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【美しき天守へ】松本城 北アルプスを借景に威厳を保つ黒漆塗りの天守群(2)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 長野県
> 松本市
【美しき天守へ】松本城 北アルプスを借景に威厳を保つ黒漆塗りの天守群(2)

「堀越しに見る松本城も凛々しくて好きです。グリーンシーズンや紅葉の時期ももちろん素敵ですが、遠くに見える北アルプスが純白に染まる冬の景色もいつか見てみたいですね」と、「たびよみリポーター」の佐藤雅美さん

 

二つの国宝は松本市民の誇り

【美しき天守へ】松本城 北アルプスを借景に威厳を保つ黒漆塗りの天守群(1)から続く

「たびよみリポーター」の佐藤雅美さんと共に訪ねた松本城の旅の後編。天守に上った後は、清らかな水があふれる城下町を巡りグルメも楽しんだ。

「最上階からは北の方角を見ることを忘れずに」と松本まちなか観光ボランティアガイドの小原さんのアドバイスに従い窓から目を凝らすと、白壁、瓦屋根に八角形の太鼓楼が突き出た旧開智(かいち)学校校舎が見えた。現在は耐震工事のため休館中だが、1876年に完成した擬洋風の学校建築で、国宝に指定されている。「国宝の天守から国宝の旧小学校を眺められる。松本市の誇りです」。小原さんの真意はそれだった。佐藤さんも「国宝の建造物から、もう一つの国宝の建物を見るといのは初めての経験です。貴重な体験ができました」と、感慨深そうに語った。

旧開智学校校舎。耐震工事の完了が待ち遠しい

戦乱の世と太平の世、時代を反映する建造物群に感心

天守群は5棟からなるが、建造された年代は異なる。大天守とその隣の乾(いぬい)小天守、二つを結ぶ渡櫓(わたりやぐら)は1594年頃、月見櫓と辰巳附(たつみつけ)櫓は1634年に造られた。後者は3代将軍・徳川家光が善光寺参詣の際に立ち寄るということで、もてなしの場として増設された。天守や乾小天守には鉄砲狭間(さま)や矢狭間、石落などが見て取れ、いかにも戦いのためのもの。一方、月見櫓はその名の通り風流なたたずまい。

「戦乱の世と太平の世、建造時の時代背景を感じ取れるのも松本城の魅力ですね。それも松本城が人々を引き付ける要因の一つなのでしょうね」と、佐藤さんは分析。「貴重な城を大切に守ってきてくれた松本市民の皆様に感謝します」と続けた。

小原さんの解説を聞き、松本城のさらなる魅力に触れることができた
秋の松本城はイベントも多彩。11月3日~10日に国宝松本城Weekが開催されるほか、10月28日~11月12日に菊花展、10月15日に古式砲術演武が行われる

藩政時代の面影が残り、清らかな水が流れる城下を散策

本丸御殿跡や二の丸御殿跡を散策し、内堀越しの精悍な天守群と北アルプスの遠景を目に焼き付けたら、城下町を散策しよう。

城下町は城の北側が武家地、南側が町人町だった。町人町には今も藩政時代の面影が漂い、中町通りなどには蔵造りの建物が並ぶ。その近くを流れる女鳥羽(めとば)川の北岸には、雑貨や骨董の店、飲食店などが長屋風に軒を連ねる縄手通りがある。

女鳥羽川には短い橋がいくつも架かり、水面を見下ろすとその澄んだ水流に驚く。そう、松本は湧水の町。地下水が豊富で、通りの片隅や神社の一角などで井戸をよく目にする。松本城も水で守りを固めた城であった。現在も残る内堀、外堀に加え、総延長2キロに及ぶ総堀(一部は現存)に囲まれていた。しかし松本が戦いの場となったことは一度もなかった。「城も町も清らかな水も、時代を経ても変わることなく残っている。信州の涼やかな風に吹かれながら、平和の重みを改めてかみしめる旅にもなりました」(佐藤)。

