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【私の街の路面電車】愛され続ける札幌市民の足 札幌市電(1)

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> 札幌市
【私の街の路面電車】愛され続ける札幌市民の足 札幌市電(1)

ヒグマも生息する藻岩山の麓を走る210形は1958年製。都市と自然が共生する札幌ならではの風景だ

 

札幌の暮らしとともに1世紀 環状路線でのんびり街巡り

街路樹の緑がまぶしい。頬をなでる風が心地いい。北国の爽やかな夏をクルマで駆け抜けてしまうのはもったいない気がして、今日は札幌市電で出かけることにした。

停車時間を含めた市電の平均速度は時速10~15キロ。地下鉄やクルマに比べれば、ずいぶんのんびりとした乗り物かもしれない。だが市電には効率だけでは計れない魅力がある。札幌市民に愛され続けてきた理由がある。市電の車窓から、沿線から、それがきっと見えてくるはずだ。

バリアフリー対応の低床車両・愛称「ポラリス」は最新型

市電の歴史をひも解くと、札幌の街に路面電車が走り始めたのは1918年。その後、市内の東西南北に路線を拡大し、60年代前半まで札幌の重要な交通手段として人々の暮らしを支えてきた。

しかし、クルマの増加や冬季オリンピック札幌大会に向けた地下鉄開業に伴い、市電は続々廃止に。74年には現路線の西4丁目とすすきのの間を除く路線のみとなった。

多くの都市から路面電車が姿を消し、札幌市電にも幾度か廃止論が持ち上がった。それでも沿線住民の存続を望む声に支えられ、走り続けてきた。2012年には途切れていた区間約400メートルを復活させての市電ループ化が決定。その3年後の15年12月、西4丁目―すすきの間に狸小路(たぬきこうじ)停留場を新設のうえ、市電路線が一続きになった。

雪もへっちゃら。竹のブラシで軌道上を除雪するササラ電車は冬の風物詩

途中下車してぶらり札幌散歩

現在の市電は、碁盤目状の市中心部を一周する環状路線だ。時計回りの外回りと、逆のルートをたどる内回りがある。狸小路停留場前に2023年7月、誕生した複合施設「モユクサッポロ」内の水族館「AOAOSAPPORO(アオアオサッポロ)」を楽しんだ後、外回りの電車に乗り込んだ。狸小路周辺は歩道から直接乗車できるデュアルサイドリザベーション方式で便利だ。

にぎやかなすすきのを抜けて資生館小学校前から南へ曲がると、下町風情の街並みが続く。そういえばこの辺りに人気のサンドイッチ店「サンドリア」があるはずだと思い出し、山鼻9条で下車。地元客に混じって商品を選ぶのも楽しい。

道路の両脇に軌道を敷くデュアルサイドリザベーション方式は全国初

停留場に戻るとすぐに電車がやって来た。市電は日中7~8分間隔で運行しており、停留場間の距離も短いため、1日乗車券を使えば何度も〝チョイ乗り〟できる。地下鉄のような階段の上り下りもなく、高齢者や子ども連れにも優しい。

幌南(こうなん)小学校前から西に曲がると、正面に藻岩(もいわ)山が見えてきた。山頂でランチにしようと思い立ち、ロープウェイ入口で下車し、無料シャトルバスで山麓駅へ。ロープウェイとミニケーブルカーを乗り継いで15分ほどで山頂展望台に着いた。札幌の街
を360度見渡す大パノラマは圧巻だ。アイヌの人々が「インカルシペ(いつも上って見張りをする所)」と呼んだというのもうなずける。テイクアウトしたサンドイッチがひときわおいしく感じられた。

文/佐々木美和
写真/川村 勲

【私の街の路面電車】愛され続ける札幌市民の足 札幌市電(2) へ続く

■モデルコース
【狸小路】
moyuk SAPPORO〈モユクサッポロ〉
(AOAO SAPPORO)
↓10分
【山鼻9条】
サンドリア
↓20分
【ロープウェイ入口】
札幌もいわ山ロープウェイ
↓17分
【西8丁目】
俊カフェ

札幌市電沿線の見どころ&味どころ

moyuk SAPPORO〈モユクサッポロ〉

狸小路商店街に2023年夏オープンした最新複合施設。ペンギンなどが見られる都市型水族館をはじめ、グルメやショッピングなど多彩なスポットが集結。

■営業時間・定休日は店舗により異なる/狸小路停留場からすぐ/問い合わせはホームページから。AOAOSAPPOROは10時〜22時/無休/2200円(時期により変動)

※掲載時のデータです。

 

サンドリア

40年以上にわたり札幌市民に愛される手作りサンドイッチ専門店。人気No.1のダブルエッグサンド250円など常時約30種をラインアップ。

■24時間営業/無休/山鼻9条停留場から徒歩5分/TEL011-512-5993

※掲載時のデータです。

札幌もいわ山ロープウェイ

札幌市のほぼ中央に位置する藻岩山。山頂からは都市と自然が織りなす札幌の絶景を一望できる。「日本新三大夜景」に選ばれた札幌の夜景は必見。

■10時30分〜上り最終21時30分/ 無休/ 山頂まで往復2100円/ロープウェイ入口停留場からすぐの無料シャトルバス乗り場から2分でロープウェイ山麓駅 ※シャトルバスは平日17時15分〜、土・日曜、祝日10時15分〜に運行/TEL:011-561-8177

※掲載時のデータです。


札幌市電

●開業:1918年
●営業距離:8.9キロ
●停留場数:24
●「札幌市電24時間乗車券」:780円。使用開始から24時間乗り放題のモバイル乗車券。購入・使用にはアプリが必要。市電沿線の観光施設で利用できるデジタル優待クーポン付き。
●「路面電車1日乗車券」:500円。1日乗り放題。アプリから購入するモバイル版のほか、車内で購入できる紙のきっぷもある。モバイル版はデジタル優待クーポン付き。
●「どサンこパス」:400円。土・日曜、祝日、年末年始に利用できる1日乗車券。乗車券1枚で大人1人と子ども2人が利用可(大人1人でも利用可)。アプリから購入するモバイル版のほか、車内で購入できる紙のきっぷもある。モバイル版はデジタル優待クーポン付き。
●問い合わせ:札幌市交通案内センター/TEL011-232-2277

※掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2023年9月号)
(Web掲載:2023年9月13日)

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Writer

佐々木美和 さん

札幌を拠点に活動する道産子コピーライター。「“むずかしい”をカンタンに。“あたりまえ”をオモシロく」をモットーに、広告のコピーライティングはもとより、雑誌やウェブなどのライティングも手がける。好きな米は北海道産ゆめぴりか。好きな酒は栗山町・小林酒造の「冬花火」。

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