たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【青春18きっぷでできること】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(1)

場所
【青春18きっぷでできること】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(1)

小田―田儀駅間(出雲市多伎町)の海岸線をガタゴトと行く。広々とした海が続いて気分爽快

 

海の絶景や鄙びた木造駅舎、石州赤瓦の集落などを車窓から

今年もいよいよ青春18きっぷの夏がやってきた。思い立ったのは山陰線完乗。ここ数年のコロナ禍による自粛のストレスをエネルギーに変え、2日間で674キロを乗り尽くそう。そんな熱い思いがふつふつと湧いてきた。

山陰線は京都駅を起点に兵庫県北部、鳥取駅などを経て日本海沿いを下関市まで行く日本最長の在来線。車窓に海の絶景や鄙(ひな)びた木造駅舎、石州(せきしゅう)赤瓦の集落などが現れる旅情あふれるコースだ。

福知山駅、豊岡駅などで乗り換えて、竹野駅を過ぎるとようやく海が見えてきた。断崖絶壁や奇岩など野趣に富む海景が見どころだ。餘部駅の一つ手前の鎧よろい駅は2001年冬の青春18きっぷのポスターにもなっている。

入り江を縁取るように並ぶ石見地方の石州赤瓦の集落。赤茶色の屋根が海に映える
西浜田駅。島根県浜田市周辺には味わい深い木造駅舎が点在

さらなる絶景ポイントはこの先、高さ約40メートルを誇る余部橋梁(あまるべきょうりょう)だ。山腹のトンネルを出る瞬間、空中に飛び出すような迫力で息を飲む。美しい入り江と集落を眼下に渡り切り、橋梁の西端に位置する餘部駅で列車を降りた。

鎧駅と餘部駅の間に全長約310メートルの鉄橋が完成したのは1912年で、現在のコンクリート橋は2010年に供用を開始した2代目となる。ホームから真っすぐ歩いた先に、初代鉄橋の橋脚3本を活用した展望台「空の駅」がある。そこから望むと山が海に迫り、山あいの狭い平地に線路を通すのは難しい地形だと実感できた。

山腹に余部橋梁を見下ろせるポイントがあり遊歩道が整備されている
餘部駅も橋梁と同じく高さ約40㍍。この駅を出ると列車は再びトンネルの中へ

全面ガラス張りのエレベーターで地上に降り、「道の駅あまるべ」に立ち寄る。館内の展示パネルや映像で鉄橋建設などの歴史を学んだ後、食事コーナーで昼食。

「香住(かすみ)ガニの身とカニクリームコロッケを挟んだ香住ガニバーガーも人気ですよ」と教えてくれたのは道の駅の駅長・川本博文さんだ。香住漁港でとれたエテカレイの煮付けがメインの定食にも引かれる。

旧余部鉄橋の橋脚を生かした「空の駅」。エレベーターでホームまで楽に上れる
道の駅の駅長さんおすすめの「香住ガニバーガー」は610円 ※掲載時のデータです

川本さんにちょっと面白い話を聞いた。「空の駅」には大きなカメの駅長がいるらしい。「15時になったら散歩に出てきますよ。見ていきませんか」とのこと。鈍行でのろのろと旅をしている私だが、カメを待っている時間はなさそうだ。残念。

餘部駅から1時間ほどで鳥取駅に到着し、構内の駅弁販売店「アベ鳥取堂」に行く。目当ては有名な「元祖 かに寿し」だったが、多様な商品があって目移りする。

「常に10種ほどの弁当を販売していますが、すべて地元にこだわった商品です。駅弁はその地方の食文化の代表ですからね」と話すのは、社長の阿部正昭さん。創業1910年の老舗で、駅弁の製造販売を始めてから80年になるそうだ。

全国で最初に「かに寿司」を販売したアベ鳥取堂のロングセラー商品。地元産のカニがたっぷり。元祖かに寿司 1480円 ※掲載時のデータです

文/北浦 雅子
写真/宮川 透

【青春18きっぷ】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(2)へ続く (11月20日公開予定)

モデルコース <1日目>

●京都
  6:37発 園部行き 
●園部 
  7:21着
  7:26発 福知山行き
●福知山
  8:38着
  8:54発 豊岡行き
●豊岡
  10:09着
  10:11発 浜坂行き
●餘部
  11:06着
  12:43発 浜坂行き
●浜坂
  12:56着
  13:05発 鳥取行き
●鳥取
  13:54着
  14:41発 米子行き
●米子 
  17:33着
  17:45発 出雲市行き
●出雲市
  19:05着

※ダイヤは2022年7月号掲載時の発着時刻。現在は変動あり。また、2023年6月30日~7月1日に発生した大雨の影響により、長門市駅~小串駅間は運転見合わせ中。バスによる代行運転を実施している。
※太字・下線は途中下車して観光する駅。
※土曜、休日用ダイヤ。


■施設データ
道の駅あまるべ 9時〜18時(食事は11時〜15時)、無休/TEL:0796-20-3617
寿し処みのり11時〜13時30分、17時〜21時30分/日・月曜休/TEL:0856-22-1356
アベ鳥取堂 鳥取駅 南口売店 7時30分〜16時30分/無休/TEL:0857-26-1311(本社)

※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2022年7月号)
(Web掲載:2023年11月19日)


Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています