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【文化財の宿】見とれるような美しさ 会津東山温泉 向瀧(2)

場所
> 会津若松市
【文化財の宿】見とれるような美しさ 会津東山温泉 向瀧(2)

大きな窓のある大理石の浴槽の「さるの湯」

 

無色透明の湯がこんこんと湧き出る自然湧出の自家源泉

【文化財の宿】堂々とした千鳥破風 会津東山温泉 向瀧(1)から続く

温泉は自然湧出の自家源泉。無色透明の湯がこんこんと湧き出て、あふれた湯はそのまま川に流れていく。二つの共同浴場と三つの貸切風呂(無料)があるが、まずは会津藩から受け継いだという「きつね湯」に向かった。44度~45度とかなり熱めだが、ゆっくり体を沈めると、次第になじんで気持ちがいい。湯上がりは手足の指の先までポカポカになった。

白御影石の小さな浴槽だけ置かれた「きつね湯」

食事は朝夕とも部屋出し。夕食には会津の郷土料理に加え、地の食材を使った創作料理が並ぶ。会津藩直伝の「鯉の甘(うま)煮」は、身が引き締まっているのにとろけるようなおいしさだった。

「鯉の甘煮」、「にしんのさんしょう漬け」など会津の郷土料理が並ぶ夕食

帰り際、平田社長に保存の苦労を尋ねると、使い続けることこそがよい保存の方法なのだと言う。

「ふすまがいつもより開きにくくなるとか、不具合は建物の悲鳴なんです。見てみると雪の重みでしなっていたりする。すぐに雪を下ろして、曲がった部分を少しずつ修復すれば、木は生きているので元に戻ります。使っているからこそ、建物の変化に早く気付けるんです」(平田社長)

予約のない部屋も毎日風を通すそうだ。

大広間。桐の柾目(まさめ)板の格天井(ごうてんじょう)は今では再現不可能

東山温泉から会津若松のシンボル、鶴ヶ城は目と鼻の先。宿からすぐの東山温泉駅バス停から、まちなか周遊バスあかべぇに乗れば、15分ほどで鶴ヶ城入口バス停に着く。あかべぇは会津漆器の店が並ぶ七日町(なぬかまち)通りにも停車するので、立ち寄るのもいいだろう。

文/高崎真規子
写真/三川ゆき江

鶴ヶ城。■天守は8時30分~16時30分/無休/410円/TEL0242-27-4005(鶴ヶ城管理事務所)
宿の売店には会津の伝統工芸品、会津漆器も置かれている
向瀧の冬の風物詩。中庭の雪見ろうそく。2024年2月29日まで、時間限定で開催予定。積雪のない場合は中止(写真/平田裕一)

立ち寄りたいお店

卯之家

東山温泉街にある食堂。ご飯の上にキャベツを敷き、自家製の甘じょっぱいソースにからめた揚げたてのカツを載せた会津名物の「ソースカツ丼」は、ロース900円(写真)のほか、チキン、ヒレ、エビと数種の味が楽しめる。丼に半ラーメンと馬刺しが付いた卯之家セットも人気だ。
■11時~14時、17時~20時30分/不定休/TEL:0242-27-2067


会津東山温泉 向瀧

TEL:0242-27-7501
住所:福島県会津若松市東山町湯本川向200
交通: 磐越西線・只見線会津若松駅からタクシー10分、またはバス10分、東山温泉
駅下車すぐ/磐越道会津若松ICから15キロ
客室:トイレ付き8畳~10畳和室、8畳+6畳和室など(全24室) 
料金(税・サ込み):1泊2食付2万3250円~(2人1室利用)、2万8750円~(1人1室利用)

※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2022年6月号に加筆)
(WEB掲載:2023年12月26日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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