高尾山で朝焼けの富士山を望む(2)
山頂から朝焼けの富士山を眺める
暗闇の1号路を上り髙尾山薬王院へ
高尾山で朝焼けの富士山を望む(1)より続く
前夜に借りたヘッドランプを身に着けて、午前5時に出発した(荷物の預かりも可能)。ケーブルカーの清滝駅を左に見て、登山道「1号路」に入ると街灯はなく真っ暗闇になった。ヘッドランプを点灯すると、予想よりも足元がしっかり見えて歩きやすい。
ここからケーブルカーの高尾山駅まではきつい上り坂の連続で、冷たく澄んだ空気を深く吸いながら一歩一歩上っていく。高尾山駅近くのかすみ台に着く頃、東の空はオレンジ色に変わり始めた。どうやら日の出が近いようだ。
この先に待つのが髙尾山薬王院だ。744年に聖武天皇の勅令で高僧の行基(ぎょうき)が開山。南北朝期から飯縄大権現(いいづなだいごんげん)を本尊として祀(まつ)り、修験道の根本道場となった。飯縄大権現の随身が天狗(てんぐ)であり、境内各所にその姿が見られる。誰もいない本堂で合掌した後、もうひと頑張りすると待望の山頂だ。
なお、ケーブルカー高尾山駅近くにある売店・食事処「高尾山スミカ」には帰りに寄りたい。名物の天狗焼は、天狗の顔をかたどったモチモチの生地の中に、ほどよい甘さの黒豆あんが詰めてある。黒豆あんは北海道産の黒豆をゆっくり炊き上げた後、秘伝のミツを加えて煮詰め、一晩寝かせるという逸品だ。1個150円(※2022年3月現在)。
山頂で朝食をとり、下山後は極楽湯で汗を流す
最奥の展望台に立つと、丹沢山塊(さんかい)の奥に朝焼けで赤く染まった富士山が顔をのぞかせていた。紅富
士が見られるのはこの瞬間だけ。夜明け前から1時間40分ほどの登山だったが、その苦労が一瞬で消えた。東側から見下ろせる黄金色に輝く市街地もまた美しい。
絶景とともに前夜に受け取った朝食を味わったら、途中につり橋のある4号路を経由して1号路で下山する。飛び石で沢を渡り、水行(みずぎょう)道場の琵琶滝に寄り道できる、雰囲気の違う6号路でも下山できるので、コースを替えてもいい。
下山後は高尾山口駅の隣の「京王高尾山温泉 / 極楽湯」に直行。地下約1000㍍から湧くアルカリ性単純温泉のほか、人工炭酸温泉、マイクロバブル(気泡湯)、替わり湯などがそろい、強張った体をほぐしてくれる。時計を見ると昼を回ったばかり。今頃、山頂はさぞにぎわっているだろう。ちょっぴり早めにゴールした優越感を味わいつつ、露天風呂から青空を見上げた。
文・写真/内田 晃
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住所:東京都八王子市高尾町2229番7
交通:京王高尾線高尾山口駅から徒歩すぐ
料金:平日1000円、週末1200円(※掲載時の料金。最新の情報はホームページなどをご確認ください)
TEL:042-663-4126
(出典:「旅行読売」2022年5月号)
(WEB掲載:2022年5月30日)