【私の街の路面電車】京阪電車大津線で、ドラマで話題「紫式部ゆかりの地」を訪ねる
びわ湖浜大津駅の駅前交差点で急カーブを曲がる京津線
地下・登山・路面の顔を持つ「三刀流」の路面電車
来年1月から始まるNHK大河ドラマ「光る君へ」で、紫式部の人生が描かれる。そう聞いて、大津市にあるゆかりの古刹(こさつ)を訪ねることにした。乗車するのは京都と滋賀を結ぶ京阪電車大津線。人や物資が行き交う幹線道路・旧東海道に沿って大正時代に開業した路線で、京津(けいしん)線と石山坂本(いしやまさかもと)線の2路線を持つ。
急勾配の逢坂山(おうさかやま)を登山電車のように越えるのは京津線で、京都市の地下鉄区間から直通で乗り入れる。滋賀県大津市街地では路面電車として走行。地下、登山、路面の顔を持つ〝三刀流〟のスタイル。それぞれのシーンで必要な性能を全て搭載した、鉄道ファン垂涎(すいぜん)の高性能車両だ。
京阪山科(やましな)駅から早速乗り込む。カーブと勾配が続く専用軌道で、確かに登山電車のよう。ホームが斜めに傾いている大谷駅には驚いた。峠を下ると路面を走行。4両編成、全長66メートルの路面電車は国内最長だ。この巨体で交差点をうねうね曲がって行くのも新鮮な体験である。
びわ湖浜大津駅で2両編成の石山坂本線に乗り換え、住宅街や瀬田川を眺めながら終点までのんびり行く。まず訪ねたのは石山寺。平安時代、紫式部が参籠(さんろう)し、『源氏物語』の着想を得たと伝わる寺院だ。本堂の一角に紫式部の執筆姿を人形で再現した部屋「源氏の間」があり、想像を掻(か)き立てられた。謎多き天才作家の人生をドラマで知るのが楽しみだ。
昼食は「れすとらん松喜屋(まつきや)」へ。滋賀旅の楽しみ・近江牛をいただく。隠し味に赤ワインを効かせた贅沢(ぜいたく)な味わいだ。高級和牛の上質な甘みと軟らかな食感に満足して店を出る。
続いて参拝した三井寺(みいでら)は、平安時代の僧・円珍が唐への留学からの帰国後に再興した寺院。紫式部の父で、漢学者である藤原為時(ためとき)は晩年にこの寺で出家したそうだ。
境内の金堂や鐘楼を巡り、石段を上り詰めると立派な観音堂が立っていた。展望台からは琵琶湖が見渡せる。電車と歴史を堪能し、爽快な気分で湖国の夏景色を愛(め)でた。
■モデルコース
【京都山科】
↓14分
【びわ湖浜大津】
↓16分
【石山寺】
石山寺
↓徒歩20分
れすとらん松喜屋
【唐橋前】
↓18分
【三井寺】
三井寺
京阪電車大津線沿線の見どころ、味どころ
東寺真言宗の大本山で、花の寺としても知られる。境内で大河ドラマに関する展示が予定されている。
■8時〜16時/ 無休/600円/石山寺駅から徒歩10分/TEL:077-537-0013
※掲載時のデータです。
三井寺(みいでら)
天台寺門宗の総本山で正式名称は園城寺(おんじょうじ)。国宝の金堂では円空仏など諸仏を拝観できる。
■8時〜16時30分/無休/600円/三井寺駅から徒歩10分/TEL:077-522-2238
※掲載時のデータです。
近江牛の名を全国に広めた老舗精肉店「松喜屋」直営。近江牛の焼肉重2970円。
■11時30分〜14時(土・日曜は11時〜)、17時〜20時/無休/唐橋前駅からすぐ/TEL:077-534-2901
※掲載時のデータです。
文/北浦雅子
写真/清水いつ子
●開業:1912年(京津線)、1913年(石山坂本線)
●営業距離:21.6キロ
●駅数:27
●「京阪電車びわ湖1日観光チケット」:700円。大津線全線乗り降り自由。沿
線の社寺(三井寺、石山寺含む)や施設で優待特典あり。
●問い合わせ:京阪電車お客さまセンター/TEL:06-6945-4560
※掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2023年9月号)
(Web掲載:2023年10月4日)