【鉄道開業150年】東海道新幹線こだま号で西へ(2)
N700A走行写真(米原駅)
こだま号ならではの旅の味わい
【鉄道開業150年】東海道新幹線こだま号で西へ(1)より続く
小田原駅の先で小田原城、熱海駅の手前で相模湾に浮かぶ初島が見える。新幹線の車窓スポットは数多くあり、各駅に停車するこだま号の方が、よりそれを楽しめる。
小田原、三島、新富士駅などでは3分~5分停車し、のぞみ号などに先を譲る。通過線を高速で走り抜ける列車は迫力満点だ。こだま号に車内販売はないが、停車時間を利用してホームやコンコースの売店で駅弁などを購入できる。これもこだま号ならではの魅力だ。なお各駅の売店は、ホームの6~8号車付近にあることが多い。
三島駅の先では、愛鷹(あしたか)山の裾野の向こうに富士山が顔を出した。1964年の開業時、当時の運転士の話では、スモッグや排気ガスのため、晴れていても富士山が見える日は多くなかったという。ただ正月だけはびっくりするほどきれいに見え、「今日は富士山がよく見えます」という車掌のアナウンスが聞かれたそうだ。
新幹線は1974年に食堂車の営業を開始し、かつては富士山を見ながら車内で食事が楽しめた。「走るレストラン」と呼ばれたが、列車の高速化や、新幹線の需要増加で一般車両を増やしたい理由もあり、2000年に全廃された。
掛川城、茶畑、浜名湖の眺望を楽しみ、愛知県へ。
滋賀、京都の風景を車窓に眺めながら
名古屋駅を出発すると、6分後に木曽川を渡り岐阜県に入る。筆者が名古屋に住んでいた小・中学生の頃、友人と自転車で木曽川へ遊びに行った。名古屋の中心部から木曽川へは自転車で3時間ほどかかり、ちょっとした冒険旅行の気分であった。しかし新幹線ならわずか6分。その速さに改めて驚愕(きょうがく)する。
岐阜羽島駅を出ると長良川、揖斐(いび)川がわを渡り、関ヶ原へ向けて高度を上げていく。垂井町(たるいちょう)の辺りは20パーミル(1キロ進んで20メートルの高低差)の急勾配。時速285㌔で走る新幹線の場合、1秒間に約1.6メートル上昇する計算だ。下から押し上げられるような感覚となり、右に見える平野部はみるみる下方へ降りていく。まるで飛行機の離陸時のような車窓展開だ。
伊吹山、彦根城、東寺の五重塔などの車窓スポットを過ぎ、東京駅から約4時間後、新大阪駅に到着。こだま号ならではの「のんびり旅」を堪能できた。
文・写真/谷崎 竜