【私の初めてのひとり旅】ナオト・インティライミさん タイ、ケニア、ブラジル(1)
ナオト・インティライミ[シンガーソングライター]
三重県生まれ、千葉県育ち。「インティ・ライミ」は南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味。2010年にメジャーデビュー。19年には世界三大レーベルの一つである「ユニバーサルミュージック ラテン」から「Naoto」名義で世界デビュー。これまでに計82か国を旅し、世界一周旅行記をまとめた『世界よ踊れ』(幻冬舎)など著書多数。
「世界」を目指し果てしない旅へ 出会った人と歌い、曲創りに生かす
子どもの頃から音楽とサッカーを夢中になってやってきて、旅に出てもいつもその二つが中心にあります。初めてのひとり旅は2000年、大学3年の時で、行き先はタイでした。
その1年前に、サッカー仲間と3人でアメリカへ行ったのですが、ニューヨークの「アポロ・シアター」にライブを見に行った時、自分も歌いたいと申し出て、飛び入りで歌わせてもらったんです。「自分も世界を目指そう」と心に決めたのは、その時が初めてでした。
それで、次はバックパッカーとしてひとり旅に出ようと思ったんです。調べてみると、入門者にはタイがよさそうだということが分かりました。バンコクから列車で北部のチェンマイへ移動し、少数民族の村を訪ねました。そこから南へ行ってプーケットを拠点に、ピピ島という小さな島に渡って。レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」の舞台になった島で、海がきれいでしたね。
タイには1か月くらい滞在しましたが、何も決めずに旅をする解放感と冒険心に目覚めました。宿は当日になって飛び込みで確保し、来た列車やバスに乗り、会った人と仲良くなって。町の人とも旅している人ともすぐに友だちのようになりました。
誰かと一緒だとその人としか話さないので、あまり出会いがないですよね。確かにひとりは寂しいですけど、だからこそ人との出会いを求める。自分と対峙(たいじ)する時間も多くとれます。都会の喧騒(けんそう)の中ではなかなかできないことです。
タイから帰って、次はどこへと考えた時に、よし、アフリカだとなって、2年後にケニアへ。その半年後にはブラジルに行きました。ケニアでは現地のミュージシャンと仲良くなって、クラブへ連れて行ってもらい、また飛び入りで歌いました。ブラジルでは現地の1万人規模の音楽フェスで歌わせてもらいました。
自分の場合はただ旅をするだけではなく、ミュージシャンとして、現地の音楽や楽器のことを学んだり、感じたりしています。チャンスがあればどんどん人前で歌って自分をアピールしようという姿勢も、20歳の時のニューヨーク旅行から今も変わっていません。
話・写真/ナオト・インティライミ
聞き手/山脇幸二
【私の初めてのひとり旅】ナオト・インティライミさん(2)タイ、インド、イスラエルへ続く(8/19公開)
(出典:「旅行読売」2024年8月号)
(Web掲載:2024年8月18日)