【私だけのひとり旅】今年話題の盛岡で、絵になる建物と喫茶店めぐり(1)
辰野金吾が設計した岩手銀行赤レンガ館は、東京駅丸の内駅舎とそっくり。営業は10時~16時30分、火曜休、一部有料300円(※掲載時のデータです)
ニューヨークタイムズ紙の「今年行くべき世界の旅行先」に選出
今年1月、アメリカの新聞ニューヨークタイムズ紙が、「2023年に行くべき52か所」を発表し、ロンドンに次ぐ2番目に盛岡の名前が載った。推薦文を書いた記者は「東京から新幹線ですぐに行ける、人混みなく歩いて回れる宝石的スポット」と称賛。――青天の霹靂(へきれき)。観光関係者の多くは突然の一報に驚いた。記事の反響は大きく、国内外の観光客が確実に増えたという。その魅力を確かめに、ひとり盛岡へ向かった。
東京駅で東北新幹線に乗り2時間強の盛岡駅から歩き始める。東京から新幹線1本で行けるアクセスのよさもポイントだ。最初に訪ねたのは、盛岡らしい場所として一番に思い浮かんだ民芸品店の光原社(こうげんしゃ)。大正時代に出版社としてスタートし、宮沢賢治の童話集『注文の多い料理店』を出版した後、南部鉄器や漆器の製造販売を始めた。やがて民藝運動を主導した柳宗悦(やなぎむねよし)、染色家の芹沢銈介(せりざわけいすけ)、版画家の棟方志功(むなかたしこう)らと交流が生まれてその思想に共感し、1965年から現在のような民芸品店になったという。
敷地内には全国の民芸品を販売する本店のほか、賢治の資料館「マヂエル館」、海外のアクセサリーなどを販売する「カムパネラ」、喫茶店「可否(コーヒー)館」がある。可否館でコーヒーを飲んでいると、ステンドグラスを透過した色鮮やかな光がテーブルに映り、目を上げれば庭の竹林や百日紅(さるすべり)の緑がまぶしい。賢治が生前発表したのは前述の童話集と自費出版した詩集『春と修羅』だけだった。独特の世界観が表現されている空間にひたりながら、詩人の短い生涯に思いを致す。
「庶民の暮らしの中に美しさ、価値を求める民藝運動の姿勢は、賢治の考えとも通じるものがあったのかもしれません」と光原社のスタッフは言う。
光原社のある材木町通りは別名「いーはとーぶアベニュー材木町」と呼ばれ、ゆかりの地として賢治をモチーフにした彫刻6点が置かれているので、見て回るのもいい。
文/福﨑圭介 写真/三浦健太郎
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盛岡 立ち寄りたい店
光原社の始まりは出版社で、創業者・及川四郎の学校の先輩である宮沢賢治により命名された。大正13年、童話集『注文の多い料理店』を出版。その後、鉄器・漆器の民芸品の製造、販売を始め、休憩できる可否館(喫茶店)を開いた。深煎りコーヒー550円。賢治が求めた理想郷「いーはとーぶ」の豊かさを感じる静かな店。
■10時~17時30分/毎月15日(土・日曜、祝日の場合は翌平日)休/東北新幹線盛岡駅から徒歩10分(盛岡駅から右回り循環バス3分、材木町南口下車徒歩2分)/TEL:019-622-2894
※掲載時のデータです。
盛岡観光コンベンション協会 TEL:019-604-3305
■モデルコース
盛岡駅
↓ 徒歩10分
光原社
↓ 徒歩2分
材木町南口バス停
↓ 循環バス14分
盛岡バスセンター(ホテル マザリウム)
↓ 徒歩3分
紺屋町(東家、番屋、ござ九など)
↓ 徒歩3分
岩手銀行赤レンガ館
↓ 徒歩3分
もりおか啄木・賢治青春館
↓ 徒歩10分
盛岡城本丸跡
↓ 徒歩15分
開運橋のジョニー
↓ 徒歩7分
盛岡駅
(出典:「旅行読売」2023年6月号)
(Web掲載:2023年7月4日)