東京駅から東西南北へ1万歩(3)南は品川【駅から歩こう1万歩】
東京タワーは高さ333メートル。1958年の竣工時は世界一高い自立式電波塔だった
東京タワーを見上げて江戸の玄関口まで
東京駅から東西南北へ1万歩(2)西は新宿【駅から歩こう1万歩】から続く
日本橋を起点とする五街道で江戸に最も近い宿場は、江戸四宿(ししゅく)と呼ばれた千住、品川、板橋、内藤新宿だ。この南コースでは東海道の玄関口だった品川を目指す。途中には東京タワー、増上寺、愛宕(あたご)神社がある。
東京駅八重洲南口をスタートして、外堀通りを新橋方面へ進む。ほどなくガラスの船のような東京国際フォーラムが右側に見えてきて、その手前を東海道新幹線が走り抜けていった。
ゴジラも歩いた晴海通りが交差する数寄屋橋交差点を直進して、土橋(どばし)交差点に出たら、右側を見上げてみよう。太い円柱に3階建てのオフィスフロアを貼り付けたように見える、巨木を思わせるビル(静岡新聞・静岡放送東京支社ビル)が立っている。世界的な建築家・丹下健三が設計したものだ。最近は似たようなデザインの高層ビルが多いだけに、個性的な建物を見るとうれしくなる。
新橋駅から浅野内匠頭終焉(あさのたくみのかみしゅうえん)の地碑を経て、愛宕神社へ。鳥居の奥には垂直の壁に見える急勾配の石段が続いていた。江戸期、徳川3代将軍の家光が石段の上に咲く梅の花を見て「馬で駆け上がり、持ち帰れる者はいないか」と問うと、家臣の一人が見事に成し遂げ、将軍から大絶賛されたという。この伝説から「出世の石段」と呼ばれている。
いざ、挑戦! すぐに息が切れ、足を止めて振り返ったのが悪かった。あまりの高さに足裏がザワザワ。騎馬で上がるなど想像もしたくない。
参拝後、無事に石段を下ったら南下を続ける。しばらく歩くと東京タワーの足元に出た。テレビ電波を送信する役割は東京スカイツリーに譲ったが、東京のシンボルに変わりはない。土・日曜、祝日の限定で約600段の外階段を使い、高さ1500メートルのメインデッキまで自力で上ることもできる。
徳川家の菩提寺・増上寺、福沢諭吉が開いた蘭学塾から始まる慶應義塾大学を通過して、旧東海道(国道15号)に合流。朝夕に大木戸を開閉して江戸の治安を守った高輪大木戸跡を過ぎると泉岳寺はもうすぐだ。
赤穂藩主浅野家の菩提寺で、境内には主君・浅野長矩(ながのり<内匠頭>)の無念を晴らすために吉良義央(よしなか<上野介>)邸に討ち入った大石良雄(よしたか<内蔵助>)ほか赤穂義士の墓所がある。
2020年に開業した高輪ゲートウェイ駅を見て、もうひと頑張りすると品川駅だ。歴史ドラマや名建築などの魅力が詰まったコースだった。品川宿からさらに旧東海道を歩くコースは、こちらの記事を参照。
文/内田 晃 写真/内田 晃、齋藤雄輝ほか
東京駅から東西南北へ1万歩(4)北は田端【駅から歩こう1万歩】へ続く(7/2公開)
【モデルコース】
●徒歩距離/約7.8キロ
●徒歩時間/約2時間40
東京駅(八重洲南口)
(2300メートル)
御菓子司 新正堂
(650メートル)
愛宕神社
(950メートル)
東京タワー
(200メートル)
増上寺
(850メートル)
慶應義塾大学
(1100メートル)
高輪大木戸跡
(450メートル)
泉岳寺
(400メートル)
高輪ゲートウェイ駅
(900メートル)
品川駅(高輪口)
立ち寄りたい沿線のスポット
御菓子司 新正堂(しんしょうどう)
パリッとした特製の皮で求肥入りの餡(あん)を挟んだ切腹最中(もなか)(1個270円)が人気。餡は生の小豆(あずき)を水に浸さずに煮る直火炊きのため、小豆の風味とうまみがより感じられる。旧店舗は浅野内匠頭が切腹した田村邸跡にあり、1990年に誕生した菓子だ。
■9時〜19時(土曜は〜17時)/日曜、祝日休/山手線ほか新橋駅から徒歩5分/TEL03-3431-2512
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年7月1日)