【オーストラリア ファームステイの旅】「WWOOF」でオーガニックファームに暮らすように旅する➀

ウーファーを受け入れているロールバッハ夫妻
WWOOF(ウーフ)というユニークな旅の仕組みを利用して向かったのは、有機農業の先進国と言われる南半球のオーストラリア。豊かな自然に囲まれたオーガニックファームで、しばらくその土地の住人となり、暮らすように旅をした。
通常の旅では得られない体験ができる旅「ウーフ」
WWOOF(以下ウーフ)という旅の仕組みをご存じだろうか。「ウーファー」と呼ばれる旅人は、ホスト登録をしたオーガニックファームから食事と寝る場所を提供してもらい、代わりにファームでできることを手伝いながら交流を深めていくというもの。旅人とホストは対等で、家族や友人のような関係に位置付けられる。手伝いは労働ではないので、対価としての金銭のやり取りは発生しない。
ホストのほとんどが有機農法や循環型農業の実践者だ。そのため、環境や食の持続可能性、さらには生き方についても多くの知見が得られる。また短期間でも暮らしを共にすることで、その土地固有のカルチャーやローカルフード、地域コミュニティーへの参加など、通常の旅では得られない体験ができるのもウーフの魅力。

ウーファーになるのは簡単だ。まず、訪れたい国のウーフのウェブサイトから会員申請を行う。会員になると、登録ホストの検索や、メールのやり取りができるようになる。現地までの往復の旅費はウーファー持ち。ホストはファームだけでなく、農家民宿や農家レストラン、工房、山のガイドなども。ウーファーの年代は20代が多いが、田舎暮らしに興味のあるシニアの登録も増えているという。
今回はウーフジャパンをを通じて取材を申し込み、ETA(電子渡航許可)でウーフができるオーストラリアでウーファー体験をさせてもらった。


応じてくれたのは、日本語が少し話せるロールバッハ夫妻。オーストラリア第2の都市・メルボルンから列車に乗り、待ち合わせの駅に向かう。車窓に映る近代的な街並みがみるみる後ろに流れ、やがてのどかな田園に取って代わる。
出発から約2時間。モーという小さな駅に降り立った。数人の乗客が散っていくと、駅にはだれもいない。不安が頭をもたげたその瞬間、1台の車がロータリーに滑り込んできた。「ハーイ! お待たせ」。今回お世話になる農園のオーナーのロールバッハ夫妻。明るい笑顔に緊張が一瞬でほどけた。



夫のアントニオさんはオーストラリアにルーツがあるドイツ人で、スイスの三つ星レストランで働いた経歴を持っている。妻のカミエさんは高校生の時に一家そろって香港からニュージーランドに移住し、その後オーストラリアへ。2人とも多くの国で暮らし、旅してきた国際派だ。夫妻はここメルボルンで出会い結婚。自然と動物が大好きで、以前から農業に興味があったところ、コロナ禍となり、あらゆる社会システムが瞬く間に崩壊するのを目の当たりにした。そのとき「安心して口にできるものを自分たちの手で作ろう」と、就農を決意したと話す。



いよいよファームステイが始まる。現代では世界のあらゆる情報をネット検索できるが、ウーフのウェブサイトでわかるのは、ホスト農家の経営規模や家族構成、宿泊する施設の形態、立地、求められる作業内容くらい。さすがにホテルの予約サイトのように内部までは公開されない。はたしてどんなファームなのだろうか。
車は道を折れ、ゲートの前で停止した。奥にはのびやかな丘陵が広がり、はるか向こうに美しい一軒家がたたずんでいる。聞けば、農園の面積は東京ドームの3個分もあると言う。ゲートが開き、再び車が動き出した。
文/柿野明子 写真/松尾 純
【オーストラリア ファームステイの旅】「WWOOF」でオーガニックファームに暮らすように旅する②へ続く(近日公開)
📝WWOOFとは?
World Wide Opportunities on Organic Farms(世界に広がる有機農場での機会)の略。1971年にイギリスで始まり、オーストラリア、ニュージーランドで発展。現在は世界60か国以上に広まり、各国が独自に運営している。ウーフジャパンのウーファー登録料は初年度5500円(入会日より現在は1年半、継続割引あり)。日本国内では326か所の農家がホストに登録している。WWOOFジャパン事務局を参照。
【旅のインフォメーション】
交通:羽田からメルボルンまで直行便で約10〜11時間、メルボルンからモーまで鉄道で約2時間
時差:日本より1時間早い(サマータイムは2時間)
ビザ:観光目的で3か月までの滞在はETA(電子渡航許可)、それ以上の滞在にはビザが必要
通貨:1オーストラリアドル(A$)=96.8円(2025年2月13日現在)
気候:メルボルンの平均気温は夏季14~25.3度、冬季6.5~14.2度
参考:オーストラリア政府観光局
(出典:「旅行読売」2025年4月号)
(Web掲載:2025年3月21日)