【5000円で日帰り満足旅】古都の日常と、ほんまもんを味わう心和む、京のあんこ巡り

歴史を刻む京菓子司「亀末廣」の店内。京都の四季を四畳半の形に仕切った箱に詰めた「京のよすが」などの銘菓が並ぶ
もなかに粟餅・・・名店のあんこ巡り
和菓子といえばあんこが命。京菓子の伝統に育まれてきた餡(あん)は、老舗の銘菓だけでなく、甘味処や知る人ぞ知る製餡所の品まで多彩に味わえる。5000円でいろいろ食べたいなと京のあんこ巡りに出かけた。
まず目指すのは、烏丸御池(からすまおいけ)駅近くの風格あるたたずまいが目を引く亀末廣(かめすえひろ)。緊張しつつ暖簾(のれん)をくぐると、店主・吉田かな女(め)さんの笑顔で一気に和んだ。目当ての「大納言」は、丹波大納言小豆の新豆が出回る12月から春先までの限定品。小豆にも旬があり、時期ごとに風味が違うそうだ。取材当日は手に入らなかったが、あんこを堪能してもらうなら、と最中「萬代(まんだい)」を勧めてもらう。餡は注文を受けてから詰める。皮はサクッと、大ぶりな小豆の粒あんはふくよかで上品な味わいだ。



亀末廣を後に徒歩10分、〝京の台所〟として親しまれる四条の錦(にしき)市場へ。400年以上続く市場は、京野菜や川魚、漬物、乾物などを扱う約130店が軒を連ねる。市場の中にある京風の鍋焼きうどんで有名な「冨美家(ふみや)錦店」で昼ご飯。天然の利尻昆布とブレンド削り節の出汁(だし)にフワフワの麺が絡みやさしい味。行列ができるのもうなずける。

続いて地下鉄と路面電車の嵐電(らんでん)に揺られ北野天満宮へ向かう。参拝後、大鳥居の前に店を構える「粟餅所澤屋」へ。「おいでやす」の明るい声とともに、奥からトントンと、粟餅をつく音が聞こえてくる。注文ごとに作るこしあんときな粉の粟餅の盛り合わせは、見た目も美しく、その味に期待が膨らむ。
「できたてを出すのは粟餅が少しでも軟らかいうちに食べてもらいたいから」と当主の森藤哲良(てつろう)さん。こしあんは繊細で口どけが良く、プチプチとした食感の粟餅と絶妙にマッチする。粒あん派だったが、ここへ来てこしあんにも目覚めてしまった。


締めくくりはお土産に製餡所の最中を。大将軍商店街にある中村製餡所は、レトロな「あん」の看板が目印。創業は1908年、現店主の中村吉晴さんで4代目になる。元々業務用の餡を製造していたが、ご近所さんから「少し分けてほしい」という声が上がり、自分好みに作るセルフ最中セットの工場直販を始めた。
餡は丹波大納言小豆をセレクト。パリッと香ばしい皮と大ぶりの小豆の粒の食感がクセになりそうだ。京あんこはシンプルでいて実に奥が深い。

旅の予算総額

文/仲底まゆみ 写真/宮川 透
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2024年12月号)
(Web掲載:2025年3月1日)