【私の初めてのひとり旅】篠井英介さん ニューオリンズ、ニューヨーク(2)

劇団「花組芝居」の前身劇団の企画公演「新・桜姫 改訂版」に出演した篠井さん(1985年、東京・下北沢のザ・スズナリで)
ささい・えいすけ[俳優]
1958年、石川県生まれ。84年、男優だけのネオかぶき劇団「花組芝居」に参加。看板女方として人気を博す。退団後は、変幻自在の演技派俳優として活躍。92 年、第29 回ゴールデンアロー賞演劇新人賞受賞。2014 年、石川県観光大使に任命される。23年、第58回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。日本舞踊の宗家藤間流師範名取・藤間勘智英( ふじまかんちえい) の名を持つ。24年12月4日〜22日、東京・明治座にて舞台「応天の門」に出演。
ブロードウェーでの舞台に圧倒「ラ・カージュ・オ・フォール」
【私の初めてのひとり旅】篠井英介さん ニューオリンズ、ニューヨーク(1)から続く
その後はニューヨークに2週間以上滞在して観劇三昧です。友達の友達がニューヨークに住んでいて、彼のアパートメントでお世話になりました。アルバイトで貯(た)めたお金と、足りない分は会社員だった弟に借りていましたが、ほとんどのお金はお芝居を観るために費やすつもりでした。もちろん、すべてが正規料金ではなく、タイムズスクエアにあるディスカウントのチケット売り場に毎日並びました。満席にならないような作品を最大半額で売っているから、「昨日はあれを観たから今日はこれを観よう」と、滞在中、10本以上の作品を観たと思います。
「ラ・カージュ・オ・フォール」はフランスで上演された舞台で、「Mr.レディMr.マダム」のタイトルで映画化もされました。ブロードウェーミュージカルとしては83年が初演で、翌年にはトニー賞を受賞しました。ストーリーも音楽も華やかで楽しく、それまでになかったミュージカルで、圧倒されました。その記憶が強烈なので、それ以外は何を観たのか、はっきり覚えていません。
ブロードウェーには歴史のある劇場が立ち並んでいる(写真/ピクスタ)
昼間はマンハッタン島を歩き回りました。当時は治安が良くなかったので、渡米する前にみんなから「地下鉄には乗るな」と言われており、その頃は世界一高かったエンパイア・ステート・ビルやワールド・トレード・センターへも歩いて行きました。自由の女神像も見ました。定番の観光ですね。
今は気分転換や癒やしの時間を過ごしたいので、いわゆるラグジュアリーホテルに泊まります。遠出の旅費を考えると、東京近郊の高級ホテルでおいしいものを食べたり、プールでリラックスしたりするほうがいいと思ってしまいます。
ただ、例えば海外のキャストが同じ舞台を日本で上演したとしても、やはりニューヨークやロンドンへ行って本場の舞台を観たいという思いは今でもあります。劇場や街の雰囲気があり、現地の人たちに交じっての観劇は、そこでしか味わえない高揚感があるからです。それは旅好きな人の気持ちと似ているかもしれませんね。
話/篠井英介 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2025年1月号)
(Web掲載:2025年4月30日)