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旅よみ 俳壇 旅行読売2025年11月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2025年11月号

うっそうと木々が生い茂る中を行く熊野古道(写真/ピクスタ)

【特選】

一条の光熊野の道おしえ
 ◉足立区 太田君江
<評>熊野は何と言っても神の山。そういった場所の「道おしえ」、そして「一条の光」も、神の申し子による導きということでしょう。上五の表現も無駄なく大きく詠う たわれており、手柄であった。

【入賞】

教会に入れば涼しき島の国
 ◉千葉県酒々井町 梅澤波葉
<評>今の欧州、日本は史上まれにみる暑さ。句を読んでいるだけで涼しさを誘ってくれるのがありがたい。教会、島の国も無駄がなかった。

大川に河童(かっぱ)出そうな餓鬼忌(がきき)かな
 ◉大田区 豊島 仁
<評>餓鬼忌は芥川龍之介の忌日である。まさに隅田川の一角に、龍之介を偲し のんでいるところがよく伝わってきた。季題が絶妙。

大谷の為の早起き避暑三日
 ◉杉並区 森 秀子
<評>せっかく避暑に行っているので、ゆっくりすればと思うが、大谷選手の活躍には早起きする日本人魂が伝わって来た。三日も収穫。

釣箱の中は釣果(ちょうか)の鮎数多(あまた)
 ◉つくば市 有阪貴男
<評>やはり鮎が動かない作品。獲れた後の鮎料理の場面まで想像できた一句。美味(おい)しそうな俳句だ。

【入選】

ひとり来て小諸城址(じょうし)や蟬しぐれ
 ◉さいたま市 竹内白熊
海原に桶を浮かべて志摩の海女
 ◉川崎市 柳内恵子
東尋坊絶壁滑り落つ西日
 ◉横浜市 相沢恵美子
雲海の高野(こうや)の町の交差点
 ◉伊予市 福井恒博
密教の寺の竹皮脱ぎにけり
 ◉練馬区 曽根新五郎
利根川や光にをどる夏つばめ
 ◉茨城県利根町 中澤則明
宿下駄(げた)を鳴らし湯の町月の道
 ◉世田谷区 石川 昇
踊子の頸静脈の力瘤(ちからこぶ)
 ◉東京都中央区 豊澤佳弘
菊人形夕日強すぎ色褪(あ)せぬ
 ◉神奈川県中井町 竹 和世
万緑に沈む炭鉱盛衰史
 ◉成田市 小川笙力

【佳作】

石楠花(しゃくなげ)や奥之院へは七百段
 ◉足立区 山崎勝久
津軽富士折れたる木にも袋掛
 仙台市 平山北舟
サーファーを呑んで吐き出し土用波
 埼玉県吉見町 青木雄二
炎天に苦行のごとく旅の人
 南魚沼市 堀口順子
人声の二言三言夏木立(なつこだち)
 ◉
行田市 根岸保
紫陽花(あじさい)の色良き雨の百花園
 江戸川区 岩井千恵子
夏帽子引き寄せ流す梓川
 岐阜県八百津町 細江隆一
田んぼはね白鷺青鷺遊ばせる
 神奈川県中井町 笹尾雅美
夏の果て額に涼し生駒(いこま)風
 豊島区 田多井敏子
木下闇(こしたやみ)大いなる榛名山かな
 ◉長岡市 安木沢修風


俳壇選者_星野先生300X300.jpg
<選者>「玉藻」主宰 星野 高士(ほしの たかし)
神奈川県出身。鎌倉虚子立子記念館館長。句集に『残響』『無尽蔵』『破魔矢』『渾沌』など。テレビ、ラジオでも活躍。

星野先生の総評

全体的に作者が何処で作っているのかを想像出来て、選句も楽しい。やはり俳句は何を見てどう表現するかが肝である。また短い詩なので省略が大事。そして何処を省略するかによって優劣は異なる。であるからこそ常に新しいものが生まれるのである。是非自分に挑戦していただきたい。また多作多捨の試みも忘れてはならないであろう。

星野先生の俳句ワンポイント講座

「海外詠」
自分の俳句を作るのが一番であるが、なかなか個性的なものは簡単ではない。やはり物を見て感じることでリアリティが生まれる。それには吟行が力になる。虚子の句などは、日本はもとより海外にまで及んでいるのだ。私も海外に行って随分作った。その時大事なのは自分の殻を破ることである。皆さんも国内外でみた経験があれば是非作品として挑戦してみたらどうか。少し時間がたっても時間軸を超えたものが出来る。旅よみの臨場感伝えましょう。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2025年11月号)
(Web掲載:2025年9月29日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら


Writer

たびよみ編集部 さん

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