【私の初めてのひとり旅】ナオト・インティライミさん(2) タイ、インド、イスラエル
世界一周の旅で訪れたモロッコ・マラケシュの広場で。ギターを手に、多くの人々と歌った
ナオト・インティライミ[シンガーソングライター]
三重県生まれ、千葉県育ち。「インティ・ライミ」は南米インカの言葉で「太陽の祭り」の意味。2010年にメジャーデビュー。19年には世界三大レーベルの一つである「ユニバーサルミュージック ラテン」から「Naoto」名義で世界デビュー。これまでに計82か国を旅し、世界一周旅行記をまとめた『世界よ踊れ』(幻冬舎)など著書多数。
アフリカ、南米で礎を築き、いよいよ世界一周の旅へ
【私の初めてのひとり旅】ナオト・インティライミさん(1)タイ、ケニア、ブラジルから続く
人との出会いもとても大切です。旅をしていると必ず何かが起こるんです。現地では常に動いているし、人と絡んでいますから。スカウトマンのように嗅覚も働きます。基本的には好奇心を持って色々な所へ行き、色々なものを見て、色々な人と会うのですが、難しいのは危険と紙一重ということ。仲良くなって誘いに乗ってついていくと騙(だま)されたり、命を狙われたりすることもあります。まずは、生きてこそ、です。命にはかかわらないだろうと分かればついていきますが、怪しいなと感じたらすぐに見切りをつけて帰ります。
最初にひとりで行ったタイからアフリカ、南米と旅を重ねて礎を築き、03年8月にいよいよ世界一周の旅に出ました。自分の中では近い将来、ワールドツアーを行うための下見という位置づけでした。まずは香港、タイを経てインドへ。シタールという弦楽器に魅せられ、老師のもとへ通って腕を磨きました。
中東では、イスラエルとパレスチナの歴史について話を聞き、関心を抱くようになりました。パレスチナ自治区のラマラにあったパレスチナ解放機構の議長府を訪れ、運よくそこで開かれていた平和イベントに参加できることになったんです。その席で、勇気を持ってアラファト議長の目の前に歩み出て、「上を向いて歩こう」を歌いました。非常に緊張しましたが、平和の大切さを伝えたいという一心でした。
この時の世界一周の旅は、さらにアフリカ、欧州、南米、北米と続き、28か国を回りました。イスラエルで買ったギターを片手に、行く先々で出会った人たちと歌い、その時の思いや経験を曲にしました。ワールドツアーはまだ実現できていませんが、世界への挑戦はこれからも続けていきたいと思います。
話・写真/ナオト・インティライミ
聞き手/山脇幸二
(出典:「旅行読売」2024年8月号)
(Web掲載:2024年8月19日)