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【私の初めてのひとり旅】田中要次さん 東京、京都(2)

場所
> 杉並区、京都市
【私の初めてのひとり旅】田中要次さん 東京、京都(2)

八坂神社で自撮りする田中さん(2008年撮影)

 

たなか・ようじ [俳優]

1963年、長野県出身。国鉄、JR東海に勤務した後、27歳で上京。スタッフ兼業の俳優として芸能活動を開始した。2001年、木村拓哉主演のTVドラマ「HERO」のバーのマスター役でブレイク。「蠱毒 ミートボールマシン」(17年)で映画初主演を務めた。バイプレーヤーとして映画、テレビに多数出演。テレビの旅番組への出演も多い。

 

猫に招かれた⁉ 京都の異空間との出会い

【私の初めてのひとり旅】田中要次さん 東京、京都(1)から続く

ロケで地方へ行くとき、時間ができるとその土地をひとりで徘徊します。中でも印象に残っているのは約20年前、京都での出来事です。とても印象深い店と出合いました。

1日空いたので、レンタサイクルを借りて金閣寺、銀閣寺を巡り、八坂(やさか)神社を参拝しました。日が暮れかかる頃、東大路通(ひがしおおじどおり)と下河原通(しもがわらどおり)との間の路地に入ったら、白黒のブチ猫とふいに目が合ったんです。「スペース ネコ穴」という看板の前でした。「虎の穴」は聞いたことあるけれど「ネコ穴」って何だ?と思いながら、ふらっと入りました。

古民家というより昭和初期からある誰かの家のようなたたずまい。これは飲食店なのか? 家主らしき女性が「奥へどうぞ」って言うけれど、2間続きの和室は男子寮の部屋以上に雑然としていて、奥にこたつがあるだけ。しかも若い男女が寝ている。びっくりして一瞬固まってしまいました。「え、お客さん?」と女性店主に尋ねると、曖昧にうなずくだけ。そのうちこたつで寝ていた若い女性が起き出して、僕を見るなり「なんでここに俳優の田中さんがいるんですか!」ってびっくりして。

さまざまな物が置かれ雑然としている「スペース ネコ穴」の店内

女性店主に話を聞くと、町家風が気に入って借りて住んだものの、友達のたまり場になってしまい、一線を引くために居酒屋にしたらしい。2階に猫と住んでいるので、住居と店が混然一体となったカオスな状態で、物がごちゃごちゃと置かれていて、潔癖症の人にはおすすめできません。こんなディープな店は、日本中どこを探してもないと思います。

この日は忘年会だったらしく、僕も誘われ、常連の作家や大部屋俳優ら初対面の人達7、8人と鍋を囲んで盛り上がりました。数年後もオフの時間に再訪して、やっぱりこたつで鍋料理を食べました。店というより実家や友人宅に近い感覚でした。四条烏丸(しじょうからすま)の辺りに移転した後に、テレビのロケ隊を連れて撮影に行きましたが、ディープな隠れ家感はそのままで安心しました(笑)。

話・写真/田中要次 聞き手/田辺英彦

 

夕暮れの京都・東山(写真/ピクスタ)

(出典:「旅行読売」2023年12月号)
(Web掲載:2023年12月17日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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