【私の初めてのひとり旅】宇賀 なつみさん ロサンゼルス、シドニー(2)
うが· なつみ[フリーアナウンサー]
1986年東京都生まれ。大学卒業後、テレビ朝日入社。「報道ステーション」の気象キャスターやスポーツキャスターを経て、情報· バラエティー番組を幅広く担当。2019年に同局を退社してフリーランスとなり、現在はテレビ、ラジオなどで活躍中。雑誌やネットメディアにコラムを連載し、23年には初エッセー『じゆうがたび』(幻冬舎)を出版。
2度目のひとり旅はシドニーへ 崖の上で感極まって涙が……
【私の初めてのひとり旅】宇賀 なつみさん ロサンゼルス、シドニー(1)から続く
その楽しい経験が忘れられず、大学4年生の11月にはオーストラリアのシドニーへひとり旅をしました。格安航空券を買って、1泊2000円の安宿に泊まる1週間の貧乏旅行でした。
シドニーの海岸を歩いていた時、崖の上につながる遊歩道を見つけ、上っていきました。陽光を浴びた海がまばゆいばかりに輝き、遠くに高層ビルが林立するシティーが見えました。春からはテレビ局でアナウンサーとして働く。夢が叶ってうれしい反面、メディアの世界でやっていけるのか、心配もありました。
崖の上にひとり佇(たたず)んで壮麗な景色を眺めていると、不安の塊が少しずつ剥(は)がれていく感覚がありました。初めてのひとり旅の時も、「エイッ」と飛び込んでしまえばなんとかなった。心配ない、絶対に大丈夫だって思えてきました。
そんな思いに浸っていると、いつの間にか涙があふれ……。その時、警備の男性が駆け寄って来ました。早口の英語でよく聞き取れなかったけれど、「Are you OK?(アー ユー オーケイ)」ってしきりに私を気遣っている様子。「OK,OK」を繰り返すと、彼は私の両手を握り、「Life is beautiful!!(ライフ イズ ビューティフル)」って言ったんです。
後で分かりましたが、彼は私が崖から飛び降りるのではないかと心配したようです。でも、その言葉にハッとさせられました。その光景が鮮烈に記憶に刻まれ、それ以来、シンプルな言葉だけれど、「ライフ・イズ・ビューティフル」が一番好きな言葉になりました。どんな状況でも自分の心持ち次第で、「人生は美しい」って信じられるんですね。
現在はフリーランスで活動していますが、事務所には属さず、マネジャーも置かず、自分で仕事を決めています。その後も色々な所を旅してきたので、スケジュール管理は慣れているし、自由な時間も作りやすい。なるべく毎月下旬の1週間をオフにして旅に出られるようにしています。いつかもっと長い休みが取れたら、次は南米へ行ってみたいですね。今はそれを楽しみに頑張っています。
話・写真/宇賀なつみ
聞き手/山脇幸二
(出典:「旅行読売」2024年9月号)
(Web掲載:2024年11月13日)