「青春18きっぷ」ポスターの鉄道写真家が選ぶ 夏駅ノスタルジー10(2)
異郷の地なのにどこか懐かしい、夏の駅にはそんなノスタルジーがあります。雄大で溌剌(はつらつ)とした風景の背後にある、短い季節が過ぎ去った後の寂しさの予感も魅力的です。「青春18きっぷ」のポスター写真を撮り続けてきた鉄道写真家の長根広和さんに、記憶に残る夏の駅を10か所紹介してもらいました。
上の写真<留萌(るもい)本線・北一己(きたいちやん)駅(北海道)>
2023年に石狩沼田-留萌駅間が廃止された留萌本線。北一已駅は残された14.4キロにある駅で、26年3月末をもって廃止される予定だ
佇まいが心に響く駅で、夏らしい情景を待つ
「青春18きっぷ」ポスターの鉄道写真家が選ぶ 夏駅ノスタルジー10(1)から続く
ロケハンして夏を感じても、入道雲がモクモクした時に列車が来なかったり、土砂降りに耐えても列車が来る直前に止んだりと、なかなかうまくいかない。
そんな時は駅に行くようにしている。佇(たたず)まいが心に響く沿線の駅で、カメラ片手にずっとベンチに座っていたりする。駅舎は列車と違って動かないし、夏らしい情景になるまで待てばいいわけだ。
もちろん、ただ時間だけが過ぎて1枚も撮らないこともあるが、駅でのんびり過ごすのはこの上ない至福の時間だ。リラックスしているせいか、自分の写真にも優しさを感じることが多い。
文・写真/長根広和
長根広和(ながね ひろかず)
1974年、神奈川県生まれ。鉄道写真家。マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ代表取締役。「青春18きっぷ」などのJRポスターや、鉄道雑誌、カメラメーカーPRなどで活躍。日本鉄道写真作家協会副会長。著書は『極上の鉄道風景写真術』(天夢人)ほか
(出典:旅行読売2024年7月号)
(Web掲載:2024年7月28日)