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【文化財の宿】蒲郡クラシックホテル(1)

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【文化財の宿】蒲郡クラシックホテル(1)

城郭風の建物は元鉄道省の建築家などが設計。開業年に鉄道省国際観光局が「第1回国際観光ホテル」に指定

 

 

三河湾を望む、昭和初期の建物

蒲郡(がまごおり)クラシックホテルの公式インスタグラムで、面白い動画を見つけた。開業当時の絵葉書と同じ場所から撮影した現在の風景を重ねて、時代の流れを見比べるのだが、特徴ある城郭風の建物は何ら変化しないのだ。昭和初期に完成したクラシックホテルの建物がそのまま残り、現役で使われているのは希少なこと。ぜひ一泊してみたくなった。

ホテルは蒲郡のシンボル竹島や三河湾を望む高台にある。急坂を上り、玄関前に立てばすぐさまドアマンが扉を開き、迎え入れてくれた。館内はアール・デコ様式で統一され、正面に吹き抜けのフロア、右側は本革のソファが並ぶロビーになっていた。

(左)蒲郡ホテル時代の照明がともるロビー(右上)シルクハットがお似合いのドアマン袴田俊介さん。その笑顔から非日常の空間が始まる(右下)針で位置を示すエレベーターの表示板も蒲郡ホテル時代のもの

ベーブ・ルースも泊まった歴史

同館が「料理旅館常磐館」の別館「蒲郡ホテル」として開業したのは1934年。当時は国策で外国人観光客を誘致するためのホテルが各地に建てられ、同館では外国人旅行者に注目されるように、外観を城郭風にしたそうだ。建設費は40万円。その頃の蒲郡町の年間財政が約18万円というから、いかに巨費を投じたかが分かる。現在はホテルのほか、六角堂、料亭など4棟が残り、2022年2月に国の登録有形文化財に登録された。

第2次世界大戦、三河大地震、伊勢湾台風など数々の試練を乗り越えたが、1980年にホテルは蒲郡市へ売却。7年後、プリンスホテルが「蒲郡プリンスホテル」として営業を再開した。さらに2012年から呉竹荘が事業を継承し「蒲郡クラシックホテル」と改称している。

経営が替わる時に資料などが散逸することはよくある。そこで、2017年の「日本クラシックホテルの会」への参加を機に「歴史を探る会」を結成。蒲郡ホテルや常磐館に関する調査を始めた。

開業年に日米野球で来日したベーブ・ルースらアメリカチームの宿泊が分かったことや、メインダイニングルームで味わえるビーフカツレツの復活もその成果だ。

「想像ではなく、事実に基づく正確な記録を残したい」と会のメンバーでもある広報の山本尚生さん。真摯な姿勢に好感が湧いた。

(左)ゆったりとした海側ツインルーム。ひとり泊で利用できる (右)大きな窓から竹島を望む海側スイートルームの寝室。隣に明るい雰囲気のリビングがある

すっかり話し込み、気づけば夕暮れ時に。「とびきりの特等席」と支配人の石原孝康さんに誘われたのが2階ラウンジのテラス席だ。ちょうどアルコール類が半額となるハッピーアワー(16時~18時)。普段なら生ビールと即答だが、今日はシャンパンを注文。夕日に染まる三河湾を眺めながらグラスを傾ける。柄にもないことが自然にできる。これもクラシックホテルの魔法かもしれない。

なお、1泊2食プランの夕食はメインダイニングルームのフレンチ、六角堂の鉄板焼、料亭竹島の会席料理から選べる。

文・写真/内田 晃

【文化財の宿】蒲郡クラシックホテル(2)へ続く

ラウンジでは厳選ブドウを使い3年熟成したシャンパン「ドゥ・ヴノージュ」を味わう

蒲郡クラシックホテル

住所:愛知県蒲郡市竹島町15-1

交通:東海道線・名鉄蒲郡線蒲郡駅からタクシー5分/東名高速音羽蒲郡ICから11㌔ 

TEL:0533-68-1111

料金:1泊2食付き2万3000円~(税・サ込み/2人1室利用)
(※掲載時の料金。公式ホームページなどで要確認)

客室:バス・トイレ付き25平方㍍ツインなど(全27室)

 

(出典:「旅行読売」2022年6月号)

(Web掲載:2022年7月14日)


Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

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