たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

土佐の「宝物」と長宗我部家の栄光<高知県>(1)

場所
> 高知市,南国市
土佐の「宝物」と長宗我部家の栄光<高知県>(1)

高知城歴史博物館・企画展で特別公開中の土佐藩主・山内家ゆかりの名刀4振(いずれも重要文化財)
(写真上から)
■太刀 銘 備前国長船兼光/文和四年乙未十二月日(号(通称)一国兼光、高知城歴史博物館所蔵)。刃文・小湾(のた)れに互(ぐ)の目(め)、刃長75.5センチ(磨上)、反り2.1センチ、南北朝時代(1355年) 
■太刀 銘 備前国長船兼光/建武三年丙子十二月日(号(通称)今村兼光、高知城歴史博物館所蔵)。刃文・直刃、刃長80.7センチ、反り2.0センチ、南北朝時代(1336年) 
■太刀 銘 国時(掛川神社所蔵)。刃文・細直刃、刃長78.8センチ、反り2.4センチ、鎌倉時代 
■太刀 銘 康光(掛川神社所蔵)。刃文・互の目、刃長82.8センチ、反り3.2センチ、室町時代

 

群雄割拠の戦国時代の統一から土佐藩24万石を経て、高知県へ

ブームで終わらずに定着した刀剣ファン。いま注目の的は、土佐藩主・山内家が愛蔵した重要文化財の名刀四振。高知城歴史博物館の企画展「福をよぶ城博コレクション」で、ひときわ輝きを放っている。

企画・常設展示室がある3階の展望ロビーからは、高知城と追手門を一望できる

まずは号「一国兼光」。二代藩主・山内忠義が紀州藩主に譲渡を求められた時、例え将軍でも「土佐一国に替えても手放さない」と断った逸話が名に残る。兼光は備前国長船(おさふね)(岡山)の刀工でもう一振、号「今村兼光」も南北朝時代のものだ。

「兼光の二振が揃うのは、刀好きにはたまらない値打ちもの」と主任学芸員の尾本師子(おもとのりこ)さん。「若い頃に制作した『今村』は刃文が直線的な直刃(すぐは)で質実剛健。晩年の『一国』は切っ先も長い華やかさが魅力です」。

兼光と同じ「長船物」で室町時代の作品が銘「康光」。最も古い鎌倉末期、優美な「京物」の流れを汲む肥後菊池(熊本県)の作刀が銘「国時」。「『康光』は水を湛えるような艶やかで潤美(じゅんび)な地肌が特徴です。『国時』は先細でおっとり、かわいい感じでしょう」。鑑定ポイントの刃文や反りはもちろん、感性を揺さぶる刀剣の目利きは楽しみが多い。

初めて鑑賞する人に、尾本さんからアドバイス。「視点の高さや角度を変えながら見ると、刃文や地肌が見えやすいです」。企画展では「名刀大選挙」も開催。お気に入りの「推しの一振」を見つけ票を投じよう。

歴史と美術品のテーマに分けた総合展示室。ウサギの耳の形をし た変わり兜(右)など、山内家の貴重な収蔵品を展示

企画展と常設展は「土佐の宝物(ほうもつ)」と呼ばれる貴重な山内家資料6万7000点から他にない美術工芸の逸品を展示している。3階の展望ロビーは高知城を一望する絶好の「映えスポット」。全容を見上げてから望楼型天守に上り、高知市街を俯瞰するのが「高知通(つう)の楽しみ方」といえる。

高知城追手門の近くに立つ土佐藩初代藩主・山内一豊の騎馬銅像。総高9.4メートルで、騎馬像としては 国内最大級。桂浜にある坂本龍馬像と同じ本山白雲作
高知城天守から眺める高知市街地

高知城歴史博物館

太平洋を航海する船をイメージした外観。内装も土佐檜の壁 や土佐漆喰の壁、土佐和紙の天井など伝統の技が息づく

■9時~17時30分/無休/700円(高知城セット券900円)/TEL:088-871-1600
■交通:高知駅から路面電車15分、または徒歩25分

【企画展】
「福をよぶ城博コレクションわきたつめでたきもの」(2024年3月4日まで)
重要文化財の刀剣4振を特別公開するほか、年頭儀礼で藩主・家臣が着用した和紙製「紙衣」など土佐藩の正月行事の特集や、「福に満ちた暮らしの縁起物」の収蔵美術品なども展示する。3月2・3日(城博の日)は入館無料、伝統芸能の実演や文化財修復技法の体験、クイズラリーなどを開催。


※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年3月号)

(Web掲載:2024年2月2日)


Writer

旅行読売出版社 メディアプロモーション部 さん

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています