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旅よみ 俳壇 旅行読売2026年7月号

場所
旅よみ 俳壇 旅行読売2026年7月号

あしかがフラワーパークのモネの池のほとりに咲き誇るバラ(写真/ピクスタ)

【特選】

薔薇(ばら)薫る鬱屈(うっくつ)天へ預けをり
 ◉市川市 島根 黎
<評>「香る」でなく「薫る」という言葉で、あたり一帯が薔薇で満たされているのがわかる。それで却って作者の心がふさぎこんだのか、または見事な薔薇を見て、滅入る気持ちをいったん、天に預けようと思ったのか。薔薇に圧倒された作者の悩ましさ。

【入賞】

朱と紅(べに)に咲き分けている木瓜(ぼけ)の花
 ◉岐阜県八百津町 細江隆一
<評>朱赤やピンクなどなど、一概に「赤い」木瓜の花では済まされないことを、作者は写生の眼で、しっかりと捉えることができている。

花冷えの街ほぐすかに時の鐘
 ◉上田市 中野康子
<評>小江戸川越の「時の鐘」。決まった時間に鳴るので、行きかう人々も立ちどまって待つ。その数分間の一体感に心があたたまる。

赤い椿白い椿の在る校舎
 ◉京都市 福地秀雄
<評>河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)の句〈赤い椿白い椿と落ちにけり〉は正岡子規も褒めたという。堂々と借用した勇気と視覚的にもクリアな点に乾杯。

宿裏に瀬音の高く木五倍子(きぶし)咲く
 ◉川口市 清正風葉
<評>房状に淡黄色の小花を垂らしているキブシ。「瀬音の高く」で房ごとふるえているような早春の季節感がよく表されている。

【入選】

国道に這(は)ひ出す蚯蚓(みみず)戻す子よ
 ◉神奈川県中井町 笹尾雅美
清水の舞台の青葉若葉かな
 ◉練馬区 曽根新五郎
梅祭り車の渋滞くぐり抜け
 ◉八王子市 沼田健一郎
長袖を肘までまくる彼岸かな
 ◉横浜市 茅房克一
石垣の苺(いちご)の匂ひ覇者の夢
 ◉埼玉県吉見町 青木雄二
湯祈禱(ゆぎとう)のみこしおねりの道後かな
 ◉松山市 友澤恭子
高千穂の真名井の滝の緑(あお)しぶき
 ◉中野区 藤曲夕起子
ザッハトルテゆかしき雪の美術館
 ◉市川市 冨山 透
春灯(しゅんんとう)や雨の港の赤い靴
 ◉大田区 豊島 仁
谷中ではご先祖様も花見かな
 ◉豊島区 浅野尚子

【佳作】

鶴唳(かくれい)に囲まれてゐる日の出かな
 ◉川崎市 柳内恵子
猊鼻渓(げいびけい)藤の香の下舟進む
 ◉足立区 太田君江
坂上の北谷(ちゃたん)のテラスアイスラテ
 ◉さいたま市 小林茜音
祝福の色を並べてクロッカス
 ◉成田市 小川笙力
翳りたる実家の納屋の吊るし雛
 ◉東京都中央区 豊澤佳弘
丘の上の仔馬草食む都井岬
 ◉江戸川区 岩井千恵子
駅を出て鮎焼く煙漂ひ来
 ◉神奈川県中井町 竹和世
船窓の東シナ海冬の波
 ◉千葉県酒々井町 梅澤波葉
海峡の小島の漁船油まじ
 ◉伊予市 福井恒博
とびしまや燕の如くサイクリング
 ◉青森市 山本覚
春宵や汐の香まとひ下船する
 ◉横浜市 相沢恵美子


俳壇選者_津髙里永子300x300.jpg

<選者>「墨BOKU」代表 津髙里永子(つたか りえこ)
兵庫県出身。「小熊座」同人。よみうりカルチャー講師。句集に『地球の日』『寸法直し』、著書に『俳句の気持』など

津高里永子先生の「総評」

「たびよみ俳壇」なので、やはり、旅の句を拝見できるのがいちばんの楽しみ。ただ、どこそこへ行ってきました、というような句では、ちょっと食い足りない気がします。どこそこの何を見てきたのか、そして、何のどこに驚いたのか、どう楽しかったのか、など、読み手が「へえーっ」と少し前のめりになって、「そしてどうだったの?」と次を聞きたくなるようなことをひとこと、言ってくださると、俄然、魅力的になる句があると思いました。

 津高里永子先生のワンポイント俳句講座

「旅先で句碑を見かけたことがありませんか」

芭蕉の旅先で作った句と紀行文で成り立っている「おくの細道」に因んで、芭蕉が巡った地には多くの芭蕉の句碑があります。芭蕉だけでなく、その土地にゆかりのある俳人の著名な句碑、またはその地の特長が詠まれている句の句碑など、全国にかなりの数の句碑があります。

観光用の地図に句碑のある場所が載っていたら、時間の許す限り、立ち寄ってみてください。年代が経っていたり、文字が解読できなかったりするものもあるかもしれませんが、句碑の裏に読み方が書いてあるのもあります。句碑の中には本人の自筆によるものでないのもありますが、本人の筆跡がそのまま句碑になっているものも多いです。写真を撮っておけば、あとで、いろいろとインターネットで調べることもできます。自分の目で見た風景が、句碑と照らし合わせることで二倍にも三倍にもなってふくらんでいくことでしょう。

もし、手入れが行き届いていなくて、まるで、墓石のような哀れな句碑があったら、ぜひ、拝んであげてください。今は古ぼけて判読できなくなっている句碑でも、当時は、ここに在るべき句碑という思いを込めて建立されたものにちがいないと思いますから。埋れてしまっているような句碑や、木々にかくれている句碑たちも、出来れば見つけてあげたいものです。


【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。

(出典:旅行読売2026年7月号)
(Web掲載:2026年5月28日)

※連載「旅よみ俳壇」トップページはこちら

Writer

たびよみ編集部 さん

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