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土佐の「宝物」と長宗我部家の栄光<高知県>(2)

場所
> 高知市,南国市
土佐の「宝物」と長宗我部家の栄光<高知県>(2)

若宮八幡宮境内に立つ銅像「長宗我部元親公初陣之像」。見下ろす足元には四国全土が描かれ、ここから土佐統一と四国平定の第一歩を踏み出したことを物語る

 

受け継がれる「宝物」の刀剣と愛され続ける「出来人」に出会う旅

土佐の「宝物」と栄光長宗我部家の栄光<高知県>(1)から続く

明治維新の廃刀令の危機に土佐の人々は刀工を支援した。刀剣とともに愛したのが、土佐を統一し四国平定を成し遂げた武将・長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)である。22歳の元親が戦勝を祈願して初陣を飾った若宮八幡宮。社殿は縁起の良い蜻蛉(とんぼ)が飛び立つ姿の「出蜻蛉」様式で、境内に若武者姿の元親の銅像が立つ。宮司の大久保千鋭さんは、元親の時代の神職の末裔(まつえい)で28代目になる。

「幼少期は色白でおとなしく、姫若子(わこ)と呼ばれた元親が鬼若子となり、やがて『土佐の出来人』と賞賛されました。土着の英雄として愛され、どろんこ祭など長宗我部時代からの伝統行事がいまも続いています」

宮司の大久保千鋭さん

元親の居城だった岡豊(おこう)城は、岡豊山に残る城跡の一部が国史跡で「続日本100名城」にも選ばれた。隣接する高知県立歴史民俗資料館の「長宗我部展示室」は、元親ゆかりの品々を展示。資料館から山道を10分登ると「詰」(本丸跡)に到着する。

「礎石や石敷遺構から、本丸は南を正面に重層の建物と考えられます。発掘調査で天正三年銘の瓦が出土し、築城が土佐統一の年とわかりました」と発掘を手がけた副館長の松田直則さん。土塁積みで高さ1メートルの「腰巻石」、竪堀と横堀が交差する「畝状(うねじょう)
竪堀群」。尾根を登る敵の動きを竪堀や横堀で遮断し、土塁の上から鉄砲を放って撃退する構造は、四国平定にも用いた長宗我部の城の特徴だ。

岡豊城/標高97メートルの岡豊山の頂上部にあり、国分寺や国衙跡、浦戸湾に注ぐ国分川が眼下に広がる。1メートルほどの高さに積まれた土塁の腰巻石、 堀切や竪堀、本丸唯一の入口「虎口」から三の段へつながる石の階段など、敵の攻めに対する優れた防御は長宗我部の城の特徴で、土づくりの城の最後の遺構でもある。 (右)中央部に残る通し柱用礎石から、重層の建物だったと推定される
高知県立歴史民俗資料館の松田直則副館長

「合戦続きの土佐は防御施設が発達し、特に岡豊城は先進的な土造りの城です。ただ、豊臣秀吉の四国征伐で元親は土佐一国の支配となり、石垣のある織豊系城郭が登場します。土から石の城へ、天正年間は四国で時代が動いた変革期です」

防御に心を砕いた岡豊城は、一時は秀吉と対峙した四国の盟主・元親の矜持(きょうじ)かも……と想いを巡らす。その後、今は高知城がある地に石造りの大高坂城を、さらに土佐湾に面し水運の便利な浦戸城を築いた。水軍の将としての元親像も見えてくる。元親亡き後、関ヶ原で敗れ所領を失った長宗我部家。松田さんの呟きが耳に残って離れない。「元親が1年長生きしたら土佐の歴史は変わったかも。四国平定へ同盟を結ぶ外交手腕に優れ、病床の見舞いに訪れた徳川家康とは親しい間柄でしたから」。

歴史に「もし……」はタブーでも、想像を膨らませながら栄光の残像をたどってみたい。

浦戸城跡/元親が1591年に築城し10年間、長宗我部家最後の居城となった。北・東・南の三方を海が囲む天然要害の地で、浦戸港から畿内への 水運や水軍の要となった。織豊系城郭の天守や石垣の跡が残り、山内一豊は浦戸城の石垣を転用し高知城を築城したと伝わる
高知城三ノ丸から出土した大高坂城の石垣。小ぶりの自然石を積み上げた姿で、豊臣氏から拝領した桐紋瓦も出土し瓦葺きの城だったと推定される

若宮八幡宮

元親が戦勝祈願の社に定め、社殿を「出蜻蛉」様式に改めた。毎年4月第1土曜にお田植祭「どろんこ祭」を開催し、早乙女(女性)が男性の顔に泥を塗り五穀豊穣や無病息災を祈願。元親の命日(5月19日)に近い5月第2日曜には「長宗我部まつり」を開催する。
■交通:高知駅からバス30分、下車後徒歩10分
■TEL:088-841-2464

高知県立歴史民俗資料館

岡豊城跡の山腹、長宗我部家の居城の一部に立つ。常設展「長宗我部展示室」は、長宗我部家の栄光の軌跡や元親ゆかりの兜や鞍、城跡出土の天正三年銘瓦などを展示。陣幕を張る長宗我部軍の陣屋を再現してあり、体験・記念撮影ができる。
■9時~16時30分/年末年始休(2024年3月末まで休館中)/470円
■交通:高知駅からバス30分、下車後徒歩15分
■TEL:088-862-2211


※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年3月号)

(Web掲載:2024年2月2日)


Writer

旅行読売出版社 メディアプロモーション部 さん

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