旅よみ 俳壇 旅行読売2026年8月号
鎌倉の寿福寺は高浜虚子の菩提寺(写真/ピクスタ)
【特選】
本堂に雨だれ残る虚子忌(きょしき)かな
◉大田区 豊島 仁
<評>虚子忌は毎年4月8日に法要句会を行っている。以前は鎌倉にある高浜虚子の菩提(ぼだい)寺・寿福寺でやっていたのだが、その時期はなぜか雨が多く、この句の臨場感に手応えがあった。特に中七が妙味である。
【入賞】
一生に一度の舞台花衣
◉杉並区 森 秀子
<評>NHK全国俳句大会で見事に大賞を受賞した作者は、NHKホールの大舞台に立った。まさに花衣が動かない作品だといえる。
式を終へディズニー急ぐ卒業子(そつぎょうし)
◉江戸川区 岩井千恵子
<評>やはり魅力は卒業式よりディズニーランドなのか。少しおかしみもあるが、卒業した喜びが伝わって来た作品だった。
女辞め旅人となる雲の峰
◉仙台市 星 良子
<評>かなり思い切った俳句だが、季題が効いているのでかえって良い。虚実をないまぜにするのも俳句の流儀である。
デンキブランちびりちびりと春惜しむ
◉横浜市 茅房克一
<評>浅草と言わずにそう思わせることができる一句であり、これは作者の手柄である。季語もしみじみとして的確であった。
【入選】
初夏(はつなつ)の風の入口二の鳥居
◉足立区 山崎勝久
表富士はた裏富士の雪融けぬ
◉京都市 福地秀雄
蔵前の神社ミモザの咲き誇り
◉千葉県酒々井町 梅澤波葉
気まぐれな春風流す隅田川
◉川崎市 柳内恵子
春嵐秘境の駅の屋根飛ばす
◉伊予市 福井恒博
風光る北前船の鬼瓦
◉横浜市 相沢恵美子
初蝶や夢の舞ひたる競馬場
◉東京都府中市 櫻井 光
安曇野の春は白馬のお告げから
◉埼玉県吉見町 青木雄二
辻に来て別れ別れの秋遍路
◉行田市 根岸 保
桃の花笛吹川の水の音
◉練馬区 曽根新五郎
【佳作】
旅の果て花散りやまぬ角館
◉さいたま市 竹内白熊
一区域神の聖地や夏木立(こだち)
◉つくば市 有阪貴男
初雷や列車止まりて嬰児(えいじ)泣く
◉奈良県広陵町 中西トミ子
桜鯛売り切れごめんのすし屋かな
◉松山市 友澤恭子
遊行忌や滾(たぎ)りゆく世を雀たち
◉東京都中央区 豊澤佳弘
仏頭の去りし山田寺木の芽冷(このめびえ)
◉新宿区 居林まさを
消えるなよみちのく蔵王の春の雲
◉市川市 井田わたる
初鰹孫と見上げる龍馬像
◉鎌ヶ谷市 藤本嗣子
花合歓(ねむ)や芭蕉ゆかりの蚶満寺(かんまんじ)
◉世田谷区 石川昇
酷暑にて一日のばしあれもこれ
◉神奈川県中井町 竹和世

<選者>「玉藻」主宰 星野 高士(ほしの たかし)
神奈川県出身。鎌倉虚子立子記念館館長。句集に『残響』『無尽蔵』『破魔矢』『渾沌』など。テレビ、ラジオでも活躍。
星野高士先生の総評
やはり俳句は季題を詠う文学です。その前提としては写実そして写生が大事です。虚子はそこに客観的写生を唱えました。ただあまり見過ぎて報告にならないように表現しましょう。
星野高士先生のワンポイント俳句講座
「民話と俳句」
一般社団法人日本昔ばなし協会が今年3月、東京都内で「海ノ民話フォーラム」を開催しました。私は、そこで行われたトークセッションに参加し、「民話と俳句の親和性」について話しました。民話も俳句も「言葉」なんですね。しかも、それぞれの民話には季節が織り込まれています。一方、俳句には四季折々の季題があります。民話の世界を十七音でどう伝えるかが問題なんですね。
トークの中で、同協会代表理事でアニメーション監督の沼田心之介さんは、「俳句の十七音のなかにいろんな動きや情景がみえる」と指摘されました。語り部が民話を語ると、聴いている子供たちが想像を膨らませるんだそうです。確かに共通点がありますね。
フォーラムでは、海にまつわる民話のアニメを鑑賞した全国の人々から寄せられた「海ノ俳句コンテスト」の入賞作品を発表しました。星野高士賞には、現代的な問題意識が込められた、しんさん作の<炎昼や海の底にも温暖化>を選びました。温暖化の影響は海の底にまで及んでいます。函館市の民話「ムイとアワビの合戦」のアニメ作品をもとにした俳句です。
そして海ノ民話賞には、崎本ミナトさん作の<新緑や小海を目指す夫婦旅>が選ばれました。これは、長野県小海町の民話「くじらの夫婦」のアニメ作品がもとになっています。
3句選ばれた優秀作の1句が小田毬藻(まりも)さん作の<忘れまじ 海への畏敬 焼栄螺(やきさざえ)>で、加賀市の民話「お夏のがんど」をもとに詠んだ句だそうです。栄螺は春の季題。皆さんも民話をもとに俳句を詠んでみませんか。
写真左が崎本さん、右から2人目が小田さん
【応募方法】
旅で詠んだ俳句、風景や名所を詠んだ俳句をお送りください。特選句には選者の直筆色紙と図書カード、入賞句には図書カードを進呈します。応募には「月刊旅行読売」に添付の「投句券」が必要です。「月刊旅行読売」は全国の書店またはこちらの当社直販サイトで送料無料でお求めいただけます。
(出典:旅行読売2026年8月号)
(Web掲載:2026年6月29日)
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