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【桜の咲く駅へ】土讃線で行く「らんまん」で話題の牧野公園(1)

場所
> 佐川町
見頃
2月上旬~4月上旬
【桜の咲く駅へ】土讃線で行く「らんまん」で話題の牧野公園(1)

春色に染まる牧野公園。佐川町では町全体を植物園に見立て、植物を通して人々の交流を目指す

 

植物学の父・牧野博士が育った桜の里へ

2023年4月に始まるNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなる牧野富太郎(1862~1957年)。「日本植物学の父」と称される博士は、故郷の高知県佐川町に美しい桜をもたらしたことでも知られる。話題の「牧野博士の桜」を見に行こう。

岡山駅から特急南風に乗り、高知駅で特急あしずりに乗り換える。春日川沿いなどの桜が車窓から見え始めたところで、佐川駅に到着した。まずは歩いて5分ほどの町の中心部、上町(うえまち)地区へ。土佐藩の筆頭家老、深尾氏が城下町を築き、酒造りが盛んな地域だ。伝統的な商家住宅や酒蔵が点在し、そぞろ歩きが楽しい。

牧野博士は1902年に東京染井村のソメイヨシノの苗木を郷里に送り、住民が上町地区南側の「奥の土居」と呼ばれる場所に植えた。苗はすくすくと育ち、大正末期〜昭和初期には多くの花見客が訪れるようになったという。

太平洋戦争で奥の土居は荒廃したため、地元商工会を中心に56年に復活の取り組みをスタート。牧野博士が永眠した翌年に「牧野公園」と名付けられ、2代目の桜は70年代に最盛期を迎えた。「その桜も老木となり、2008年から町が再生事業を始め、今の桜は3代目です。初代と2代目はソメイヨシノが中心でしたが、3代目は花を長く楽しめるよう、約30種を植えています。稚木(わかき) の桜やオオシマザクラなどで、博士が学名を発表した桜もあります」と佐川町まちづくり推進課の戸梶友子さんは話す。

ほのぼのとした春の土讃線(佐川-西佐川駅間)
素朴な佐川駅だが、桜のシーズンは花見客でにぎわう

酒蔵の道に立つ旧浜口家住宅の角を曲がり、邸宅の黒い壁と酒蔵の白い壁に挟まれた道を進むと、桜と苔(こけ)むした石垣が美しい青源寺(せいげんじ) がある。さらに道なりに左へ曲がると山の斜面に牧野公園が広がる。桜の木々を縫うようにつづら折りの坂道が続く。

牧野博士の分骨が埋葬された墓をお参りし、物見岩まで上がると、桜の枝越しに佐川町や土讃線が一望できた。2023年3月18日〜4月9日には、さくらまつりを開催。園内の花見棟・座敷棟では桜餅やおでん、日本酒などが販売される。期間中は18時〜21時(予定)にぼんぼりが点灯され、夜桜見物でにぎわう。

文/児島奈美

 

【桜の咲く駅へ】土讃線で行く牧野公園(2)へ続く

夜桜も美しい上町地区。商家の邸宅と酒蔵の間の路地から牧野公園へ

牧野公園

見頃: 2月上旬~4月上旬

牧野博士から送られて育ったソメイヨシノは、太平洋戦争中に全て伐採。戦後、地元住民が1000本以上の苗木を植樹して復活させ、1990年に「日本さくら名所100選」に選ばれた。その桜も老木化により、2008年から再生事業を進め、現在は約30種350本の桜を観賞できる。

■無休/無料/佐川駅から徒歩10分/☎0889・20・9500(さかわ観光協会)

 

(出典:「旅行読売」2023年4月号)

(Web掲載:2023年3月29日)

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Writer

児島奈美 さん

神戸生まれ。学生時代にバイクで北海道、九州、信州を巡って旅に目覚め、約40か国渡航。1か月のキャンプ旅でも太って帰ってくる食いしん坊で、現在は、旅・グルメ・人物インタビューを中心に、ガイドブックや雑誌、Webなどの制作に携わる。「旅行読売」ではルポがメイン。鉄子や歴女の道も着々と歩む。

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