歴史と芸術に彩られるポーランド(5)最終回
標高1126メートルのクバウフカウ山頂。ロープウェーを降りると、目の前に絶景が広がっていた
ザコパネ ポーランドきっての山岳リゾート
ザコパネの山の中でのこと、ロープウェーを降りて稜線に沿って設けられたトレッキングルートを歩いていた時、同行したガイドから声をかけられた。
「あなた、今、スロバキアに入りましたよ!」と。
しかも、「これが国境の印よ」とばかりに指差された石柱は、50センチあるかないかのサイズ。周りに柵があるわけでもないのに、「左はポーランド、右がスロバキア」だというのだから、目を丸くするほかなかった。
つまり、この稜線そのものが国境で、目印として、小さな石柱が所々に置かれただけというわけである。国境といえども行き来は自由で、何とも不思議だ。いつの日か世界中の国々の国境もこうなれば良いのにと願うのは、筆者だけではないだろう。
ザコパネの街は、クラフクから南に約85キロ。ここからロープウェーを乗り継げば、標高1126メートルのクバウフカウ山頂まで約20分でたどり着く。そこはポーランドきっての避暑地で、冬はスキーなどのウィンター・スポーツを楽しめるという絶好のリゾート地だ。
ノルディックスキーの世界選手権やユニバーシアードなどの国際大会が開催されるほどだから、施設の充実度も十分だ。
ロープウェーを降りたら、すぐ目の前に標高2000メートル級の山々が連なるタトリ山脈の大絶景が広がっている。この山脈の8割がスロバキア側に位置しているというのも興味深い。
ここで多くのトレッキング客が目指すのが、視界の遥か先に見える岩場である。のんびり歩いても、往復2時間とはかからないが、ゴツゴツした岩の上を歩くため、履き慣れた靴が必要だ。
標高が高い分だけ気温も低いので、上着もしっかり用意しておきたい。ただし、同行のツアー客たちが「子ども連れのファミリー層も多いわね」と言うように、家族連れも少なくないところからすれば、本格的な山登りの装備までは不要なのかもしれない。
山岳トレッキングを存分に楽しんだ後は、ザコパネの街へと繰り出して、郷土料理を味わい、地元の特産品などの土産物を手に入れたい。
観光客にとってのメーンストリートは民族色溢れるクルプフキ通りで、周囲にはヴィラ・コリバと呼ばれるザコパネスタイルの建物が点在。民族色豊かな街並みでの食事やショッピングは、リゾート気分満点だ。
ここで是非とも味わっておきたいのが、オスチペクと呼ばれる羊のチーズである。スモークされたもので、「もちもちっとしてしっかりとした歯ごたえね」と同席した客がいうように、まるでお餅のような食感。さらにしっかり焼けば、お肉かと見紛うほど。そこかしこのお店で手に入るほか、レストランなどでは、これにベーコンをのせて焼いた料理も味わえる。
また、フエルト製の手袋やシューズ、帽子なども土産物として最適。値段も手頃なので、いくつか手に入れて帰路につきたいものである。
文・写真/藤井勝彦
<旅のインフォメーション>
■交通/ワルシャワへは成田などから直行便のほかヘルシンキなどを経由して行くこともできる。ワルシャワからザコパネまでバスで約3時間
■時差/日本より8時間(夏季は7時間)遅れ
■ビザ/観光目的の場合、90日以内の滞在であればビザは不要。ただし、入国時にパスポートの残存有効期限が3か月以上残っていることが必要
■通貨/ズウォティ(zt)1ズウォティ=37円(2024年11月27日現在)
■気候/ザコパネの年間平均気温は夏季約15.6度、冬季約—3.3度
■問い合わせ/ポーランド政府観光局info.jp@poland.travel
公式ホームページはhttps://www.poland.travel/ja
※記載内容は掲載時のデータです。
(Web掲載:2024年12月4日)