【旅する喫茶店】喫茶チロル(京都)
木を多用した温かみのある店内。現在は観光客も多いそう
ドラマで話題になった山小屋風の一軒
二条城から南へ歩いてすぐ、御池(おいけ)通沿いの喫茶チロルは、秋岡さん一家が家族で営むアットホームな店だ。山好きの先代が山小屋をイメージし、1968年に夫婦で開業した。木製シャンデリアなど店内は木の温かみがあり、赤黒のストライプのひさしや鉄製の窓飾りに欧風の愛らしさも漂う。
「大工だったおじが京都中を駆け回って装飾を考え手掛けました。おばがデザインした看板とマッチも好評です」と先代にあたる父から店を継いだ2代目の秋岡誠さん。
コーヒーはUCCから指導を受けた父の味を受け継ぐネルドリップ。昔ながらの濃厚な味わいで、後に残る香りがなんとも豊かだ。オムレツ風のふわとろの厚焼き玉子を挟んだ玉子サンドや自家製カレーとも相性が良い。かつてビジネスマンの憩いの場としてにぎわったというが、1997年の地下鉄東西線開通で人の流れが変わって客足が遠のき、一時は店を畳むことも考えたとか。
けれども2011年、常連の劇団員が制作したドラマ『タクシードライバー祇園太郎』がNHKで放映され、主人公のなじみの店として作中に登場してファンが訪れるように。懐かしい雰囲気に魅了され、新しい客が増えたという。そんな歴史とともに、この可愛らしい店で秋岡さん一家のおもてなしの心を感じたい。
文・写真/児島奈美
喫茶チロル
住所:京都府京都市中京区門前町539-3
交通:地下鉄東西線二条城前駅から徒歩4分、山陰線二条駅から徒歩7分
TEL:075-821-3031
(出典 「旅行読売」2021年12月号)
(ウェブ掲載 2021年12月31日)
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