冬の風物詩、スイス・チューリヒのクリスマスマーケットを訪ねる(1)
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チューリヒ中央駅のメインコンコースで開催されるクリスマスマーケット
クリスマスマーケットといえば、ドイツをイメージする人が多いと思うが、スイスのクリスマスマーケットも人気がある。屋内のマーケットとしてはヨーロッパで最大規模、そして広大な駅構内が会場とあって、寒さを気にせず買い物や食べ歩きを楽しめる。そんな魅力的なクリスマスマーケットを求めて、スイスのチューリヒを訪ねた。
天候に左右されず楽しめる駅直結屋内マーケット
11月下旬からクリスマス前後の4~5週間、ヨーロッパの各都市ではクリスマスマーケットが開かれ、飾り用のオーナメントやキャンドル、工芸品、お菓子やホットワインなどを求め、多くの人でにぎわう。アドヴェントと呼ばれるこの期間は、一年で一番ロマンチックなシーズンだが、同時に厳冬期でもある。寒さに震えながら広場に並ぶ屋台をのぞいたり、幻想的な風景を楽しむのはちょっとつらいかも。そう思っている方におすすめなのが、スイス・チューリヒ中央駅のメインコンコースで開催されるクリスマスマーケットである。屋内マーケットではヨーロッパ最大規模を誇り、天候に左右されず気軽に楽しめるのが最大の魅力だ。
日本からの直行便があるスイスの玄関口・チューリヒ空港。空港から中央駅までは鉄道で10分ほどとという近さなので、飛行機の乗り継ぎで少し時間がある、チューリヒから鉄道を利用するという場合も、クリスマス気分を楽しめるのが嬉しい。
駅を降りるとすぐにホットワインとシナモンの香りが漂い、高さ10メートル、リンツ社のチョコレート「リンドール」が500個以上彩られたクリスマスツリーに目を奪われる。ツリーの周りには120軒ほどの屋台が取り囲み、子どもたちの弾む声が響き、ホットワインを手に談笑する大人たちも。ホットワインは日本では赤ワインが主流だが、飲みやすい白もあり、冷えた体をよく温めてくれる。屋台には焼き菓子やチョコレート、木製のおもちゃやハンドメイドの雑貨などもあり、ちょっとしたお土産選びにも事欠かない。
駅から一歩外に出ると、街全体を彩るようなイルミネーションが! メインストリートであるバーンホフ通りには上から吊るされたコードに無数のLEDランプが点り、まるで天から降り注ぐ光の雨のよう。このイルミネーションはビートルズの楽曲「Lucy in the Sky with Diamonds」から、「ルーシー」と名付けられ、チューリヒ市民に親しまれている。
バーンホフ通りは路面電車が行き交っているが、この時期だけ登場するのが赤いサンタトラム。運転手はサンタクロース、そして天使たちの姿も。じつはこのトラムは子どもたちだけが乗車できるものだが、トラムを目にすることができただけでもラッキーな気分になる。
路面電車に乗って、オペラハウス前で開催されているクリスマスマーケットへ向かう。ライトアップされた美しいオペラハウスの前にはスケートリンクが設置され、さながらクリスマス村のような雰囲気。会場の周りに目を向けると、チューリヒの観光名所である双子の塔・グロスミュンスター(大聖堂)や、マルク・シャガールのステンドグラスで知られるフラウミュンスター(聖母聖堂)などがライトアップされ、夜は一層華やいだ雰囲気になる。
チューリヒはスイス最大の都市で、世界の巨大な金融センターのひとつだが、中世の面影を残す旧市街など、見どころ豊富。石畳の道をそぞろ歩き、歩き疲れたらカフェでホットチョコレートを。クリスマス気分をさらに盛り上げてくれるはずだ。
クリスマスマーケットの会場の一角には、子どもたちが手製のキャンドルを作ることができるブースがあり、クリスマスを迎える準備を熱心に行っていた。チューリヒのキャンドル作りはミツバチの巣から採れる蜜ろうしか使わない。溶かした蜜ろうのなかに芯の紐を入れて、引き上げて乾かす。この作業を繰り返すことで、キャンドルの形ができてくる。手作りのキャンドルは自宅で聖夜に灯されるほか、プレゼントとして最適という。何日も何時間も手間暇と愛情をかけて作るキャンドル、チューリヒの人々にとってクリスマスは特別で大切なものであることがよくわかる。
2024年のクリスマスマーケットは11月21日~12月24日の開催(一部23日までのマーケットあり)。後編ではチューリヒにしかない珍しいクリスマスツリーなどを紹介する。
取材協力:スイス政府観光局、チューリヒ観光局、ユングフラウ鉄道グループ
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)
冬の風物詩、スイス・チューリヒのクリスマスマーケットを訪ねる(2)へ続く(10/12公開)
(Web公開:2024年10月11日)