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【私の初めてのひとり旅】室井滋さん ロンドン、モンゴルなどアジア8か国(1)

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【私の初めてのひとり旅】室井滋さん ロンドン、モンゴルなどアジア8か国(1)

むろい・しげる[俳優]

富山県生まれ。映画「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」などで多くの映画賞を受賞。絵本『キューちゃんの日記』(北日本新聞社)、『チビのおねがい』(教育画劇)、エッセー『ヤットコスットコ女旅』(小学館)ほか著書多数。しげちゃん一座絵本ライブを各地で開催中。富山や山形などのローカルラジオ番組にレギュラー出演。2023年4 月、富山県立高志(こし)の国文学館の館長に就任した。

 

過酷だけど楽しかったアジアの旅 歌姫目指しヒッチハイクでテープ売る

34、35年前、日英共同制作のドラマに出演しました。老(ふ)け役もあったので特殊メークやかつらを作るために、主役の方と私だけイギリスに連れて行かれたんです。現地に行ったら、でき上がるまでいてくれと言われて。仕事が忙しかったら一旦(たん)帰してもらえたんでしょうけど、当時は駆け出しの新人女優だったので、2週間ほどひとりぼっちでロンドンにいました。

今だったらお芝居を見たりしますが、その頃は余分なお金がないので、日々うろうろしていました。2階建てバスに乗ったり、大英博物館へ行ったり。結局、作ったものをつけてみたら、だめだと言われて。イメージに合わなかったんでしょうね。この期間、私は何をしていたんだろうって。今でも、2階建てバスに乗っている夢を見たりするんですよ。

それからだいぶたって日本テレビのバラエティー番組「雷波(らいは)少年」の「アジアの歌姫」という企画で、タイ、ネパール、モンゴル、ボルネオ、アラブ首長国連邦、中国、インド、ウズベキスタンの8か国を回りました。目隠しをしてダーツを投げて行き先を決め、移動の間も目隠しをしたままです。私の歌を吹き込んだカセットテープを売って宿代や食費を稼ぎながらヒッチハイクで旅をするのを、男性スタッフ2人が撮影するんですが、ある種のひとり旅ですよね。

事務所の社長に「何が起こっても大丈夫だから」と言われて行ったんですが、全然大丈夫じゃない。ヒッチハイクは自分でやるし、テープが売れなければ野宿です。番組としては私が失敗することが面白いし、うまくいってほしくないから誰も助けてくれない。全部自力で何とかしなきゃいけない。

ロンドンを再訪し、大英博物館の前で

今まで旅はたくさんしましたが、あれほど過酷だったのに、なぜかその時が一番楽しかったんですよね。旅行って、嫌な思いはしたくないから、いい旅館に泊まっておいしいものを食べたいって思いますよね。でもそれだとどこに行っても変わらないと思うんです。限られた人としか出会わないから、現地のこともあまりよく分からないまま帰ってきちゃうみたいな感じですよね。

あの時は知らない人の家に泊めてもらったり、助けてもらったり、私もその人たちの手伝いをしたり。人々の生活の中に入り込んでいったんです。それが後になって振り返ると、すごく良い思い出になっています。

話・写真/室井滋
聞き手/山脇幸二

【私の初めてのひとり旅】室井滋さん ロンドン、モンゴルなどアジア8か国(2)へ続く(6/22公開)


(出典:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年6月21日)


Writer

山脇幸二 さん

2022年6月に編集部に着任し、8月から編集長。読売新聞の記者時代は27年にわたって運動部でスポーツ取材に明け暮れた。一時は月の半分近くが出張という生活で、旅行しながら仕事しているような状態だった。今やその旅行が仕事になろうとは…。趣味はロック鑑賞で、ライブやフェスに通うことで身も心も若さを保とうと悪あがきする。矢沢永吉さんを尊敬し、ともに歳を重ねていける幸せをかみしめる日々。

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