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【天下取りの城へ】小田原合戦の舞台となった 二つの城を巡る 小田原城・石垣山城(2)

場所
> 小田原市
【天下取りの城へ】小田原合戦の舞台となった 二つの城を巡る 小田原城・石垣山城(2)

小田原城下を一望したであろう、石垣山城の物見台からの眺め。現在の小田原城天守も小さく見える

最先端の城を見せつけた

【天下取りの城へ】小田原合戦の舞台となった 二つの城を巡る 小田原城・石垣山城(1)から続く

一方、秀吉は小田原に入って間もなく、標高262メートルの笠懸(かさがけ)山(石垣山)に登り、壮大な堀と土塁に囲まれた小田原城を目の当たりにした。簡単には落とせないだろうと思ったのか、無理やり攻めようとはせず、小田原城を見下ろすその場所に築城を決めた。それが、石垣山城である。

完成の夜に周囲の木を切り払い、まるで一夜で築城したように見せたという伝説から〝石垣山一夜城〟という異名があるが、実は4万人を動員し、約80日間かけて造った、関東では初の本格的な総石垣の城だった。現在も本丸、二の丸、南曲輪や井戸曲輪などの跡が残り、約430年前の見事な石垣が見られる。

「近江の石工集団・穴太(あのう)衆によって、自然石をあまり加工せずに積む野面(のづら)積みで積まれたものです。これだけの石垣を80日間で積み上げられたのは、穴太衆の技術力の高さがあったからだと思います」

小田原ガイド協会の山崎晃司さんはそう話す。時間を要する白壁だけは、骨組みに紙を貼るはりぼてだったが、当時は特別だった瓦を屋根に使い、縄張りの設計も本格的で、時代に先駆けた斬新な造りの城だった。

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石垣山城の井戸曲輪。谷を石塁で塞いで湧水をためる井戸としたもので、取り囲むように見事な石垣の壁が見られる

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石垣山城本丸(本城曲輪)には20メートルを超える石垣があったという

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石垣山一夜城歴史公園の入り口を入るとすぐに、南曲輪の見事な石垣が見える

「秀吉のすごさは破天荒な攻め方にあったと思います」と山崎さん。広大な総構を16万もの兵で包囲して威嚇し、土の城しかなかった時代に、見たこともないような最先端の城を見せつけて北条軍をうなだれさせた。石垣山城は〝見せつけるための城〟だったという。

石垣は小田原城から見える場所だけでなく、味方から見える海側や、旅人から見える東海道側にも見事に積まれていたそうだ。味方にも民衆にも、壮大な力を見せつけたかったのだろうか。

翌年の1591年に弟の秀長が亡くなり、92年には朝鮮出兵と緩やかに人生が下り始める。秀吉にとって小田原合戦の頃が、天下統一を目前にした人生の頂点だったともいえる。石垣山城の物見台から相模湾と小田原市街を眺めながら、ぼんやり天下人の人生を思った。

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小田原城址公園の西側(戦国時代の小田原城下)から石垣山を望む

ここにも立ち寄りたい


ういろう本店

薬の「ういろう(透頂香<とうちんこう>)」と菓子の「ういろう」を製造販売する小田原最古の老舗。室町時代、北条早雲が朝廷に仕えていた外郎(ういろう)家を京都から招いたのが始まり。明治時代築の蔵にゆかりの品を集め、外郎博物館として公開。抹茶や上生菓子などを出す喫茶も併設。
■10時~17時/水曜・第3木曜休、12月31日、1月1日休/東海道新幹線小田原駅から徒歩15分/小田原市本町1ー13-17/TEL:0465-24-0560

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伝統の八棟造りの店構え。絵図をもとに創業時の姿を再現

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菓子の「ういろう」。販売は小田原のみ

一夜城ヨロイヅカファーム

石垣山城前の高台に立つ。人気パティシエ・鎧塚俊彦氏が地産地消を目指して作った店で、広大な農園からは相模湾や小田原の町が見下ろせる。レストラン、スイーツやパンが並ぶパティスリー、マルシェがあり、購入した商品はテラスでも食べられる。
■10時~17時(レストランは~16時)/火・水曜休/東海道線早川駅・箱根登山鉄道箱根板橋駅からタクシー8分/小田原市早川1352-110/TEL:0465-24-3150

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シュー・ヘイザンヌ663円( 手前)と足柄山938円

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店は空と海に囲まれたファームの横にある

🏯お城豆知識

合戦後に国元に戻り、堅固な小田原城総構の造りを自国の整備の参考にした豊臣方の武将も多かった。石垣山城は桝形(ますがた)や門の配置などにも工夫を凝らした近世城郭で、縄張りの設計は、肥前名護屋城に踏襲されたという。二つの城がその後の城造りに与えた影響は大きい。

文/高崎真規子 写真/三川ゆき江ほか


【モデルコース】

小田原駅
 ↓ 徒歩10分
小田原城
 ↓ 徒歩5分
八幡山古郭東曲輪
 ↓ 徒歩15分
小峯御鐘ノ台大堀切東堀
 ↓ 徒歩20分
ういろう本店
 ↓ タクシー10分
石垣山城
 ↓ タクシー10分
早川駅

<小田原城> 日本100名城

■御城印:あり(300円)
■入城:天守閣9時~16 時30分(延長の場合あり)/12月第2水曜、12月31日休/天守閣510円(2026年3月1日に改定予定)
■交通:東海道新幹線小田原駅から徒歩10分
■住所:小田原市城内6-1
■ 問い合わせ:TEL0465-22-3818(小田原市観光協会)

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<石垣山城> 続日本100名城

■御城印:あり(300円。一夜城ヨロイヅカファームで販売、火・水曜休)
■入城:自由(夜間を除く)
■交通:東海道線小田原駅からタクシー15分、または東海道線早川駅からタクシー10分(土・日曜、祝日のみ、一夜城歴史公園に停車する小田原宿回遊観光バスを運行)
■住所:小田原市早川1383-12
■ 問い合わせ:TEL0465-23-1373(小田原城総合管理事務所)

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※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2026年2月号)
(Web掲載:2026年3月2日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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