【私の初めてのひとり旅】市毛良枝さん 宝塚、熊本、長崎、登山(2)
初めて登った燕岳(つばくろだけ)で。すぐに山の魅力に取りつかれた
いちげ・よしえ [俳優]
1950年、静岡県出身。文学座附属演劇研究所を経て、71 年にテレビドラマ「冬の華」でデビュー。映画、舞台、テレビなどで幅広く活躍する。趣味は登山で、エベレスト、キリマンジャロなど海外の山岳にも登頂している。NPO 法人「日本トレッキング協会」理事も務める。新刊『73 歳、ひとり楽しむ山歩き(仮題)』が2024 年2月発売予定。
ひとりでも山へつらさ乗り越え何百倍の感動
【私の初めてのひとり旅】市毛良枝さん 宝塚、熊本、長崎、登山(1)から続く
自由と妄想がひとり旅の魅力だと思います。誰かと一緒だと、何かを聞いて、「そう?」などと返されるとさめるじゃないですか。ひとりならいくらでも妄想を膨らませられるので。性格的には石橋を叩いても渡らないくらい慎重なんですが、どうしてもやってみたいという気持ちが勝ると、飛び込んでみたくなるんです。山登りはまさにそうで、これ以上はまずいぞ、もう帰れっていう神の啓示かもしれないと思いながらも、行くしかないと判断する時もあります。
登山は40歳から始めました。父が入院した病院の先生が山好きで、初めはお話を聞いても「ふーん。でも山って危ないんでしょ」っていうイメージだったんですが、すごく楽しそうに話されていたのと、この先生は生きているな、そんなに危ないわけじゃないんだなと思って。父が亡くなってからお礼に行った時に、気楽に「今度山へ行く時に連れて行ってもらえませんか」と言ったら、その場で手帳を出されてスケジュールを決められて。北アルプスの燕岳に行ったのが初めてでした。
山は気持ちいいですよ。映像でも見られますが、自分の足で実際に登ると体に負荷がかかるから、それを乗り越えて見た景色はまったく違って見えるんです。風が吹いただけで気持ちいいし、一杯の水がものすごくおいしい。しんどかった分、感動が何百倍にもなります。
以前は山にも時間があればひとりでも登ったりしていましたが、コロナ禍以降はなかなか行けなくなりました。体はまだまだ元気なので山にも旅にも行ってみたいですね。
話・写真/市毛良枝
聞き手/山脇幸二
(出典:「旅行読売」2024年1月号)
(Web掲載:2023年12月28日)
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