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【いま、会える昭和】レトロな喫茶店、バーに昭和の残り香 新宿さんぽ<東京>(2)

場所
> 新宿区
【いま、会える昭和】レトロな喫茶店、バーに昭和の残り香 新宿さんぽ<東京>(2)

店名の「DUG」は英語の「DIG」(掘る)の過去形。まさに新宿の地下を掘り、文化を継承している

昭和のレコード、ジャズの音色

【いま、会える昭和】レトロな喫茶店、バーに昭和の残り香 新宿さんぽ<東京>(1)から続く

店を出ると日が傾きかけていた。隣接するビルの2階には、ディスクユニオン昭和歌謡館がある。約2万枚をそろえる中古レコード店である。松田聖子、中森明菜、近藤真彦、田原俊彦、郷ひろみ……。店内を巡ると憧れのスターと名曲が、次々と思い出される。何よりジャケットがいい。真正面を向いた歌手の顔はみな眼力(めぢから)が強い。この曲でスターになるという覚悟が昭和の歌い手には宿っていたように思えた。

「最近は外国人のお客も多いです。古いレコードがこんなにきれいな状態で残っていることに驚かれます」と、店長の篠木(しのき)賢治さん。「これは昭和の財産だと思います。大切に後世に引き継いでいきたい」と言う。

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「当時の人気作品のジャケットには、今でも新鮮味を感じます」と店長の篠木賢治さん

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レコードプレーヤーを持っていなくても思わず“ジャケ買い”したくなる

日も暮れ、靖国通り沿いのDUG(ダグ)へ向かった。1961(昭和36)年に開店したジャズ喫茶で、夜はバータイムとなる。当時、ジャズ喫茶は敷居が高かったが、今も狭い入り口から地階へ続く階段を下りるには一瞬、背筋が伸びる。「この入りづらさが良いんですよ。でも一度入ってしまえば常連さんと友人にもなれて、いつの間にか自分も常連になってしまうんです」と、店長の中平塁(なかだいら るい)さん。そう言われると、新宿には、一見(いちげん)さんは入りづらい店が多かった。

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狭い階段を一歩下りるごとにジャズの音色が大きくなる。今日は何を聴けるだろう?

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カウンター席もあるが、静かに音楽に聴き入るならテーブル席がいい

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ショップカードは3種。先代主人が撮影した写真が使われている

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ベルギー産の白生ビール970円と自家製ミートパイ540円

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DUGの近くにあるミニシアター、テアトル新宿は1957(昭和32)年に開館。映画鑑賞の帰りにはDUGに寄るという常連も多い

新宿らんぶるもDUGも、奇(く)しくも地下の店。形容しがたい新宿の空気、一様ではない匂い、人々の息づかいは、そんな地下からも発せられている。それゆえ地上の見かけが変わっても、新宿の核心はこれからも変わらないことだろう。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

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新宿駅東口。再開発が進み洗練されつつあるが、雑多な雰囲気が随所に残る

ディスクユニオン昭和歌謡館

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同じビルにラテン・ブラジル館、アニソン・ゲームミュージックストアなどの系列店が入っている

2013年にオープンし、23年7月に現在地に移転。レコード・CDの買い取り、販売を行い、歌謡曲、ポップス、演歌など幅広い品ぞろえを誇る。試聴もできる。系列店にジャズ館、クラシック館、平成 J‐POPストアなどがある。
■12時~20時(土・日曜、祝日は11時~)/元日休/山手線ほか新宿駅東口から徒歩5分、または地下鉄丸ノ内線ほか新宿三丁目駅A1出口から徒歩2分/新宿区新宿3-31-4 山田ビル2階/TEL:03-6380-6861

DUG

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創業以来、場所と店名を変えながら営業を続けるジャズ喫茶・バー。レンガ造りの壁に埋め込まれた大きなスピーカーから流れるジャズが心地良い。村上春樹の作品にも登場し、作中で取り上げられたウォッカトニックの注文が相次いだ時期もあったという。先代の主人は“ジャズ写真家”でもあり、海外の有名ミュージシャンを撮影した写真が飾られている。
■12時~23時/8月1日、年末年始休/山手線ほか新宿駅東口から徒歩6分/新宿区新宿3-15-12/TEL:03-3354-7776


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年5月号)
(Web掲載:2025年9月8日)


Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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