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開化期日本の胎動を知る(2)―「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録10周年―

場所
> 佐賀市、長崎市、宇城市、大牟田市、北九州市他
開化期日本の胎動を知る(2)―「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録10周年―

三重津海軍所跡(佐賀市提供)


わずか半世紀余りで日本は工業立国の土台を築いた。近代の重工業化を今に伝える各地の足跡が、世界文化遺産に登録されて今年で10年を迎える。「明治日本の産業革命遺産」の歴史と魅力を訪ねる。



石炭が推し進めた工業の近代化

開化期日本の胎動を知る(1)―「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録10周年―から続く

さらに、船、蒸気機関、鉄道の敷設などにより鉄鋼の需要が高まり、1901年、北九州の八幡に官営八幡製鐵所が操業を開始。相次ぐ困難に見舞われたが、1904年、試行錯誤の末ようやく安定操業に漕ぎつけることができた。遠賀(おんが)川流域の筑豊炭田の石炭を原料とし、鉄鋼は1910年に国内生産の9割を占めるまでに発展した。

三重津海軍所跡<佐賀>

7_三重津海軍所跡  佐賀市教育委員会確認.jpg
佐賀市提供

佐賀藩主・鍋島直正は多くの藩士を長崎海軍伝習所に派遣し、洋式船の操縦技術を習得させたが、同所が閉鎖すると藩内に三重津海軍所を新設。洋式蒸気船の修理を行い、藩士たちに実践的な教育指導を施した。佐賀市諸富町、川副町

官営八幡製鐵所旧本事務所<八幡>

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写真提供:日本製鉄(株)九州製鉄所

操業に先立ち1899年に建設された赤煉瓦造り2階建ての初代本事務所で、様々な戦略が練られた。製鐵所は1901年に操業。途中、トラブルに見舞われたが改善後は順調に生産をのばした。非公開だが外観を見学できる。福岡県北九州市八幡東区東田5

工業に不可欠なエネルギーが石炭だ。長崎の沖合にある高島炭鉱は、日本で初めて石炭産業に蒸気機関を導入した。高島炭鉱の南西にあり、「軍艦島」と呼ばれる端島(はしま)炭鉱は世界有数の海底炭鉱となり、官営八幡製鐵所にも石炭を供給した。

端島炭鉱<長崎>

8_端島炭坑 産業遺産国民会議所有.jpg

長崎半島の西方に浮かぶ。海底炭田から良質の石炭がとれ、三菱が島を購入し、開発を進める。島内に病院や学校も建設され、1974年の閉山。最盛期には約5300人が生活していた。長崎市高島町端島

三池炭鉱は明治維新後に官営化され、のちに三井に払い下げられる。高島炭鉱に次いで最新の採炭設備を導入した、国内最大規模の立坑である。現在、万田(まんだ)坑(荒尾市)と宮原(みやのはら)坑(大牟田市) の見学ができる。

万田坑<三池>

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写真提供:荒尾市

宮原坑と並ぶ三池炭鉱の主力坑。明治政府から払い下げを受けた三井は、自社工場で大規模な鉱山機械の開発・製作に取り組み、坑内の地下水問題の解消を図った。熊本県荒尾市原万田200-2

紆余(うよ)曲折を経て、平たんではなかった、明治日本の産業革命。しかし、当時の人々のたゆまぬ努力が結実し、急速に重工業が発展していった。

今も稼働している遠賀川水源地ポンプ室や、潮の干満に関係なく船が出入りできる現役の三池港。また、韮山反射炉や国の特別輸出港として栄えた熊本県の三角(みすみ)西港などは、ほぼ当時の姿を留める。

遠賀川水源地ポンプ室<八幡>

12_遠賀川水源地ポンプ室 産業遺産国民会議所有.jpg

官営八幡製鐵所から約11キロ離れた遠賀川の東岸にパイプラインで送水するポンプ室(非公開)を1910年に設置。現在も製鐵所に必要な工業用水の約6割を供給している。福岡県中間市土手ノ内1-3-1

三池港<三池>

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安部 順

石炭物流の効率化のため、工学者・團琢磨が有明海に大型船が接岸できるハチドリ形の港を築く。遠浅の干潟での築港は困難を極めたが、1908 年に完成。石炭の輸出港として大きな役割を担った。福岡県大牟田市新港町

三角西港<三池>

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写真提供:宇城市教育委員会

明治政府の三大築港事業の一つ。オランダ人水理工師が設計し、天草の石工たちにより施工され、1887年に開港。水路や排水システムを配し、ゆとりのある区画や道路幅が特徴。熊本県宇城市三角町三角浦

明治日本の産業革命遺産の各構成資産は、「形状・意匠」や「材料・材質」などがわかる〝真実性〟や〝完全性〟を有している。真実性と完全性は、良好な状態で保存されていることから考古学的資産などにも当てはまる。世界遺産登録10年を機に、実際にその素晴らしさを見学したい。

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■世界遺産登録10周年記念ホームページ

2025年7月に世界遺産登録10年を迎える8エリア、23の構成資産を動画などでわかりやすく紹介。〝SNS映え〟するような資産の写真の撮り方も丁寧にガイドしているのが特徴。
※詳細はホームページから

産業遺産情報センター

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「明治日本の産業革命遺産」について、パネルや映像で詳しく紹介している。導入展示で、遺産の概要や世界遺産登録までの道のりを解説。メイン展示では、わずか半世紀で産業国家へと成長していったプロセスを案
内するとともに23の構成遺産の価値や歴史全体を紹介。資料室では史料や写真、証言などを見聞することができる。来館は要事前予約。
東京都新宿区若松町19-1(総務省第二庁舎別館)/10時~16時30分/原則土・日曜、祝日、年末年始休/無料/🆓0120-973-310
※公式サイトはこちら


協力:産業遺産国民会議

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2025年5月号)
(Web掲載:2025年4月3日)


Writer

旅行読売出版社 メディアプロモーション部 さん

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