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【紅葉の秘湯】源流の宿に思う人の温もり 山形・大平温泉 滝見屋(1)

場所
> 米沢市
【紅葉の秘湯】源流の宿に思う人の温もり 山形・大平温泉 滝見屋(1)

大平温泉の開湯は古く、860年、行者により発見されたと伝わる。歩いてしか行けない山深き源流の宿だ 写真/大平温泉 滝見屋

 

何世代にもわたって愛され、繋がれてきた温泉

山形県米沢市に点在する米沢八湯の一つに数えられる大平温泉 滝見屋は、雪解けの春から落葉する秋までの期間限定で営業する宿だ。日常から離れ、自然を五感で感じたい。そんな願いを叶(かな)えようと旅に出た。

米沢の市街地から車で45分ほど走る。途中からつづら折りの山道になるので運転は慎重に。道中、紅葉の時期には標高が高い所から色付き、自然がつくり出す絶妙なグラデーションが楽しめる。

車で行けるのは標高1200メートル地点にある駐車場まで。そこから標高1050メートルの宿まで20分ほど歩いて下る。木々の間を歩くのは気持ちが良いけれど、思いのほか勾配があって日頃の運動不足を実感する。川の音が徐々に大きくなり、眼下に赤い屋根が見えてくるとあと少し。吊(つ)り橋を渡るといよいよ到着だ。

最上川に架かる吊り橋はモミジのトンネル。この橋を渡れば宿はもうすぐ 写真/大平温泉 滝見屋

滝見屋は最上(もがみ)川の始まりとされる「火焔(かえん)の滝」が見える源流の宿。男女別の内湯のほか、川沿いに男女別の露天風呂や二つの貸切風呂がある。チェックインを済ませたら早速、露天風呂へ。川べりの地形を生かした野趣あふれる風呂につかると、歩き疲れた体がちょうど良い温度の無色透明の湯で柔らかく包まれ、思わずフワーッとため息が出る。

深い山の中、豪快に流れる川の音を聞きながら湯に浸っていると、大地とつながっているように感じる。湯上がりには肌がしっとりすべすべ。昔から胃腸の湯としても知られているそうだ。

最上川沿いに4か所の露天風呂が設けられている。若女将、安部里美さんの祖父・忠男さんが手がけた
居心地の良いロビー。標高1000メートルを超えるので、服装は1枚多めに
昭和10年代の滝見屋。周辺の木を切り出して建てた3階建ての豪壮な建物だった。現在の建物は、1938年に火災で焼失して以降、戦前に建てられた部分と、平成に建てられた部分がある

温泉は全ての湯船で源泉かけ流し。自然の恵みによるだけに、温度など温泉を管理するには苦労が多いという。さらに自然は時に猛威を振るう。2024年7月にも最上川流域で洪水が起こったことは記憶に新しい。

「今夏の豪雨の被害は免れましたが、一昨年、雪害や2度にわたる豪雨に見舞われ、建物が傾き、露天風呂に土砂が流れ込むなど大きな被害を受けました」と創業115年を迎える宿の5代目若女将の安部里美さん。「重機が入れないので、復旧には常連さんや地域の方々、行政など多くの力に助けられました。土砂をかき出し復旧工事を行って、ようやく営業再開にこぎつけたんです」

文/堀内志保 写真/堀内 孝ほか

【紅葉の秘湯】源流の宿に思う人の温ぬくもり 山形・大平温泉 滝見屋(2)へ続く(11/25公開)

若女将の安部里美さん。食堂など館内には、アーティストのお客さんが寄贈した絵なども飾られている

👜お土産買うなら「道の駅米沢」

米沢土産を買うならここ。特産品が約3000種そろう。おすすめは、米沢への移住者が手がける「米沢ジャックスブルワリー」のビールと「山形ちば吉」の自然栽培のそば。

■ショップ9時〜18時、フードコート10時〜17時30分(土・日曜、祝日は〜18時)/無休/東北中央道米沢中央ICからすぐ/TEL:0238-40-8400/公式サイトはこちら

(左)県産オリジナル品種 「でわかおり」を使用した十割乾麺そば(1080円)(下)クラフトビール(880 円〜)には限定品もある

大平温泉 滝見屋

🍁紅葉の見頃:10月上旬~11月初旬  
TEL:0238-38-3360
住所:米沢市李山12127
営業:4月下旬〜11月初旬 ※2024年の営業は終了しています
客室:全14室
温泉:カルシウム―硫酸塩泉/含硫黄―カルシウム―硫酸塩泉

■1泊2食料金(1人分)
2人1室利用 平日1万5330円~・休前日1万6430円~
1人1室利用 平日1万6430円~・休前日1万7530円~(営業期間内可)
日帰り入浴:10時30分~15時/不定休/1000円

交通:山形新幹線米沢駅から宿の駐車場まで送迎45分(宿泊者のみ。要予約)/東北中央道米沢八幡原ICから宿の駐車場まで20キロ(ICから7キロの案内所14時10分集合で送迎あり。要予約)。宿の駐車場から徒歩20分

※料金などは掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年10月号)
(Web掲載:2024年11月24日)

送迎車が立ち寄る案内所。山道の運転が心配なら車を止めて送迎車を利用しよう

Writer

堀内志保 さん

埼玉県生まれ。1999年から2年あまり社会人類学の調査でアフリカ大陸の沖に浮かぶマダガスカル島に滞在。『マダガスカルを知るための62章』(明石書店)では、市場と割礼祭の章を担当した。2003年から宮城県に住み、写真家の夫とともに東北各地の自然や歴史、食、温泉、手仕事などに触れ、新聞や雑誌に記事やエッセイを発表している。

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