商人町を再現したような雰囲気の縄手通り。「松本土産といえば、杉桶で仕込んだ『信州三年味噌』が好きなんです」と、佐藤さんは土産物店を丹念に巡った
女鳥羽川にはカジカガエルがすんでいたことから、カエルは縄手通りのシンボル。「しっとりした町並みとエキセントリックなオブジェ。その奇妙な取り合わせが印象的でした」と佐藤さん
女鳥羽川のほとりにて。「大都市の中心部でありながら水の清らかさに驚きました。松本はお城に目が行きがちですけど、湧水の町でもあることを実感できました。今回は日帰り旅行でしたが、松本にはのんびり過ごせる温泉やおいしい日本酒もあります。今度は1泊して、もっと松本の魅力に触れたいですね」(佐藤)

文/渡辺貴由
写真/齋藤雄輝
ヘアメイク/依田陽子

モデルコース(移動時間 約33分)

松本駅
↓バス 10分
❶松本城
↓徒歩 5分
❷蕎麦倶楽部 佐々木
↓徒歩5分
❸縄手通り
↓ 徒歩3分
❹中町通り
❺中町・蔵シック館
↓ 徒歩10分
松本駅

城下町の見どころとグルメ

中町・蔵シック館

中町通りの中ほどにある。中町に隣接する宮村町にあった造り酒屋・大禮(たいれい)酒造の母屋、土蔵、離れを移築。広場にはポンプ式の「蔵の井戸」もある。梁や座敷などを当時のままに復元した母屋は自由に見学でき、展示会などにも利用される。土蔵は喫茶店(10時~16時30分〈11月~3月は10時30分~15時30分〉、年末年始休)に活用されている。

■9時~17時/年末年始休/無料/松本市中央2-9-15/松本駅から徒歩10分/TEL:0263-36-3053

※掲載時のデータです。

「松本市内にはあちらこちらに井戸があるそうです。本物の井戸に触れたのは何年ぶりかしら? 古い建物にもマッチしていて、撮影スポットとしてもおすすです!」   
「外から見ただけでは気付きませんが、建物の中はこんなにたくさんの柱と梁が使われていたのですね」

蕎麦倶楽部 佐々木

松本城から徒歩5分ほどにあるそば処。麻績(おみ)、茅野、穂高の農家が栽培した小粒の在来種を使用。低温熟成によって甘み、香り、粘り気を最大限に引き出している。ヒマラヤ岩塩だけを付けて食べるスタイルもおすすめ。そばとつまみ5、6品、酒またはドリンクのセット(2500円)が基本だが、火・水曜は鴨つけそば1550円、もりそば1000円などそばのみの利用もできる。

■11時30分~14時、18時~21時/月曜休、奇数週火曜休、夜は木曜~土曜のみ完全予約制で営業/松本市大手4-8-3/松本駅から徒歩15分/TEL:0263-50-4387

※掲載時のデータです。

火・水曜の昼のメニューにある鴨つけそば。千曲のカラシダイコンのツユ、シメジ、マイタケ、鴨が入ったツユの2種で味わえる
「そば粉の比率は、試行錯誤の結果、93:7という数字にたどり着きました。田舎そばながら細めに切ってあります」と主人の佐々木文宣さんが話すと、「口の中にそばの甘みと香りがたっぷり広がりました。繊細な工夫の賜物なのですね」と佐藤さん

松本城

【築城】1593~94(文禄2~3)年/石川数正・康長
【種類】平城
【天守】五重六階(現存)
【遺構】天守、乾小天守、渡櫓、辰巳附櫓、月見櫓、堀ほか
【入城】8時30分~16時30分(ゴールデンウィーク、夏季時間延長期間は8時~17時30分、1月1日~3日は10時~15時)/12月29日~31日休/700円
【御城印】あり(1枚300円、2種セット500円)。松本城管理事務所で販売
【交通】篠ノ井線松本駅から徒歩20分。またはバス10分、松本城・市役所前下車すぐ 
【住所】松本市丸の内4-1 TEL:0263-32-2902(松本城管理課)

※掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2023年11月号)
(Web掲載:2023年10月6日)


Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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