【出港!海の旅】2泊3日の国内最長の洋上の旅 太平洋フェリーで北海道へ(1)
福島沖で太平洋フェリーの姉妹船がすれ違うタイミングは必見。乗客同士が手を振り合う光景も旅情を誘う
名古屋~仙台~苫小牧港を結ぶ国内最長のフェリー航路
名古屋港、19時。名古屋〜仙台〜苫小牧1330キロの航路を運航する太平洋フェリー「きそ」は、定刻通りに出港した。
ゆっくりと動き出したフェリーはいったんバックで進み、方向転換する。船首の先に見えてきたのは、赤い主塔がそびえる名港(めいこう)西大橋。伊勢湾岸道に架かるトリコロールカラーの三つの海上斜張橋「名港トリトン」の一つだ。
フェリーの速度が上がるにつれて海風が強さを増し、橋がぐんぐん頭上に迫ってくる。車が行き交う橋の真下を、フェリーは悠々と通過した。これぞ太平洋フェリー名物「トリトンくぐり」。船上でしか体験できない迫力満点の瞬間だ。
夕闇が深まり、港周辺の工場群の光が輝きを増していく。幻想的な工場夜景に見送られ、フェリーは北を目指して進む。小さくなっていく港の明かりを見つめていると、胸が締め付けられるような気持ちになる。これが旅情というものか。
洋上の旅には、空路や陸路では出合えない風景と感動がある。ゆっくりと流れる豊かな時間がある。さあ、船中2泊で北海道を目指す長い旅の始まりだ。
音楽に酔いしれ、星空を愛でる
「きそ」に乗船してまず目に入るのが、3層吹き抜けの開放的なエントランスロビーだ。トロピカルなモチーフや美しい光の演出が随所に施され、南国のリゾートホテルのような明るく華やかな雰囲気に、旅への期待がふくらむ。
レストランでビュッフェスタイルの夕食をゆっくりと楽しんだ後は、シアターラウンジへ。フェリー内とは思えないほど本格的なステージを備えたシアターの中は、ショータイムを待つ人々でいっぱいだ。ほどなくジャズトリオによるライブが始まり、場内は心地良いグルーブ感に包まれていった。
ショーの後には映画プログラムも用意されているが、今夜はライブの余韻に浸りながらゆったりと過ごしたい。甲板へ出てみると、街明かりに邪魔されることのない漆黒の夜空に、無数の星がまたたいていた。明日はいい天気になりそうだ。
文/佐々木美和 写真/川村 勲
いしかり・きそ
◉運航ダイヤ
<名古屋>19:00発 → 翌16:40着<仙台>19:40発 → 翌11:00着<苫小牧>
<苫小牧>19:00発 → 翌10:00着<仙台>12:50発 → 翌10:30着<名古屋>
◉料金(大人1人、A期間※)
仙台~苫小牧 名古屋~苫小牧 名古屋~仙台
S寝台 1万3000円 1万5700円 1万 700円
1等アウトサイド 1万7900円 2万3000円 1万5700円
特等 2万3000円 2万8200円 1万9000円
ロイヤルスイート 5万1800円 6万 900円 4万6300円
自動車(5メートル未満) 2万8600円 3万7000円 2万5700円
※A期間……5/8~7/20、8/22~11/30
※そのほかの期間の運賃や自動車運賃、「きたかみ」の運賃などについてはホームページをご確認ください。
◉アクセス
名古屋港=あおなみ線野跡駅からフェリーターミナル行きバス約10分(フェリー出航日には名古屋駅発の直行バスが運行)/伊勢湾岸道名港中央ICから1.5キロ
仙台港=東北新幹線仙台駅からフェリーターミナル行きバス45分、または仙石線中野栄駅からタクシー10分/仙台東部道路仙台港ICから3.5キロ
苫小牧港=室蘭線苫小牧駅からタクシー10分。札幌駅、苫小牧駅からバスが運行/道央道苫小牧東ICから12キロ
◉問い合わせ 太平洋フェリーTEL:050-3535-1163
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年8月号)
(Web掲載:2023年10月24日)