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【青春18きっぷでできること】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(2)

場所
【青春18きっぷでできること】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(2)

岡見―鎌手駅間(浜田市三隅町)の断崖に架かるレトロな橋梁

 

後世の旅人にも伝えたい、素晴らしい駅弁文化

【青春18きっぷ】絶景と海の幸を目当てに、在来線最長674キロの山陰線を完乗(1)から続く

コロナ禍での旅客減少は各地の駅弁業者に打撃を与えたが、日本の駅弁文化を絶やすわけにはいかない。アベ鳥取堂でも苦境をバネにして、新商品の開発や通信販売に力を入れている。

カニの身を加工した〝かにトロ〟入りの「蟹蟹(かにかに)丼」は2021年に発売開始の新商品。あご竹輪(ちくわ)やイカの子の煮付けなど酒の供(とも)を集めた「とっとりの居酒屋」も個性が際立つ。特に後者は地酒を好む〝呑み鉄〟に好評と聞いて思わず手が伸びた。

小腹が空いてきた頃に車内でいただく。丁寧に作られた鳥取の味に感激しつつ、しみじみと旅情に浸る。この素晴らしい駅弁文化を、後世の旅人にも伝えねば。

地酒にぴったりの「とっとりの居酒屋」1700円 ※掲載時のデータです
「蟹蟹丼」1600円は加熱式。“かにトロ”を混ぜて食べよう ※掲載時のデータです

途中の倉吉駅で「もう一泊あればここで降りて、三朝(みささ)温泉でのんびりできたかも」とふと思う。世界屈指というラジウム泉も体感したいし、倉吉市内の白壁土蔵群も見てみたい。とはいえ、本日の最後の楽しみがこの先に。宍道湖に沈む夕日を車窓から堪能できるはずなのだ。湖を待ちわびながらガタゴトと揺られて行くのも贅沢(ぜいたく)な時間である。

日没近く、宍道湖にさしかかると空が茜(あかね)色に染まり、湖と空と夕日が幻想的なコラボレーションを展開していた。忘れられない旅の情景が、また一つ……。

玉造温泉―来待(きまち)駅間の車窓。宍道湖に沈む夕日が美しい
岡見駅―鎌手駅間の絶景

沿線で旬の地魚を満喫する

出雲市のホテルに泊まった翌朝、再び山陰線に乗って島根県西部の石見(いわみ)地方に入る。青い海が間近に迫り、車窓も美しい。途中、益田駅で下車。益田川沿いなどを散策し「寿し処みのり」ののれんをくぐった。

お得なランチ「海鮮丼定食」はボリュームもあって1100円(掲載時の料金です)。仲卸業も営む店なので、新鮮な旬の地魚を安価に食べられるのだ。美しく盛られたヒラマサの、ぷりぷりした食感やマグロの甘みを満喫。その間にも地元客が次々と訪れて、人気のほどがうかがえる。日本で唯一、支流を含めてダムがない一級河川で、益田市のシンボルとされる清流だという。

青春18きっぷのポスターの撮影をした折居―三保三隅駅間の車窓風景。日本海が近くに迫る
西中国山地を源流とする益田川沿いを散策
益田駅から徒歩4分の「寿し処みのり」で食べた鮮度抜群の海鮮丼定食
益田駅駅舎

益田市に滞在したのは2時間ほどだったが、次に来る時は1泊して伝統芸能の石見神楽も観てみたい。そう考えながら、あたふたと駅に戻る。

長門市駅や小串(こぐし)駅で乗り換え、やっと本州最西端の下関駅に到着。駅を出ると、達成感がじわっと込み上げてきた。青春18きっぷの原点に立ち返り、その魅力を再認識した気分だ。まずは祝杯。アテはやっぱり、名物の剣先イカかな。

文/北浦 雅子 
写真/宮川 透

モデルコース <2日目>

●出雲市
  8:02発 浜田行き
●浜田
  9:58着
  10:23発 益田行き
●益田
  11:19着
  13:11発 長門市行き
●長門市
  15:02着 小串行き
  15:16発
●小串
  16:36着
  16:40発 下関行き
●下関
  17:25着

※ダイヤは2022年7月号掲載時の発着時刻。現在は変動あり。また、2023年6月30日~7月1日に発生した大雨の影響により、長門市駅~小串駅間は運転見合わせ中。バスによる代行運転を実施している。
※太字・下線は途中下車して観光する駅。
※土曜、休日用ダイヤ。


■施設データ
道の駅あまるべ 9時〜18時(食事は11時〜15時)、無休/TEL:0796-20-3617
寿し処みのり11時〜13時30分、17時〜21時30分/日・月曜休/TEL:0856-22-1356
アベ鳥取堂 鳥取駅 南口売店 7時30分〜16時30分/無休/TEL:0857-26-1311(本社)

※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2022年7月号)
(Web掲載:2023年11月20日)


Writer

北浦雅子 さん

和歌山の海辺生まれで、漁師の孫。海人族の血を引くためか旅好き。広告コピーやインタビューなど何でもやってきた野良ライターだが、「旅しか書かない」と開き直って旅行ライターを名乗る。紀伊半島の端っこ、業界の隅っこにひっそり生息しつつ、デザイナーと2人で出版レーベル「道音舎」を運営している。https://pub.michi-oto.com/

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