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全客室に露天風呂の宿 山屋蒼月(群馬・赤城高原温泉)

場所
> 前橋市
全客室に露天風呂の宿 山屋蒼月(群馬・赤城高原温泉)

全19室の「大人の隠れ宿」 湯けむり越しに赤城の名月

榛名山、妙義山と並び、上毛三山の一つに数えられる赤城山。その南麓に、全19室に露天または半露天風呂を備えた宿「山屋蒼月」がある。国の観光需要喚起策「Go To トラベル」事業の影響もあって満室続きだった12月上旬、1室に空きができたのを確認。すぐに予約を入れて宿に向かった。

何といっても都心からの近さが魅力的だ。関越道を利用し、車で2時間ほどで到着。鉄道利用なら上毛電鉄大胡駅が最寄り駅だ。到着すると宿名が書かれた表札の掛かった玄関口があり、一見すると小さな温泉宿という印象。だが、緩い勾配のアプローチを歩いていくと、その奥にはいくつもの建物が立ち並んでいた。実は5000坪(約1万6500平方㍍)という広大な敷地に本館(8室)、別館(4室)、別邸(4室)のほか、離れが3棟立っていて、池にはニシキゴイが泳ぎ、人工の小川が流れている。「大人の隠れ宿」をコンセプトにしており、13歳未満の宿泊は受け入れていない。夫婦やカップル向きの宿だといえよう。

実際に宿泊した「有明」の露天風呂。メイン写真は、畳素材の床に設けられた、離れ「観月」の露天風呂

チェックイン後、案内されたのは「月あかり」と名付けられた別館の1室「有明」。約12畳の居間と約4.5畳の寝室からなる間取りで、露天風呂は大きな窓の向こう側に広がるウッドデッキに設けられている。デッキに出ると、すでに湯はヒノキ造りの湯船を満たしていたが、湯口からは透明な湯がとうとうと流れ続けていた。

宿の手島弥寿也社長によると、温泉は敷地内にある二つの源泉の湯をブレンドしたもので、鉄イオンとメタケイ酸を多く含んでいる。加水はしていないが、温度が14度と低いためボイラーで加熱して各部屋の風呂に分配しているという。同じ源泉でありながら、客室の湯は無色透明なのに大浴場の湯がやや褐色に見えるのは、酸化の具合によるものらしい。

荷をほどき、早速湯につかる。到着したら「まずはひとっ風呂」というのが、温泉宿を訪れた時のお約束。頭の中を空っぽにして、しばし湯に体を沈めた。

広々としたウッドデッキに大きめの露天風呂が設置されている離れ「朧月」

自然との一体感に満足

その後、翌日のチェックアウトまでの間に何度湯につかっただろうか。夕食後、寝る前、夜中に目覚めて、そして朝日を浴びながら、チェックアウト前にもう一度……。

正直言えば、面倒くさがりの性分ゆえ、日頃は「入浴なんて体を洗えば十分」というシャワー派。浴槽に身を沈めることにさほど魅力を感じないタイプなのだが、すぐ目の前に常に風呂があるとなれば、いささか話は変わってくる。「せっかくだから、もう1回入ってみようかな」と思うや否や、つい浴衣の帯をほどいてしまうのは、根が貧乏性だからなのだろうか。

自嘲気味にそんな自己分析もしてみたが、何度も風呂に入ることで改めて認識したことがある。月並みではあるが、露天風呂の魅力は自然との一体感を味わえることなのだと。風が吹き、木の小枝が揺れるのを湯船の中から見ていると、体を洗うことを目的にした入浴とは別の世界がある。しみじみそう思った。

宿名の表札が掛かった玄関口

宿名について、手島社長は「国定忠治をテーマにした『名月赤城山』に象徴されるように、昔から赤城山と言えば月が有名。それに、ここの立地とも相まって、年に何回か、青く照らす幻想的な月を見ることができるんです」と、明かしてくれた。ちなみに離れの名前はそれぞれ「観月」「浮月」「朧月」、本館は「月の彩り」、別邸は「月のせせらぎ」。月へのこだわりは強い。

今回、何度も客室の露天風呂に入った中で、最も自然との一体感を覚えたのは、就寝前の入浴だった。もうもうと立ち上る湯けむりに包まれながら夜空を見上げると、ほぼ真上に月があった。満月でも青い月でもなかったが、自分なりの「赤城の名月」を見たような気持ちになった。

【宿データ】

1人分宿泊料金(消費税・サービス料・入湯税など諸税込み)

2人1室利用の場合(1泊2食)平日は1万8850円~(休前日は2万2150円~)

(出典「旅行読売」2021年2月号)

(ウェブ掲載 2021年3月11日)

群馬県産の素材にこだわった「山中料理」。コンニャクの刺し身、上州麦豚の雪見鍋など

Writer

松本浩行 さん

東京都墨田区出身。月刊「旅行読売」編集部勤務から3年間の青森県勤務(読売新聞弘前支局)を経て、2019年11月、月刊「旅行読売」編集部に戻る。これまでに群馬県、石川県、宮城県などでも勤務した経験をもつが、今では「歌手ならりんご娘(ご当地アイドル)、山なら岩木山、果物ならリンゴ」と語る青森推しの編集長。

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