【私の初めてのひとり旅(一人旅)】財前直見さん 東京(2)
オーディションに合格し、グアムへ行ってひたすら日焼けした

ざいぜん・なおみ[女優]
1966年、大分県生まれ。85年、女優デビュー。シリアスな作品からコメディーまで数々の映画やテレビドラマに出演。主な作品にドラマ「お水の花道」、大河ドラマ「おんな城主 直虎」「光る君へ」、映画「天と地と」など。2007年に故郷の大分に移住し、現在は両親と3人暮らし。8月29日にフォトブック『直見工房2 それからのこと』(宝島社)を発刊。財前家のオリジナルレシピや田舎暮らしの今を紹介。
人間みたいなオランウータンともに過ごした強烈な記憶
【私の初めてのひとり旅(一人旅)】財前直見さん 東京(1)から続く
オーディションから2~3週間後に合格したという電話がかかってきて、驚いている間に所属事務所が決まり、パスポートを作るように言われました。「パスポート作ってどうするんですか?」と聞いたら、撮影に向けて肌を焼いてもらうから、グアムへ行って来なさい、って。小麦色の肌が魅力的な時代でした。
女性のマネジャーさんと2人でグアムに乗り込み、体を焼くのが使命でしたから、ホテルのプールサイドで日光浴をして、肌の様子を見て、部屋に戻っての繰り返しです。初めての海外旅行でしたが、どこかへ連れて行ってもらった記憶もないし、グアムの印象といっても南国だなあ、湿気が多いなあという感じでしたね。
デビューしてからは、ドラマ以外でも海外ロケなどに行かせていただくと、休憩時間にひとりで街歩きをして風景などをカメラに収めています。写真を撮るのが好きなんです。印象に残っているのは、テレビの企画でインドネシアのボルネオ島へ行ったことです。保護されたオランウータンを森へ返す活動をしている団体を訪ね、私も体験させてもらうというものでした。
オランウータンとの交流は衝撃的でした。保護されたオランウータンは人間に慣れていて、私の手をスプーン代わりに使って水を飲んだり、話せば分かるんじゃないかなというぐらいの、なんとも人間らしい雰囲気もあったりして。夜にオランウータンを森へ返したのですが、朝には戻って来ていて、なんだか申し訳なさそうな顔をしているのを見ると胸がキュッとしました。これから先、そんな経験をすることはないんじゃないかなっていうくらい、強く心に焼き付いています。

ボルネオ島でオランウータンを抱っこする。忘れられない体験となった
40歳で出産し、子どもをどこで育てるか考えたとき、自分が育った環境が頭に浮かびました。畑を耕し、作物を育て、いただくというシンプルな生活を息子にも見せたいと思って、故郷の大分に移住することにしたのです。
本当に居心地が良くて、毎日温泉へ行って。大分は「おんせん県」ですが、豊後(ぶんご)大野にはサウナ文化があって、水風呂の代わりに川や鍾乳洞で整うこともできます。大分は暮らすにも、観光するにも良い所ですよ。
話・写真/財前直見 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2025年10月号)
(Web掲載:2025年10月30日)


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