアは、南極大陸から1000㎞と南極に最も近い港町で、船に揺られること2日間で南極へ到着します。
19. 南極旅行で役立つものを教えてください。
※南極旅行における服装についての詳細はこちらをご覧ください。
■帽子
奪われる体温の半分は頭部からです。「つばと耳当て付の帽子」をお持ちになると便利です。
■ネックウォーマー&フェイスウォーマー
冷たい風から首回りや顔を保護するのにとても便利です。
■リュックサック
南極クルーズでは、乗下船の際、ゾディアック・ボートを利用しますので、安全のため、両手を空ける必要があります。
■手袋
フリース製とポリエステル製の厚手の手袋を2組、水に濡れても速乾性のあるものが便利です。
■あると便利! 南極旅行で役立つアイテム
・UV(紫外線)カットのサングラス
・UV(紫外線)カットの日焼け止めクリーム、またはローション
・乾燥から肌を守るためのスキンクリーム、またはローション
・唇の乾燥(荒れ)を防ぐリップクリーム
・コンタクトレンズを利用の方は、予備のめがね
・使い捨てカイロ
・カメラ用予備のバッテリー、充電器、メモリーカード
・野生生物を観察するのに便利な双眼鏡
20. 南極旅行に行くとどのような体験ができますか?
南極旅行の大きな楽しみのひとつは、何といっても野生動物たちとの出会いです。ペンギン、ミナミゾウアザラシ、ナンキョクオットセイ、ザトウクジラ、海鳥などとの遭遇が期待できます。また代表的なアクテビティとして、波も穏やかで氷も少ない安全な場所で実施する「飛び込み体験」や、島に上陸して、寝袋で一夜を過ごす「キャンプ体験」などがあります。最後にぜひ体験してほしいのが、南極の氷を使った“ウイスキーオンザロック”。南極の氷は長い時間をかけてできています。例えば何十万年前にできた氷には、その当時の空気が閉じ込められており、氷が融ける際にパチパチと空気が弾ける音がします。
回答:佐藤夏雄名誉教授(国立極地研究所元副所長・現特別客員研究員)、たびよみ編集部
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