たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【新幹線で春は北陸へ】芦原温泉駅発 あわら温泉と北前船で栄えた三国を歩く(2)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 福井県
> あわら市、坂井市
【新幹線で春は北陸へ】芦原温泉駅発 あわら温泉と北前船で栄えた三国を歩く(2)

国の登録有形文化財、旧岸名家など、かぐら建ての町家が残る三国湊きたまえ通り

 

日本海屈指の交易港だった三国湊きたまえ通り

【新幹線で春は北陸へ】芦原温泉駅発 あわら温泉と北前船で栄えた三国を歩く(1)から続く

翌日は三国まで足を延ばした。三国といえば越前がにや甘エビなど、三国港に揚がる新鮮な海の幸が名物。食べないで帰る手はない。が、もう一つどうしても行きたかったのが、北前船で栄えた頃の町並みが残る三国湊きたまえ通りである。

えちぜん鉄道三国駅から徒歩5分の狭い通りには、かつて商家だった町家が立ち並ぶ。まずはミニ資料館、マチノクラを訪ねた。15分ほどのガイダンスムービーで、三国の歴史をやさしく解説している。

北前船の寄港地の中でも、三国は特に繁栄した。九頭竜(くずりゅう)川の河口に位置しているため水運の拠点となったからだ。半年で2000艘(そう)の船が出入りし、年間33万俵もの米が運び出された記録もあるという。

その繁栄ぶりを垣間見られるのが、豪商たちが建てた建築物だ。旧森田銀行本店は豪商森田家が1920年に建てた福井県最古の鉄筋コンクリート造りの建物で、国の登録有形文化財となっている。

旧森田銀行
天井の豪華な漆喰模様は見事

豪商が建てた風格ある名建築

旧岸名家も北前船交易で栄えた商家で〝かぐら建て〟と呼ばれる、この地域独特の建築様式で建てられている。奥行きが長く、入り口から店、座敷、蔵、荷蔵と続き、出口から船着き場に行ける構造だ。往時は川に面して、こうした商家がずらっと立ち並んでいたのだろう。目をつぶると、活気ある船着き場の荷揚げの光景が浮かぶようだ。

旧岸名家の建物内。奥行きが長い町家で、入り口が店、奥には蔵があった

三国湊町家館には「三國湊お散歩マップ」も置かれているので、マップをもらって周辺を巡ってもいい。小腹が空いたら、三國湊座へ。ピクルスの代わりに三国産のラッキョウを使った三國バーガーが絶品だ。

三國湊座の三國バーガー700円

北前船で富を築いた豪商たちは、明治期に私財をなげうち、大型船が乗り入れしやすいように土砂の堆積を防ぐ突堤を造営したという。その突堤が今も残っていると聞き、再びえちぜん鉄道に乗った。三国港駅から5分ほど歩くと、三国港突堤がある。西洋の土木技術を取り入れた、当時としては先進的な工事だったそうだ。

三国港突堤。オランダ人技師エッセルによって九頭竜川河口に建設された

三国の壮大な歴史の物語を前に、おごそかな思いで大海原を眺めた。釣り人が静かに糸をたれている。海岸線の道を5分ほどバスで行けば、景勝地・東尋坊(とうじんぼう)。時間に余裕があれば足を延ばしてもいい。

文/高崎真規子 写真/三川ゆき江

【モデルコース】
芦原温泉駅
 ↓バス10分
あわら温泉(あわら湯のまち駅)泊
 ↓えちぜん鉄道7分
三国駅
 ↓徒歩5分
三国湊きたまえ通り
 ↓徒歩5分
三国駅
 ↓えちぜん鉄道2分
三国港駅
 ↓徒歩5分
三国港突堤
 ↓徒歩5分
三国港駅前
 ↓バス52分
芦原温泉駅

 

立ち寄りたい資料館

  

マチノクラ

三国湊きたまえ通りにあるミニ資料館。日本海屈指の交易港だった三國湊の歴史をビデオで見られる。古地図や広重が描いた三国の浮世絵なども展示。三国に集ったという三好達治ら文人たちと作品も紹介している。

■10時~16時/150円(旧岸名家共通200円)/祝日を除く水曜休/えちぜん
鉄道三国駅から徒歩5分/北陸道金津ICから15キロ/TEL0776-82-8392(三國會所)

 

立ち寄りたい食事処

  

御食事処 はまさか

三国港市場近くの鮮魚店直営なので、越前ガニはもちろん、地元の新鮮な魚介類を堪能できる。「甘海老丼」2500円(写真)、刺し身や焼き魚のセットなどメニューは多彩。「極味膳日本海甘海老づくし」4000円も人気。

■11時~13時30分、17時~20時(変動あり)/えちぜん鉄道三国港駅から徒歩5分/北陸道金津ICから16キロ/TEL0776-82-8883



三国湊町家館

営業:9時~17時/水曜休、年末年始休/無料
住所:坂井市三国町北本町4-6-55
交通:えちぜん鉄道三国駅から徒歩5分/北陸道金津ICから15キロ
問い合わせ:TEL0776-82-8392(三國會所)

三國湊座

営業:10時~17時/水曜(祝日の場合は翌日)休
交通:えちぜん鉄道三国駅から徒歩5分/北陸道金津ICから15キロ
問い合わせ:TEL0776-81-3921

※あわら温泉の観光についてはTEL:0776-77-1877(あわら湯のまち駅観光案内所

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年4月号)
(Web掲載:2024年5月8日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています